読書録・書評

【読書録・書評】『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(1/2:前半部分のレビュー)

ここでは、以下の書籍(前半部分)についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書では、テクノロジー業界の4強とも言える、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの強みやその戦略について書かれています。

また、これら4強に続く企業は現れるのかといった検討や、これらの企業が市場を独占していくなかで、どのように生きていけば良いのかなどといったことも書かれています。

本書は全480ページにもわたる大作であるため、そのレビューも前半と後半に分けて書いていきたいと思います。

そして、ここでは第5章までの前半部分についてレビューしていきます。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1章:GAFA-世界を創り変えた四騎士
  • 第2章:アマゾン-1兆ドルに最も近い巨人
  • 第3章:アップル-ジョブズという教祖を崇める宗教
  • 第4章:フェイスブック-人類の1/4をつなげた怪物
  • 第5章:グーグル-全知全能で無慈悲な神
  • 第6章:四騎士は「ペテン師」から成り上がった
  • 第7章:脳・心・性器を標的にする四騎士
  • 第8章:四騎士が共有する「覇権の8遺伝子」
  • 第9章:NEXT GAFA-第五の騎士は誰なのか
  • 第10章:GAFA「以後」の世界で生きるための武器
  • 第11章:少数の支配者と多数の農奴が生きる世界

2.GAFA(ガーファ)

グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンは、それぞれの頭文字をとって「GAFA(ガーファ)」と呼ばれます。

また本書では、そのGAFAが、『新約聖書』最後の聖典である『ヨハネの黙示録』に出てくる四騎士(地上の人間を殺す権威を与えられている)に例えられています。

そして、本書の前半では、GAFAの強みや戦略について、それぞれ考察がなされています。

ここではそれぞれの企業について、その特徴を見ていきたいと思います。

3.アマゾン

アマゾンは、消費財の小売り(アマゾンとアマゾン・マーケットプレイス)以外に、アマゾン・メディア・グループの広告収入やクラウドサービス(AWS)によって収益を上げています。

そして、アマゾンは、消費者の自宅に商品を届ける、いわゆるラスト・ワンマイルのインフラへ、かつてないほどの巨額の資金を注入することで、非常に高い参入障壁を築き上げようとしているのです。

それは具体的には、倉庫の自動化やドローン、ボーイング757/767、トラクター・トレーラー、太平洋横断海上輸送などへの投資を行っているのです。

また、2017年に米国の高級スーパーマーケットチェーンであり、460の店舗を持つホールフーズを買収し、その店舗を配送拠点としても活用しようとしています。

さらに、アマゾンは自社ブランドの商品も販売しており、電池などの日用消耗品のように、消費者が特にブランドにこだわりを持たないようなものは、アマゾンによって次第にシェアを奪われていくことになるでしょう。

4.アップル

アップルの共同創設者の1人である、スティーブ・ジョブズはひどい人間であったと書かれています。

それは、チャリティーには一切関わらない、ほぼ中年の白人しか雇わない、従業員を罵倒する、裁判所で実の娘の養育費を払うことを拒否、ストックオプションに関する政府の調査で偽証する、などといった具合です。

しかし、アップルをテクノロジー企業から高級ブランドへと転換するというジョブズの決定は、ビジネス史上、とりわけ重要な見識であったと言っています。

アップルは、洗練された商品とともに、世界中の一等地に洗練された店舗を展開することで、低コスト製品を高価格(プレミアム価格)で売ることに成功したのです。

それにより、アップルは多大な利益を生み出し、莫大なキャッシュをため込んでいます。

また、フィンランドのノキアや、かつて存在した米国のモトローラは、アップルによって大打撃を受けましたが、通信事業会社だけではなく、中間レベルの高級品製造業も打撃を受ける可能性が高いと言います。

