相場のデータ・指標

【2023年6月】「米国株(S&P 500)」のデータ分析(PER・CAPEレシオ・Fear & Greed Index・長短金利差・FRB保有債券残高)

ここでは、直近の「米国株(S&P 500)」について、PER・CAPEレシオ・Fear & Greed Index・長短金利差・FRB保有債券残高などといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。

1.S&P 500とPER

まずは、S&P 500に採用されている500銘柄の平均PERとS&P 500の推移を見ていきます。

2023年6月までのS&P500とPERの推移を示した図

この図から、1990年代後半以降、ITバブル後やリーマン・ショック後のような特殊な状況を除くと、PERは概ね15倍~35倍で推移しているといえます。

そこで、同期間における、PERが15倍~35倍に相当する株価とS&P 500の推移を示してみたのが以下の図になります。

2023年6月までのS&P500とPER別株価の推移を示した図

S&P 500は、コロナショックにより急落し、PER20倍台前半を付けた後、一時は40倍近くにまで急騰していましたが、6月1日時点では25.2倍となっています。

なお、2000年前後のITバブル前にはPERが35倍近くまで上昇する場面もありましたが、2008年のリーマン・ショック前のPERは25倍程度までの上昇に過ぎませんでした。

そして、コロナショックの際も、PER25倍程度からの下落となっていました。

2.S&P 500とCAPEレシオ

次に、景気循環調整後の株価収益率(PER)である、CAPEレシオ(シラーPER)とS&P 500の推移を見ていきます。

2023年6月までのS&P500とCAPEレシオの推移を示した図

CAPEレシオでは、一般に25倍を超えると株価が過熱圏にあるという見方がされます。

CAPEレシオは、コロナショックにより、一時25倍を下回り、その後40倍近くまで上昇する局面もありましたが、6月1日時点では30.3倍と過熱感が少しだけ和らいでいます。

ちなみに、ここ数年を除いて、過去に30倍を超えたのは、1929年の世界大恐慌の前や、2000年のITバブルの時だけであり、2008年のリーマン・ショック前には25倍以上で推移はしていましたが、30倍まではいきませんでした。

また、CAPEレシオに関しても、15倍~40倍に相当する株価とS&P 500の推移を示したのが以下の図です。

2023年6月までのS&P500とCAPEレシオ別株価の推移を示した図

この図から直近のS&P 500は調整しているものの、CAPEレシオという観点からすると、依然として2008年のリーマン・ショック前よりも割高な水準にあることが分かります。

また、2008年のリーマン・ショック前には、何年もの間にわたってCAPEレシオが25倍を超えて推移していましたし、コロナショック前も2年ほどは30倍前後で推移していました。

そういったことから、CAPEレシオで割高だと判断されたとしても、これによって相場転換のタイミングを計ることは難しいと言えます。

PERやCAPEレシオはあくまで参考程度のものだということです。

3.Fear&Greed Index

続いて、株式市場に対する投資家のセンチメント(市場心理)を示す指標である「Fear&Greed Index」を見てみます。

この指標は、7つの要素を基に算出され、0~100の数値で表わされるとともに、その数値によって「Extreme Fear」「Fear」「Neutral」「Greed」「Extreme Greed」の5つに区分されています。

直近の6月23日時点では、Fear&Greed Indexは73で「Greed(貪欲)」となっており、高値警戒感がやや強い状態であると言えます。

4.S&P 500と長短金利差(米国債利回り差)

さらに、長短金利差として、米10年国債利回りと米2年国債利回りの差(=10年国債利回り-2年国債利回り)を見ていきます。

※通常、短期金利とは期間が1年未満の金融資産や負債の金利のことをいいますが、ここでは便宜上2年国債利回りを短期金利として扱っています。

そして、米国の長短金利差とS&P 500の推移を示したのが以下の図です。(なお、見やすくするために、右軸の長短金利差のスケールは反転しています。)

2023年6月までのS&P500と米国長短金利差の推移を示した図

この図からは、2001年前後のITバブル崩壊や、2008年のリーマン・ショック前に米国債利回り差が0%以下と、2年国債利回りの方が10年国債利回りよりも高い状態で推移する「逆イールド」と呼ばれる状態になっていたことが分かります。

そして2022年3月以降、一時的に逆イールドが発生することは何度かありましたが、22年7月以降は逆イールドが定着しており、直近ではー0.5%程度で推移しています。

5.FRBの保有債券残高

最後に、FRB(米連邦準備制度理事会)の保有債券残高の推移も見てみます。

なお、この保有債券残高というのは、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)、政府機関債の合計となります。

2023年6月までのFRBの保有債券残高の推移を示した図。

FRBの保有債券残高は、2017年12月頃より縮小されていましたが、2019年10月半ばより、短期金融市場の安定化を目的にTビルの購入が開始され、2020年3月からはTビル以外の米国債やMBSの購入も再開されていました。

そして、2022年6月からはいわゆる量的引き締め(QT)が開始され、FRBの保有債券残高が減少してきていることが上の図からも分かります。

6.総括

S&P 500は、直近では4300ドル台にまで回復しています。

この背景としては、米債務上限問題がとりあえずクリアされたことや、生成AIブームでハイテク株が勢いづいていること、景気後退懸念がくすぶり続ける中で経済指標が想像以上の底堅さを示していることなどが挙げられます。

また、FRBの保有債券残高は減少傾向にあるとはいえ、依然として高水準にあり、過剰流動性は残存したままであると言えます。

そして、2023年に入ってからのS&P 500の上昇分の8割は、GAFAMにエヌビディアとテスラを加えた「マグニフィセント・セブン」の7銘柄だけで説明できると言います。

そういったことから、S&P 500の今後の行方は、AIブームという宴がどこまで続くかにかかってきそうです。

もちろん、これらの銘柄はグロース株と言えるので、エネルギー価格の高騰も含めた粘着性のあるインフレに対して、FRBが高水準の政策金利を維持し続けることも逆風になります。

米国株は、底堅く見えるものの、いつ変調を来してもおかしくないような脆さもはらんでいるように思えてなりません。

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