読書録・書評

【読書録・書評】『株式成功実践論―勝者への道標』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書は、相場師として名を上げ、生涯を通じて個人投資家教育にも尽力した、林輝太郎氏と、林氏と同じくプロの相場師である、板垣浩氏との共著となっています。

本書では、板垣氏の弟子(A氏)を林氏が引き継いで教育していく過程が書かれており、その中でアマチュア投資家の大いなる誤解というのが明らかにされています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1章:「株式売買」の基本的なこと
  • 第2章:株式売買をめぐる環境
  • 第3章:情報と資料
  • 第4章:勉強と上達

ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。

2.情報に対する考え方

本書では、情報ということについて、次のように書かれれています。

一般に、株式投資において、情報の選択が正しければ利益を得られる、といわれる。これは、選択後にノウハウ(技術の巧拙)を伴わないものについては正しいのだが、そうでないものには当てはまらないのである。

株式投資の場合は、選択後に技術的な問題が残っているのだから、すなわち成功不成功に直結していないのだから全くちがうのだ。

また、証券会社や証券マンについては次のように書かれています。

証券会社には儲けるための資料は一枚もなく、あるのは投資家に売買を促す、悪くいえばいま買わなければと焦らせる資料だけ。もしあるならばお客なんていらないはず、自分たちだけで儲ければいいのである。

証券マンには、経済知識、分析能力は無く、儲けるためのノウハウの片鱗さえも持っていない。もしあれば、お客にペコペコなんでしないはず。

さらに、新聞についても触れられています。

もし新聞を読んで儲かるならば、新聞が1か月100万円でも安いもの。情報社会で情報が多くなるほどグレシャムの法則によって真実が隠され、デマ情報反乱社会になる道理、そんなことすらわからないならマネー・ゲームはやりなさんな、自分の本業をしっかりやって儲けなさい。

そして、こういったことを一般投資家に言うと、ひねくれ者か精神異常者と見られてしまうと述べています。

3.相場技法

つまり、一般投資家は、証券会社や新聞などの情報をもとにした「当てもの的考え」に凝り固まってしまっており、その誤解を正すのは非常に困難だということなのです。

林氏も板垣氏もともに相場技術論者であり、株式売買における技術的要素の重要性を説いています。

しかし、ゴルフなどと違って、株式売買では他人のやっているのを見ることができないため、プロの売買道具などを見せても、その重要性を理解してもらえないと言うのです。

林氏は、「相場技法」とは、平均値を有利にする分割売買と失敗のときの玉をゼロにする、だけの玉の操作のことにすぎない、と書いています。

ただ、この相場技法の技術水準を向上させるためには、それなりの努力が必要となります。

株式売買を仕事として行っている人たちは、場帖を書き、グラフを描き、データを集め、整理し、分析するために多くの時間や労力を費やしているのです。

まずは、こうした「場帖つけ」や「グラフ描き」をすることで、価格の変動感覚を身につける必要があるのですが、一般投資家は、こうした面倒くさい基礎を抜かしてしまっているのです。

4.グラフ描き

その「グラフ描き」については、次のようにも書かれています。

バブルが終わって、さて「成功者はどんなことをしたのか」。その、成功者のすべてに共通しているものは、大きなグラフ用紙に手描きでグラフを描いていることだった。

多くの機関の調査で判明したようにバブルで成果をあげた人たちはすべて、ごく普通のグラフしか用いていなかった。

この普通のグラフというのは、株式で言えば、日足や月足の、ローソク足または折れ線グラフのことになります。

つまり、できるだけ忠実に現実の値動きをグラフ化したものだけが有用であったのだ、と書かれています。

そして、本書の中には次のような記載もあります。

株でも商品相場でも、相場師は例外なくテクニカルズ派であり、テクニシャンである(テクニシャンには上手という意味もあるからまさにテクニシャンである)。

こういったことからも、グラフ描きの重要性というのをうかがい知ることができるでしょう。

5.総括

この記事の冒頭に書いたように、本書では、板垣氏の弟子(A氏)を林氏が引き継いで教育していく過程というのがベースとなっています。

本書の中で、アマチュア投資家の象徴のようにして取り上げられているそのA氏は、板垣氏や林氏に何年もの間、直接教えを請うていました。

しかし、最後の最後まで誤った考え方を改めることができずに失敗を繰り返し、最終的には致命的な損失を被って自殺してしまうという、悲劇的な末路を辿りました。

その過程における、林氏とA氏のやり取りなどが克明に描かれており、本書のある意味で衝撃的な内容というのは、一般投資家の誤った考え方を是正する一助となってくれるのではないでしょうか。

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