読書録・書評

【読書録・書評】『「株で200万ドル儲けたボックス理論」の原理原則』

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書では、『私は株で200万ドル儲けた』で有名なニコラス・ダーバス氏が考案した「ダーカード」を使った、ボックス理論の実践法について書かれています。

なお、本書の章立ては、次のようになっています。

  • 第1部 魔法のダーカード
    • 第1章 私がダーカードを考案したわけ
    • 第2章 市場は突然、息を吹き返す
    • 第3章 我慢強さと信念が報われるとき
    • 第4章 「高く」買って、「もっと高く」売る
    • 第5章 なぜ人は株式市場では不合理な行動をするのか
    • 第6章 値動きだけを見ていれば、すべてが分かる
  • 第2部 自分のルールを確立し、それを守る
    • 第7章 株式投資では知りすぎないほうが良い場合もある
    • 第8章 機関投資家よりも個人投資家のほうが儲けることができる
    • 第9章 必ずシステムや行動ルールに従うこと
    • 第10章 待って、待って、その機会が訪れるまでじっと待つ
    • 第11章 どんな時代にも「ダーバス株」は常に存在する
    • 第12章 分散をしすぎては儲からない
  • 第3部 ポートフォリオの構築法
    • 第13章 今も昔も人は耳寄り情報を探している
  • 付録――私の投資理論

2.ダーカードの作り方と使い方

著者は、ボックス理論に基づく投資判断に必要な情報と指示を含んだ、簡潔かつ視覚的に表したものとして、「ダーカード(DAR-CARD)」を考案したと言います。

ダーカードは、株の値動きを表すシンプルなツールで、その例として次のような図が載せられています。

ボックス理論のダーカードの例

 

また、ダーカード(のボックス)の作り方については以下のように説明されています。

  1. 急上昇している株価が3日以上続けて上抜けできない抵抗線にぶつかると、その水準がボックスの天井になる。
  2. 天井から下げたあと、株価が3日以上続けて下抜けできない下値支持線にぶつかると、その水準がボックスの底になる。
  3. ボックスの下から5%までのところにアミを掛けているが、これは危険水準のことである。

 

 

さらに、使い方についても次のように言及されています。

  1. 株価が一番上のボックスに入っている株は上昇トレンドにある。株価がボックス内にとどまっているかぎり、株価の変動は無視すべきで、その株は「保有」し続ける。
  2. 株価が一番上のボックスの高値を上にブレイクすれば、その株は「買い」になる。最初のブレイクで、10%下にストップロス注文を置く必要がある。
  3. 上に新しいボックスが形成されたあとでは、株価がこのボックスの底を下回ってアミの部分まで下げたら、その株は「売り」になる。
  4. 一番上のボックスに入っていない株は、保有する理由も買う理由もない。

3.ダーカードを使う機会

著者は、1973年の初め頃に相場が停滞し始めて、ストップロス注文によって振るい落とされてからは、2年の間、何も買わなかったと書いています。

ただ、成長が見込まれる業界から有望株が現れないか(どの株が出来高を伴って上げているのか)と、常に市場を見守っていたとも言います。

そして、初めて有望株に関心を持ったときには、その株価は既にわずか2ヵ月でほぼ2倍になっていたと言うのです。

これに関連して、次のような言及もあります。

私は通常、ボックス理論の条件を満たすことに加えて、史上最高値をブレイクしなければ買わない。

株価が新高値に達するだけでなく、過去の最高値も超えたら、不幸にも天井で買って戻り売りの機会を待っていた人々はみんな、もう売り終えているだろう。そのため、彼らはもはや上昇の足かせにはならなくなり、株価は急騰するだろう。

