相場のデータ・指標

外国人投資家(海外投資家)の売買動向と日経平均株価

ここでは、日本株に大きな影響を与える海外投資家について、その売買動向を日経平均株価と比較して見ていきたいと思います。

1.なぜ海外投資家に着目するのか?

まずはなぜ、海外投資家の売買動向に着目するのかということについてです。

それは、日本株の売買金額に占める海外投資家の比率が今や6割から7割となっており、相場に大きな影響を与えるので、その売買動向を知ることは、日本株の先行きを占ううえで欠かせないものだからです。

海外投資家は、企業業績や政治経済の変化への反応が早く、順張りをしてくる傾向があります。

順張りというのは、株価が上がっていればさらに買い上がり、下がっていればさらに売り下がるというものです。

ですから、海外投資家の売買動向を把握しておけば、相場のトレンドや転換点を見極めるのに役立つといえるのです。

そして、その海外投資家の売買動向については、日本取引所グループより公表されている、投資部門別売買状況というものが参考になります。

2.投資部門別売買状況とは?

投資部門別売買状況は、投資主体別売買動向とも呼ばれ、毎週第4営業日(通常は木曜日)に、前週の分が公表されています。

この投資部門、あるいは投資主体というのは様々なものに分類されているのですが、まず大きく自己委託の2つに分けられています。

自己というのは、証券会社が自身の勘定で行った売買のこと(ディーラー業務)で、委託というのは、その名の通り取引参加者からの委託を受けて行った売買のことを指します。

このうち後者の委託に関しては以下のように細分化されています。

  • 委託内訳:法人、個人、海外投資家、証券会社
  • 法人内訳:投資信託、事業法人、その他法人等、金融機関
  • 金融機関内訳:生保・損保、都銀・地銀等、信託銀行、その他金融機関

また、これらの投資主体が売買した株数金額が、市場ごとにも分類されて公表されています。

市場ごとというのは具体的には、「東証1部」、「東証2部」、「東証マザーズ」、「東証JASDAQ」、「2市場(東証・名証)」の5つに区分されています。

さらに、集計の対象としては株式以外にも、ETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託証券)、CB(転換社債型新株予約権付社債)、海外投資家地域別株券といったものもあります。

そして、ここでは「東証1部」の「株式売買状況(金額)」について、「海外投資家」の売買動向を見ていきます。

なお、一般には「東証1部」ではなく、「2市場(東証・名証)」の方で見ることがほとんどです。

ですが、ここではあえて「東証1部」の方で見ていきます。

というのも、「2市場(東証・名証)」には、東証1部・2部以外に、東証マザーズや東証JASDAQ、セントレックスの上場銘柄も含めて集計されていますが、東証1部以外の市場における海外投資家の売買金額に占める比率は3割から4割程度と低くなっています。

そのため、海外投資家の売買動向を日経平均株価と比較するうえでは、「東証1部」のみのデータの方が適していると思われるからです。

とはいえ、両者のデータにはそこまで大きな違いがないので、どちらで見ても構わないとこではあるのですが…。

3.海外投資家とは?

さて、一口に海外投資家といっても、その実態は様々です。

海外投資家には例えば、ヘッジファンドや政府系ファンド、年金基金や大学基金、投資信託、大口投資家などがあります。

当然これら投資主体によって、その取引スタイルは大きく異なります。

また、ヘッジファンドの中にも、CTAと呼ばれる先物の短期売買を中心に行うようなファンドもあれば、グローバル・マクロ戦略をとるファンドのように中長期で売買を行うものもあります。

一方で、年金基金や大学基金については、長期的な運用が行われるのが普通です。

ちなみに、年金基金としては米国最大の公的年金基金である、カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が有名で、大学基金(エンダウメント)としてはハーバード大学やイェール大学のものが有名です。

このように、海外投資家といっても様々な投資主体が存在するのですが、全体としてみると個人や信託銀行など他の投資主体と比較して、回転比率が高く投資期間が短い傾向があります。

それでは、その海外投資家の売買動向について実際に見ていきたいと思います。

4.海外投資家の売買動向と日経平均株価

投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)では、投資主体ごとに「売り」と「買い」、「合計」、「差引き」の4つの金額がそれぞれ載せられています。

そして、ネット上でよく見かけるデータというのは、このうちの「差引き」金額、それも「2市場(東証・名証)」のものです。

ですが、ここでは前述したように、「東証1部」の「差引き」金額について見ていきますが、それを示したのが以下の図になります。

海外投資家の売買動向(差引き)と日経平均株価(2007年1月~)

この図を見ると、海外投資家の売買代金の差引き金額は、概ね1兆円の買い越しから1兆円の売り越しの間で推移していることが分かります。

ただ、この図では今一つ傾向がつかみづらいといえます。

そこで、2017年第1週を起点(ゼロ)として、差引き金額の累計で見ていったのが、下図になります。

海外投資家の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)

この図を見ても明らかですが、上記期間における両者の相関係数は約0.72と強い相関を認めています。

5.海外投資家の売買動向の考察

ただ、直近で株価は大きく上昇していますが、海外投資家の累計売買金額はそこまで上昇しておらず、乖離が広がっていることが分かります。

ですから、海外投資家以外の他の投資主体が大きく買い越しているのでしょう。

とは言っても、直近の2017年9月第4週から11月第2週までは7週連続の買い越し(累計で約2.5兆円)となっていました。

2017年10月の第1週から第4週までの一か月間だけでも、約2.2兆円の買い越しです。

参考までにですが、日銀の「量的・質的金融緩和」が導入された2013年4月4日の1週間後の4月第2週には、海外投資家の売買動向(差引き)の図を見ても分かるように1週間で1.5兆円を超える大幅な買い越しとなっていました。

そして、この第2週を含む2013年4月の第1週から第4週までの1か月間では、約2.6兆円の買い越しでした。

また、2012年12月下旬に第二次安倍内閣が発足する前に行われた、11月21日の衆議院解散前の11月第2週から2013年3月第2週までは、18週連続での買い越し(累計で約5.4兆円)となっていました。

そういったことから、海外投資家の売買動向に関しては、買い越し額がまだまだ膨らんでいく可能性も十分にありますが、既に大きく買い越されているのも事実であり、いつ大きな売り越しに転じても不思議ではありません。

最近公表された、2017年11月第3週のデータでは、約3000億円の売り越しへと転じていましたが、この流れが続いていくのかどうかには注目しておく必要があるでしょう。

 

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