ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
なお、この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。
そして直近では、日経平均株価は急伸し、PERも15倍超での推移となっています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
平均PBRは6月19日大引けの時点で、1.37倍となっています。
なお、6月19日大引けの時点で、平均PBR 1.3倍相当が31665円、平均PBR 1.4倍相当が34101円となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、海外投資家の売買動向は、長らく売り越し傾向となっていましたが、直近では大きな買い越しへと転じていることが見て取れます。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から、日銀のETF買い入れは、2021年4月より大きくペースダウンしていることが分かります。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。
ちなみに、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価は次のようになっています。
ドル建て日経平均株価では、長らく上値抵抗線となっていた225ドルを超えてきましたが、21年2月に付けた280ドル台後半の高値まではまだ距離があることが分かります。
3.信用評価損益率
続いて、信用評価損益率を見ていきます。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
信用評価損益率は、直近の6月9日時点では、-9.0%となっています。
信用評価損益率では、信用買い建玉のみの損益を見ており、空売りの損益は反映されていません。
ですから、直近で日本株が大きく上昇しているにも関わらず、信用評価損益率がほぼ横ばいで改善を認めていないというのは、意外な結果だと言えます。
4.騰落レシオ
最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオは、6月19日時点で110.6とどちらかというと天井圏近くでの推移となっています。
5.総括
日経平均株価は、23年4月末に年初来高値を付けてから、上げ足を速め、直近では33500前後での動きとなっています。
ここまで見てきたように、この上昇を牽引してきたのは、海外投資家の買いです。
その背景には、日銀が主要国で唯一、金融緩和を続けていることや、日本株が相対的に割安であるとの認識が広がったことなどが挙げられます。
ただ、その割安感も足元では、平均PERやPBRで見るとだいぶ薄まってきていると言えます。
ですから、この先も上昇を続けるには、業績予想の改善が重要になってくると思われ、7月下旬からの決算シーズンがいつにも増して注目されるところです。
もう少しだけ長期的な目線では、24年1月から新NISAが始まることは日本株にとって追い風になると思われます。
最近の日本株上昇を受けて、国内投資家も日本株を見直す動きが見られ始めているためです。
ただ、今のところ米国株も堅調な値動きとなってはいますが、米国の景気後退に関しては常に警戒しておくべきではないかと考えています。