4.システムに従うことの重要性

著者の投資戦略というのは、次の一文によく言い表されています。

私は上昇相場のときに、発展著しい業界に属する強い株を買って、どの段階でも反落から身を守るためのストップロス注文を置いただけだった。

この中でも、とりわけ重要なのが、弱気相場で大きな損失を被ることのないよう、常にストップロス注文を置いておくことです。

これは、弱気相場ではほぼ例外なくほとんどの株が下げるため、分散投資をしても身を守るためには全く役に立たないからだと言います。

また、次のようにも書かれています。

株を買うときには、ぼろ儲けではなく、あっという間に株価が50%下げる可能性があるということを胸に刻んでおくように。

株価の動きを誤解して、思惑どおりに動かない銘柄を選ぶこともある。それは仕方がないことだ。市場に確実なことなど何もない。だから、必ずストップロス注文(損切り注文)を置かなければならないのだ。

もちろん、ストップロス注文によって、早く売りすぎたり、振るい落とされたりすることもあります。

しかし、ストップロス注文によって何度も災難を免れ、弱気相場で身動きが取れなくなったこともないため、少額の損切りを何度かしても埋め合わせは十分にできているとも書かれています。

5.投資の基本原則

本書の付録では、著者の投資手法の基本原則(例外も当然ある)について補足されています。

主だったものについて取り上げると、次のようなものが挙げられます。

  • 私は既成の業界に属する会社や時価総額が非常に大きな会社、すでに巨大企業になっていて、今以上にはたいして成長が見込めない会社の株は絶対に買わない。
  • 活況な銘柄を見つけても、私はすぐには買わない。まず、市場全般の動向を調べて、市場が上昇トレンドかどうかを確かめる。次に、その銘柄が強い業界、つまり株式市場でほかの業界よりも堅調な業界に属しているかどうかを確認する。これら二つの点に満足したときにだけ、興味を持った銘柄をさらに詳しく調べる。
  • 機械的に買うというこの手法を20年以上前に初めて使って以降、株式市場は変わってきた。
    • 最近はボックスを上抜けたあと、すぐに大量の売りが出て、2~3ポイント下げ、再び前のボックスに戻ることがよくある。したがって、最初の上抜けで買うと、かなり損をすることがある。
    • そこで、私は今では買う前に、二回目の上抜けまで待つことにした。つまり、一番上のボックスの高値を上に抜けてから反落したあと、最初の上抜けで付けた高値を超える新高値を付けるまで待つのだ。
    • 最初の上抜けのあと反落せずに、上げ続けたら、私は放っておく。いつ反落するかはまったく分からないので、上げている株は絶対に追いかけない。
  • 買うに値する銘柄が見つからないときには、二年間もまったく投資しないでいることもよくあった。株価が6~12ヵ月で少なくとも二倍になりそうでないかぎり、私は絶対に株を買わない。

6.総括

ニコラス・ダーバス氏の『私は株で200万ドル儲けた』では、1950年代の取引について書かれていましたが、本書では1970年代の取引について書かれています。(リンク先は当ブログのレビュー記事になります。)

この2冊の内容を比較すると、ダーカードの使用や、2回目の上抜けまで待つなど、細かい微調整はあるものの、根本的な考え方や手法は変わっていないことが分かります。

そして、著者の投資手法はとてもシンプルなものですが、それゆえにこの手法で一財産を築くのを見ていたブローカーにすら、著者の言うことを信じてもらえなかったと書かれています。

とはいえ、著者の実践や他の投資家へのインタビュー調査に基づいた、本書の内容には説得力があります。

何より、その投資手法あるいはそれに近い投資手法を実践したことのある投資家であれば、本書に書かれている内容の正当性が分かるはずです。

ただ、私も本書の手法だけをそのまま用いているわけではないため、現在の相場でも通用するものなのかどうか、はっきりしたことは言えません。

しかし本書の内容は、投資の世界でよく語られる常識や、もっともらしい投資手法などを見直したり、投資を別の観点から考えたりするきっかけへとつながるものだと言うことはできます。

なお、前回レビューした『金融市場はカジノ ——ボックス理論の神髄と相場で勝つ方法』も含め、読み物としてはどれも面白いので、興味のある方は全て読まれてみてもいいでしょう。(リンク先はレビュー記事になります。)

一方で、著者の投資手法を知れれば十分という方は、どれか1冊および、各書籍のレビュー記事を読んでいただければ十分ではないかと思われます。

 

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