読書録・書評

【読書録・書評】『改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書は、タイトルの副題にも「お金の哲学」とあるように、何か具体的な投資戦略というよりは、自己啓発に近い内容となっています。

本書では、「自分のビジネスを持つ」、「会社を作って節税する」などといったことも書かれていますが、ここでは主に投資に関係してくる部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 教えの書:金持ち父さんの六つの教え
    1. 第一の教え:金持ちはお金のためには働かない
    2. 第二の教え:お金の流れの読み方を学ぶ
    3. 第三の教え:自分のビジネスを持つ
    4. 第四の教え:会社を作って節税する
    5. 第五の教え:金持ちはお金を作り出す
    6. 第六の教え:お金のためでなく学ぶために働く
  • 実践の書
    1. 実践その一:まず五つの障害を乗り越えよう
    2. 実践その二:スタートを切るための十のステップ
    3. 実践その三:具体的な行動を始めるためのヒント

2.三種類の所得

本書の主旨を簡単に述べるとしたら、それは本書の「おわりに」に書かれていることに尽きるでしょう。

それは、会計的見地から見ると、所得には次の3種類があると言います。

  1. ふつうの勤労所得
  2. ポートフォリオ所得:株式、債券などの「紙の資産」から得られる所得。
  3. 不労所得:主に不動産投資からもたらされる所得。

そして、「裕福になるための鍵は、勤労所得をできるだけ早く、不労所得やポートフォリオ所得に変える能力にある」ということです。

経済的自由と大きな富を手に入れる鍵は、勤労所得を不労所得とポートフォリオ所得に変える能力だと言っているのです。

3.資産と負債の違いを知る

それでは、本書の内容をより詳しく見ていきたいと思います。

まず、「第二の教え」のところでは、次のように書かれています。

持ち家は資産でも投資でもなく「負債」である。

一番大切なことは資産と負債の違いを知る事だ。その違いが分かったら、次は収入を生む資産を買うことだけに努力を集中する。

金持ちは資産を買う。貧乏人の家計は支出ばかり。中流の人間は資産と思って負債を買う。

また、バックミンスター・フラーの、「富というのはあと何日間その人が生き残る事ができるか、つまり今日仕事を辞めたとして、あとどれくらい生きていけるか、その能力を指す」という考え方についても触れられています。

この考え方に従えば、「他人に依存することなく経済的に自立した状態を確立するという目標に、自分がどれくらい近づいているかが正確に測れる」と言うのです。

4.本当の資産とは

「第三の教え」では、「自分では資産と思っていても実際は負債だったり、買った時点で大きく価値が減少してしまうような消費財ではなく、利益を生む本当の資産を買うことだ」とあります。

そして、その「本当の資産」としては、以下のようなものが挙げられています。

  1. 自分がその場にいなくても収入を生み出すビジネス
  2. 債券
  3. 投資信託
  4. 収入を生む不動産
  5. 手形、借用証書
  6. 音楽、書籍などの著作権、特許権
  7. その他、価値のあるもの、収入を生み出すもの、市場価値のある物品など

5.焦点を絞る

「実践その一」では、以下のように書かれています。

安全だけを考え、常にバランスのとれた投資だけをするというのは、投資で成功する人間のやるやり方ではない。

手持ちの金は少ししかないが金持ちになりたいと言う人にとって必要なのはバランスをとることではなく焦点を絞ることだ。

これは、トーマス・エジソンやビル・ゲイツ、ドナルド・トランプ、ジョージ・ソロスなど、成功を収めている人を見ればわかることで、「もし金持ちになりたいという気が少しでもあるのなら、焦点を絞らなければだめだ」と言うのです。

確かに、個人投資家は機関投資家などと異なって、どんな投資を行っても構わず、すべてが自由過ぎるため、様々なことに手を出して墓穴を掘ることが多いと言えます。

実際に、株式投資を例に挙げてみても、投資する銘柄の数や、投資手法・戦略を限定することの大切さは、多くの成功している投資家の言うところでもあります。

ただ、十分な時間や労力を投資に割くことができないという人にとっては、インデックス投資は有力な選択肢の1つだというのも事実です。(もちろん、この場合には、お金持ちになるのにどうしても時間はかかってしまいますが。)

そして、「実践その一」では、次のようなことについても触れられていますが、これはまさにその通りだと言えます。

お金の世界、金融や投資といったことに関わっている人たちの中には、自分で何を言っているのか全く分かっていない人が大勢いる。お金に関わる業界の人の大部分は、中古車のセールスマンのように口から出まかせの売り込み文句を言っているだけだと言ってもいい。

余談ですが、もしかしたら、私自身もこういった輩の一人となってしまっているかもしれませんので、私のブログを読んで下さっている方は、常に疑いの目を持って読んでいただけたらと思います。

6.辛抱強く待つ

「実践その二」では、投資とは売る時に利益を得るのではなくて、買う時に利益を得るもので、チャンスが来るまで「辛抱強く待つ」ものだということで、次のように書かれています。

頭のいい投資家は市場の波が最高のときに乗ろうとねらったりはしない。波に乗り損なったら、次を探し、そのための準備をする。ほかの大部分の投資家がなかなかそうできない理由は、人気のないものを買うのが怖いからだ。

勇気のない投資家は、群れでしか動くことのできない羊のようなものだ。こういう人は、賢い投資家が利益をふところにして次の波へと移っていく頃に欲を出し、勢いの衰えた波に乗ろうとする。反対に賢い投資家は人気がないところを選んで投資する。

「投資の利益は我慢料」だと言う人も多いですが、これは本当に一理ある言葉です。

7.「バーゲン」で買う

最後に、「実践その三」では、株や不動産を「バーゲン」で買うということについて、以下のように書かれています。

不動産市場や株式市場がバーゲンセールを始めると、たいていの場合それは大暴落だの反落だのと呼ばれて、消費者はそこから逃げ出す。スーパーマーケットが値上げをするとそっぽを向いて他で買い物をする消費者が、不動産市場や株式市場が値上がりをすると買いに走る。これではお金が貯まらなくても当然だ。

そして、ここでも、「利益は売り方ではなく買い方によって決まる」ということを常に頭に入れておこうと書かれています。

投資の原則の一つに、「安く買って、高く売る」ということがありますが、株式を最も安く買うことができるのが、まさに金融危機などによって市場が大暴落した時になります。

先に書いたこととも重なりますが、そういった場面を「辛抱強く待つ」ことが、株式投資においては少なからず必要なことではないかと考えています。

8.総括

本書は、ここで書いてきたように、具体的な投資戦略や手法という点では、ごく表面的なことしか書かれていません。

ただ、社会通念とでも言うべき、一流大学を卒業して一流企業に就職し、定年まで勤め上げるといったような生き方とは別の選択肢を見出すための、手引き書にはなってくれるかもしれません。

また、ややくどい面も多々ありますが、単純に読み物としては面白いと言えます。

特に、自己啓発書が好きな人であれば、その延長線上にあるものとして、さして苦もなく読めるのではないでしょうか。

 

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