読書録・書評

【読書録・書評】『日本の「老後」が崩壊する日―――まだ間に合う生き残り策がこの中に!』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.本書の概要

まずは、本書の概要からです。

本書では、預金封鎖や社会保障費、少子高齢化など、日本が抱える様々な問題について、各分野の専門家にインタビューする形で、それぞれ解説がなされています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • EPISODE1:日本政府により私たちの預金封鎖が起こる日(前編)
  • EPISODE2:日本政府により私たちの預金封鎖が起こる日(後編)
  • EPISODE3: 急激な少子高齢化によって東京がスラム化する日
  • EPISODE4: 超高齢化社会の現実化で介護難民が深刻化する日
  • EPISODE5: 家族の介護の日常化で老後の貯金が消える日
  • EPISODE6 :脱・東京集中を目指す地方創生政策が失敗する日
  • EPISODE7 :地震やゲリラ豪雨などの巨大災害が日本を襲う日
  • EPISODE8 :公的年金の大幅な減額で下流老人が街に溢れる日
  • EPISODE9 :下流老人になった後に確定拠出年金を悔やむ日
  • EPISODE10 :少子化ゆえの高騰による教育費増が家計を壊す日
  • EPISODE11 :相続税の大増税によって家を失う人が激増する日
  • EPISODE12 :がんなどの医療費増加で家計が破綻してしまう日
  • EPISODE13 :人口減少社会の本格化でマンションが暴落する日
  • EPISODE14 :ふるさと納税の人気化で東京の税収が激減する日

2戦後の日本における「預金封鎖」

episode1では、日本でも戦後すぐの1946年に行われた、「預金封鎖」について書かれています。

第二次世界大戦の戦費調達で国債を乱発し、急激に財政が悪化したため、1944年度末で国の債務残高はGDPの260%に達していたと言います。

その後、敗戦し国家には多額の債務が残ったわけですが、その債務を返しインフレを抑えるために、政府は1946年に「預金封鎖」を実行したのです。

また、この「預金封鎖」には以下のように、3つの理由があると述べられています。

  1. 銀行の信用力の低下を防ぐ:キプロスはこれ。一定以上の預金を下ろせなくして、銀行を立て直すというもの。
  2. 財政の立て直し:債務を返すためや借金の棒引きなど。
  3. ハイパーインフレのため貨幣の単位を変更する(デノミネーション):ドイツが第1次世界大戦後のハイパーインフレから経済立て直しのために発行した臨時通貨であるレンテンマルクが有名。レンテンマルクと旧通貨のパピエルマルクの交換レートは「1対1兆」。大規模なデノミで経済を立て直した。

そして、日本における戦後の預金封鎖では、2.と3.が実行されたのです。

まず政府は、預金を封鎖して、資産を引き出せないようにし、同時に旧円から新円に切り替えました。

これは、自宅にお金を隠している人や、直前に銀行から引き出した人の脱税を防ぐためで、続いて、旧円を強制的に銀行へ預金させることで市場流通を差し止めました。

さらに、預金封鎖をしている間に資産を確認して、その約半年後に10万円を超える部分に25%から90%の財産税をかけたのです(特に1500万円以上の資産家には90%の税金がかけられた)。

時系列にすると、

  • 1946年2月:預金封鎖&新円切り替え
  • 1946年11月:財産税法公布

となりますが、預金封鎖中は、世帯主で毎月300円しか引き出せなかった(当時の初任給は500円程度)と言います。

3.日本の財政状況

episode2では、現在の日本の財政状況について書かれています。

少し古いデータですが、日本の政府債務残高は1000兆円を突破し、対GDP比で246%にまで拡大しているとあります。

また、日本国債の消化原資は1600兆円ある個人の金融資産だが、そのうち400兆円は住宅ローンなどの負債であるため、実質資産は1200兆円程度だと言います。

そして、その7割程度が既に国債に回っているとすると、残りは360兆円ですが、1年間で増える借金は概ね40兆円弱であるため、このままだと10年程度で枯渇してしまうというわけです。