その例として挙げられているのが、J・クルー(ファッションブランド)やマイケル・コース(婦人服・バッグ・靴)、スウォッチ(腕時計)です。

一方で、ポルシェやブルネロ・クチネリなどの最高級ブランドには影響しないとも書かれています。

というのも、これらの商品の顧客は欲しいものは何でも買えるので、取捨選択をする必要はないためです。

そして、アップルはこのような高級ブランド化に成功したため、22世紀まで存続する可能性がGAFAの中で最も高いだろうと筆者は考察しています。

一方で、アップルにはビジョンが欠けているとも書かれており、その点が今後のアップルにとって最大の課題となるかもしれません。

5.フェイスブック

現在の世界の人口は75億人で、そのうち12億人が毎日フェイスブックとの関わりを持っており、普及率と使用率を基準にすれば、フェイスブックは人類史上、最も成功している企業だと書かれています。

またフェイスブックは、インスタグラム、ワッツアップと、ユーザー1億人を超える5つのプラットフォームのうち3つを所有しています。

そしてフェイスブックは、他のどんな企業よりも深く個人情報を得ることができるため、広告におけるターゲティング能力に優れており、それによりグーグルからそのマーケットシェアを奪うほどとなっているのです。

一方で、フェイスブックなどのSNSが、米国の大統領選挙や英国EU離脱の国民投票の際に、選挙キャンペーンや世論形成に利用されたりもしていました。

本来メディアには、自分たちの発信する情報に対して、真実の尊重、公正さや公平さなどといったジャーナリズム精神や報道倫理が要求されます。

しかし、フェイスブックなどは、メディアではなくあくまでもプラットフォームだという立場を取ることによって、そうした社会的責任を回避しているのです。

一般に、メディアのプラットフォームでは、穏健な主義主張よりも過激なものの方が、注目を集め、広がっていきやすいと言えます。

それは情報が正確であるかどうかに関わらずです。

ですから、SNSというのは大きな危険性をはらんでおり、SNSの普及が、世界を反グローバル化やナショナリズムへと導くことになる可能性も十分あり得ます。

そういった意味では今後、信頼できる情報を見極める力というのが、ますます要求されるようになってくるのではないでしょうか。

6.グーグル

グーグルほど全知全能の神として信用されている機関はほかになく、検索エンジンに入力される質問の6つに1つは、それまで誰も問いかけることがなかったものだと書かれています。

またグーグルは、すべての場所(グーグルマップ)、天文(グーグルスカイ)、地理(グーグルアース、グーグルオーシャン)の情報を集めています。

さらに、既に絶版になっている書籍コンテンツや、報道データも集めているのです(グーグル・ライブラリ・プロジェクト)。

一方で、グーグルは、その市場での立場が強すぎるがために、常に国内外で独占禁止法違反の訴訟を起こされるリスクにさらされており、特にEUとは何度も訴訟を行っています。

欧州委員会は、広告の競争で不公正な扱いを受けたとして起訴したのです。

もちろん、グーグルは、やろうと思えば自分たちにとって都合の良い情報を検索結果として上位表示し、都合の悪い情報は、検索順位を下げることで、暗闇へと葬り去ることができます。

そして、そういったことがないよう、グーグルには「邪悪になるな(Don’t be evil)」といった行動規範が存在しています。

そのため、グーグルでは今年の3月に、米国防総省へのAIの軍用提供が発覚した際に、社内での抗議や一部社員の退職を招くこととなりました。

また米メディアが今年の8月に、グーグルが中国向けの検閲版検索エンジンを開発していると報じた際にも、社内外で波紋を呼ぶこととなりました。

このように、グーグルが「Don’t be evil」ではなくなってしまった時には、優秀な頭脳が流出し、それはIT技術における競争優位性を保つ上で、大きな支障を来すことにもつながりかねません。

androidの搭載されたスマートフォンをはじめ、Gmailやドライブ、マップ、ドキュメントなど、グーグルのサービスに大きく依存している私としては、グーグルが善良であってくれることをただただ祈るばかりです。

さて、本書の後半部分に関しては、以下の記事でレビューしています。

 

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