相場のデータ・指標

【2024年12月】「東証REIT指数」の最新データ分析(NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証プライム上場株式の配当利回り・投信の資産増減状況)

ここでは、直近の「東証REIT指数」について、NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証プライム上場株式の配当利回り・投信の資産増減状況などといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。

1.東証REIT指数とTOPIX

まずは、東証REIT指数とTOPIXの推移を見比べてみます。

24年12月までの東証REIT指数とTOPIXの推移を示した図

この図から、TOPIXと東証REIT指数とは強い相関を認めていますが、直近では両者の乖離が大きくなっていることが分かります。

2.東証REIT指数とNAV倍率・分配金利回り

次に、東証REIT指数をNAV倍率や分配金利回りといった点から見ていきます。

まずは、NAV倍率の方からです。

24年12月までの東証REIT指数とNAV倍率の推移を示した図

NAV倍率は、0.82倍(24年10月末時点)となっており、割安感が少しずつ高まってきていると言えます。

続いて、分配金利回りの推移についても見ていきます。(見やすくするために、右軸にある分配金利回りのスケールは反転させてあります。)

24年12月までの東証REIT指数と分配金利回りの推移を示した図

直近のJ-REIT分配金利回りは5.02%(24年10月末時点)となっており、コロナショック後を超える水準にまで上昇していることが分かります。

3.各種利回りの比較

さらに、REITの分配金利回りは、株式の配当利回りや長期金利(10年国債利回り)などとの関係で決まってくる面もあると思われるため、それらの比較をしたのが以下の図になります。

24年12月までの分配金利回り、配当利回り、長期金利の推移を比較した図

ここで、長期金利(10年国債利回り)に関しては、24年3月にようやく日銀が長期金利の誘導目標を撤廃し、長短金利操作(YCC)は終了する形となりました。

とはいえ、一定規模の長期国債の買い入れは続いており、急激に長期金利が上昇する可能性は低いと言えます。

最近まで長期金利は抑制されていたこともあり、ここではJ-REITの分配金利回りと東証プライム市場の配当利回りを比較してみることにします。

このJ-REITの分配金利回りとプライム市場株式の配当利回りとのスプレッド(利回り差)の推移を示したのが以下の図です。

24年12月までの分配金利回りと配当利回りのスプレッドの推移を示した図

この図から分かるように、スプレッドは過去10年間でみれば高い水準となっていますが、過去20年間にまで遡ると、まだ決して高い水準とは言えないことが見て取れます。

4.投資信託の資産増減状況と東証REIT指数

なお、東証REIT指数を構成しているJ-REIT市場における主な投資家としては、日銀や投資信託、海外投資家が挙げられます。

そして、東証REIT指数の推移は、その中でも投資信託の資産増減状況との関連が比較的強いため、その影響についてここでは見ていきます。

具体的には、投資信託の商品分類のうち、「毎月決算型」、「国内 不動産投信」の2つについてです。

まずは、「毎月決算型」の方からになります。

24年12月までの東証REIT指数と毎月決算型投信の推移を示した図

ここ最近では、「毎月決算型」投信の純資産総額はほぼ横ばいとなっており、東証REIT指数との乖離も大きなものとなっています。

2017年末頃から両者が乖離した状況が続いていおり、「毎月決算型」投信の純資産総額は、もはやあまり参考にならないのかもしれません。

続いて、「国内 不動産投信」になります。

24年12月までの東証REIT指数と国内不動産投信の推移を示した図

「国内 不動産投信」の純資産額の推移は、東証REIT指数と割と連動するような動きとなっていることが分かります。

また、ここ最近は東証REIT指数の軟調な値動きに引きずられて、「国内 不動産投信」の純資産額も減少傾向にあるように見えます。

5.総括

東証REIT指数は、軟調な値動きが続いており、TOPIXと比較するとさらにその弱さが際立ちます。

J-REITの予想分配金利回りは、24年10月末時点で平均して5.02%で、これは一見すると利回りが高いように感じるかもしれませんが、REITでは、収益の9割以上が分配金として還元されていることを忘れてはなりません。

一方で、24年11月末時点でのプライム市場全銘柄の加重平均配当利回りは、2.14%となっています。

日本企業の配当性向が3割強であることを加味すると、収益性という観点では、株式の方に軍配が上がるでしょう。

もちろん、単純に利回りだけで比較できるものではありませんが、それでも業績が比較的堅調で、株価も依然として割安な企業が多いことを考えると、REITよりも株式の方に投資妙味があるのではないかと考えています。

また、J-REIT市場では、平均LTV(=有利子負債÷総資産)が45.3%(24年10月末時点)と、平均して半分弱を有利子負債で賄っているため、REITは金利上昇リスクに弱いのではないかと懸念されるかもしれません。

しかし、これに関しては、2022年の上場企業全体の有利子負債依存度(=有利子負債÷総資産)の平均が86.4%、中央値が31.4%であるため、一概にREITの方が株式よりも金利上昇リスクに弱いとは言えません。

そして株式市場においては、23年3月末に東京証券取引所が、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対し、改善策の開示・実行を要請するということがありました。

このPBRとREITにおけるNAVというのは似た概念ではあるのですが、PBRは簿価(取得原価)で算出されるのに対し、NAVは時価をベースに算出されます。

直近のNAV倍率は、0.82倍(24年10月末時点)と一見、割安なように感じますが、金融緩和が実質的に継続されており、高騰し続ける不動産の時価を基に出されたものであることを忘れてはいけません。

さらに、日銀が年内か年明けに追加利上げを決定すると見られており、そうした金利先高観がREIT市場への逆風となる状況が当面は続きそうです。

そういったことなどを踏まえると、REITへの投資妙味が生まれるのは、もうしばらく先のこととなるのではないでしょうか。

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