読書録・書評

【読書録・書評】『給料は当然もらって、株で10万を1年で月収20万に!』

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書では、成長が期待できる内需株と高配当株を組み合わせた投資戦略が紹介されています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 序章:「内需株」で100倍高も想定内
  • 第1章:内需株がポテンシャルありすぎる理由
  • 第2章:「成長率」で超カンタンにスクリーニング
  • 第3章:「小型株」に絞ればチャンスは10倍!
  • 第4章:「小売外食株」で食べ歩きをお金に変える
  • 第5章:「配当株」で着実に利益の底上げをする
  • 第6章:超シンプルな売買ルールで利益を驚異的にアップ
  • 第7章:暴落を爆益に変える底値買いの必勝ルール
  • 第8章:はじめての人が1年で利益を出す5つのステップ

2.政策金利と長期金利

第1章では、米国の長期金利と株価について触れられていますが、不正確な部分がありましたので、ここで指摘しておきたいと思います。

それは、以下の記載になります。

FRBが利上げをすると、連動するように米国の長期金利も上昇傾向となります。さらに、米国の長期金利が上がれば米国国債の利回り(いわゆる利息のこと)も上昇していく流れになります。

そのため、FRBが利上げを発表するたびに、米国国債の利回りも上がっていくと連想できます。

何が間違っているのかというと、FRBの利上げが影響してくるのは、あくまで短期金利だということです。

一方で長期金利は、景気や経済の見通しによって決まってくるものなので、例えば、FRBの行き過ぎた利上げにより景気が冷え込んでくると、長期金利が低下していくというものなのです。

3.成長株を見つけるポイント

第2章では、売上が急拡大中の企業を見つける4つのポイントとして、以下のような着眼点が挙げられています。

  1. 既存事業の拡大
  2. 新産業
  3. 新業態
  4. M&A

そして、その具体例として、次のような企業が取り上げられています。

  • RIZAPグループ(2928)
  • アイモバイル(6535)
  • M&Aキャピタルパートナーズ(6080)
  • ストライク(6196)
  • 日本M&Aセンター(2127)
  • 日本セラミック(6929)
  • ABホテル(6565)

4.小型株の優位性はあるのか?

第3章および第7章では、小型株の優位性について触れられています。

特に第7章では以下のような記載があります。

米国市場では、1930年代以降、小型株のリターンが大型株を上回るということが1980年代に入り、報告されるようになりました。

1993年にユージン・ファーマとケネス・フレンチにより発表された理論なのですが、提案者の一人であるユージン・ファーマはこの研究も含めた経済学の貢献により2013年ノーベル経済学賞を受賞しています。

しかし、実はこの「小型株プレミアム」は、1980年代初期から統計学的に有意ではなくなったという研究結果が相次いでいるのです。

そして、本書に記載されている研究結果に関しては、サンプル選択バイアスを含むものであったと指摘されています。

また、イスラエルとモスコウィッツ(2013年)による、1926年7月から2011年12月までの米国株データを使った調査では、小型株プレミアムは、全期間においても、4つの20年期間のどの期間においても優位性はなかったと報告されています。

つまり、小型株はもはや大きな優位性を提供してくれるものではないということです。

なお、第3章では以下の銘柄が紹介されています。

  • アイ・アールジャパンホールディングス(6035)
  • ビーグリー(3981)
  • アニコムHD(8715)
  • 日本動物高度医療センター(6039)

5.小売外食株の見極め方

第4章は、主に「小売外食株」についての内容となっています。

小売業の出店戦略として、大都市圏や駅前を狙うものと、地方都市やロードサイドを狙うものに大きく分けられます。

例として、家電量販店のビックカメラ(3048)とヤマダ電機(9831)、中華料理のハイデイ日高(7611)と幸楽苑ホールディングス(7554)の比較がされています。

そして、大都市圏や駅前に出店した企業が大きく成長する傾向があると書かれています。

一方で、地方や郊外で活躍している企業として、コメダホールディングス(3543)やヨシックス(3221)が挙げられています。

これらの企業の共通点として、名古屋の外食店銘柄は大化けすることが多いとも書かれています。

6.注目のインフラファンド

第5章では、高利回りの投資対象として、「インフラファンド」について主に書かれています。

インフラファンドでは、太陽光発電設備を所有し、その売電収入を投資家に分配します。

インフラファンドの分配金利回りが高い理由は、J-REITと同様に、利益の90%以上を配当金として支払うことにより、法人税を支払わなくていいという特別なルールにあります。

そして、本書では、インフラファンドの中でも、タカラレーベンインフラ投資法人(9281)に注目していると書かれています。

7.売買ルールと投資戦略

第6章は、売買ルールなどについての内容で、例えば以下のようなものが挙げられています。

  • 投資資金は余裕資金の50%まで
  • 最低5銘柄には分散投資をする
  • 一度買ったら、最低半年は保有する

また、上方修正を発表しなくてはいけない2つの基準を知ることで、先回り投資することが可能になるという内容についても解説されています。

その2つの基準というのは次のようなものです。

  • 売上高で10%以上のかい離
  • 営業利益・経常利益・当期純利益のいずれかで30%以上のかい離

さらに、上方修正は上記のようなかい離率の基準は定められていても、発表する日の決まりはないと言います。

そのため、四半期ごとの決算短信の発表で、上記のような業績のかい離が見られた場合には、その後に上方修正が発表されて株価が急騰するケースがあるのです。

第8章でも売買ルールなどについて触れられています。

それは例えば、エントリーしてから、好業績を発表している会社の株のみを買い増していき、逆に業績の内容が会社予想よりも悪い会社は買い増しを一切せず、100株のみの保有だけで終わらせるというものです。

これにより、利益は大きく伸ばしながら、損失は最小限に留めることができます。

また、2期連続で決算短信の純利益が減となった場合には、損切りという判断を下すようにしているとのことです。

8.総括

本書は、何冊かの著書を出版されており、株式投資でも資産1億円を突破した個人投資家によって書かれたものです。

ここでも触れたように、一部内容が不正確なところもありましたが、長きにわたって株式投資を実践されてきた著者によるものということもあって、示唆を得られる内容も多かったと言えます。

本書では、財務諸表分析のような定量的な分析ではなく、定性的な分析が中心となっていますが、成長株を見極める上では、こういった見方の方がより重要なものとなってくるのだろうなとの思いを強くしました。

 

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