ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
なお、この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。
そして直近では、日経平均株価はPER 12倍台前半での推移となっています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
平均PBRは12月23日大引けの時点で、1.1倍となっています。
なお、12月23日大引けの時点で、平均PBR 1.0倍相当が23850円、平均PBR 1.2倍相当が28620円となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、ここ最近では海外投資家の売買動向が、売り越し傾向となっていることが見て取れます。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から、日銀のETF買い入れは、2021年4月より、大きくペースダウンしていることが分かります。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。
ちなみに、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価は次のようになっています。
ドル建て日経平均株価では、長らく上値抵抗線となっていた225ドルを大きく下回った後、直近では200ドル前後のでの推移となっています。
3.信用評価損益率
続いて、信用評価損益率を見ていきます。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
信用評価損益率は、3月11日に底値圏の目安となる-15.66%を付け、直近の12月16日時点では、-10.4%となっています。
4.騰落レシオ
最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオは、12月23日時点で87.04となっています。
5.総括
日経平均株価は、10月初めに26000円を割った後、11月下旬に28500円程度にまで上昇していましたが、直近では26000円台前半での推移となっています。
直近の急落の要因は何と言っても、日銀が12月19~20日の金融政策決定会合で大規模緩和を修正する方針を決めたことにあります。
従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大し、事実上の利上げとなったのです。
これにより、ドル円相場も137円台から132円台にまで急落し、日経平均株価も急落する形となっていました。
確かに、インフレ抑制のために欧米の中銀は利上げに動いており、消費者物価の上昇率が3%台半ばに達している日本でも、近いうちに日銀が金融政策を修正せざるを得なくなるだろうとは思っていました。
しかし、黒田総裁の任期満了が23年4月に迫る中、このタイミングで政策変更が行われるということは全く予想されていませんでしたし、寝耳に水でした。
利上げによる欧米の景気後退懸念があるところに、日銀による実質的な利上げというサプライズにより、日経平均株価が割と大きな下落となったのは理解できないわけではありません。
ただ、日本は先進国の中でもインフレ圧力が低く、緩和的な金融環境であることに変わりはなく、日本の経済や企業業績は堅調さを保っていることから、この年末の下げは来たる2023年の相場に向け、良い買い場を提供してくれているものだと考えています。