そうなると、国内で消化しきれない国債を海外投資家に買ってもらう必要がありますが、マイナス金利では買ってくれないだろうと述べられています。

なお、債務残高を減らす方法として、以下の4つが挙げられています。

  • 税収をアップする
  • 歳出を削減する
  • インフレをおこす
  • 預金封鎖orデフォルト

このうち歳出に関しては、2000年以降は社会保障費が増大しており、少子高齢化により毎年1兆円増えており、財政を圧迫しています。

そして今後、金利の上昇が預金封鎖のトリガー(引き金)になりかねないとの警鐘を鳴らしています。

4.高齢者が溢れる東京

episode3では、急激な少子高齢化について触れられています。

日本では、15歳から64歳の生産年齢人口が今後も大きく減少していきます。

参考までに、「日本の将来推計人口(H29推計/国立社会保障・人口問題研究所)」にあるグラフを載せておきます。

日本の区分別人口の推移を示した図。

そして、日本の人口が減少するなか、東京だけは2020年まで人口が増加し、そのことで一気に問題が噴き出す危機的な状況であると言います。

それは、東京では2020年代後半からは、人口がさほど減らないなかで、高齢者が急増すると見られており、急速な高齢化への対応が難しいということなのです。

地方では持ち家が多いものの、東京では4割が家を持っておらず、街に高齢者が溢れる可能性があるため、公共住宅の充実が急務となるのです。

5.介護問題

episode4では、介護難民の深刻化について触れられています。

要介護認定は75歳以上で31%。85歳以上だと7割程度となっていますが、超高齢化により、要介護認定を受ける人も増えていきます。

基本的に要介護3以上の人が対象となる特別養護老人ホームでは、入所待機者が高止まりしている一方で、国は介護給付を絞る方向にあり、行き場のない介護難民が増えていく可能性が高いのです。

episode5では、特に都市部の介護施設不足は深刻で、高齢者の地方移住が有力な選択肢になるとあります。

また、高齢者だけでなく、その家族も、自宅のバリアフリー化や帰省代など直接的な費用以外にもお金がかかると書かれています。

6.公的年金や確定拠出年金

episode8は、公的年金についての内容で、公的年金は破綻はしないものの、2割以上減る可能性が高いとあります。

さらに、女性や高齢者の社会参加が政府の想定通りにならないと、受け取る年金額は、現役時代の平均賃金の42%となる15.6万円まで減る可能性があると言うのです。

また、episode9~12では、確定拠出年金やジュニアNISA、相続税、医療保険などについて触れられています。

ただ、確定拠出年金については原則として60歳まで引き出すことができないため、慎重にする必要があると思われ、医療保険についても、ほとんど不要なものばかりだと個人的には考えています。

7.マンション選び

episode13では、マンション選びについて書かれています。

自宅を資産として見た場合、入口だけでなく出口も重要であり、一部の人気エリア以外ではマンション価格は下落する可能性が高いと述べられています。

また、他にも以下のようなことに言及されています。

  • 新築マンションの価格の3割は不動産会社などの経費である。
  • マンションの価格構成は土地代が3割、建物代が7割だが、築30年以上になると建物の価値はほとんどゼロになる。
  • 不動産のプロはマンションなら築7~10年を買う。そのくらいの年月が経つと、初期不良が全部出ているため。
  • マンションだと購入するエリア選びがより重要になる。日本はこれから人口が減少するが、都心のブランドエリアか駅近の物件なら価格を維持できる可能性がある。

8.総括

本書にあるような、社会保障費や少子高齢化などといった問題は、今すぐどうというわけではないものの、徐々に、そして確実に問題が大きくなっていきます。

そして、気づいたときにはもはや手遅れとなってしまっている可能性が高いでしょう。

今の官僚や政治家たちにこういった問題が解決できるとは全く思えませんが、まずは国民一人ひとりが、どういった問題があるのかということを少なくとも認識しておく必要があると言えます。

そういった問題を認識するうえで、本書はとても有用な内容となっており、可能であれば内容やデータを最新のものに更新して、定期的に出版していただければと思います。

最後に余談ですが、本書にあるような様々な問題を解決するには、最近話題になっているように、政治家や官僚をAI(人工知能)に置き換えることを検討した方が良いでしょう。

政治家もテレビ局も広告代理店も芸能事務所も互いに持ちつ持たれつで、不祥事が起こっても、責任の所在がうやむやにされるような状況が続く限り、日本は永久に変わらないでしょうから。

 

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