ここでは、直近(2018年12月)の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポジション、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API)といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.WTI原油とCFTC建玉明細(投機筋)
まず、CFTC建玉明細から投機筋のネットポジションの長期推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図から、直近で投機筋のネットポジションは大幅な売り越し傾向となっており、それに伴って、WTI原油先物価格も急落していることが見て取れます。
2.WTI原油とブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
次に、市場が推測する期待インフレ率を示す指標である、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)についてです。
このBEIの推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図からは、期待インフレ率の低下に伴って、WTI原油先物価格も下落していることが分かりますが、原油価格の変化の方が断然、大きなものとなっています。
3.WTI原油先物価格と原油在庫統計(EIA・API)
最後に、原油在庫統計についてです。
まず、米国エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
続いて、米国石油協会(API)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
これらの図から、EIAとAPIの原油在庫統計ともに、2018年9月より在庫が増加へと転じており、それに伴ってWTI原油先物価格も下落しているのが分かります。
4.総括
WTI原油先物価格は、2018年11月末に50ドル強まで大きく下落していました。
そして、12月7日には、石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどが、協調減産に踏み切ることで合意したものの、依然として同等の水準での推移となっています。
この背景にあるものとして、アメリカのシェールオイルの生産量が増加していることが挙げられます。
しかも、以前は60~65ドル以上と言われていた、シェールオイル企業の採算ラインが、最近では30~40ドルにまで下がっているといいます。
また、米中貿易摩擦の激化に伴い、世界的な景気減速から原油需要が鈍化する可能性が高まっていることも、原油価格下落の一因として挙げられます。
一方で、国際エネルギー機関(IEA)は、原油生産関連施設への投資の減少や、新興国での需要増加に伴い、原油価格は長期的に上昇基調をたどるとの見通しを11月13日に公表しています。
具体的には、2025年に88ドル、2040年に112ドル(加盟国の平均輸入価格ベース)と予測しているのです。
さらに、原油価格の予想に関しては割と信頼性の高いゴールドマン・サックスが、11月26日付けで原油や金(ゴールド)などの買い持ちを推奨しています。
以上のことを踏まえ、また米中貿易摩擦が長引きそうなことも併せて考えると、原油価格はしばらくは低迷することが予想されますが、その後は再び上昇へと転じていくのではないでしょうか。