相場のデータ・指標

「日経平均株価」のデータ分析(2021.3)(PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオ)

ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

1.PER・PBR

まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。

この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。

日経平均株価とPER13~17倍相当株価の推移を示した図(2021.3)

この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されています。

そのため、こういった状況下では、平均PERが指標としての意味を為さなくなってしまっていると言わざるを得ません。

次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。

PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

日経平均株価とPBR1~1.5倍相当株価の推移を示した図(2021.3)

平均PBRは3月19日大引けの時点で、1.36倍での推移となっています。

なお、3月19日大引けの時点で、平均PBR 1.2倍相当が26287円、平均PBR 1.3倍相当が28478円となっています。

2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ

次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。

海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。

海外投資家の売買動向と日経平均株価の推移を示した図(2021.3)

この図から、2020年10月頃より、海外投資家の買い越し傾向が続いていることが分かります。

また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。

ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。

この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。

日銀ETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示した図(2021.3)

この図から、日銀のETF買い入れは直近においてペースダウンしていることが分かります。

さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

日銀ETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額との合計と日経平均株価の推移を示した図(2021.3)

この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。

3.NT倍率

また、NT倍率も見てみることにします。

NT倍率と日経平均株価の推移を示した図(2021.3)

この図からは、NT倍率だけが直近で急落していることが見て取れますが、これについては最後の総括で触れたいと思います。

4.信用評価損益率

続いて、信用評価損益率を見ていきます。

以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。

信用評価損益率と日経平均株価の推移を示した図(2021.3)

一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。

信用評価損益率は、足元で-8.1%となっており、そこまで相場の過熱感があるようには見えません。

ただ、今回の株価上昇が大きく急なものであったため、空売りによる損失が膨らんでいる投資家も少なくないと思われ、それにより信用評価損益率の上昇が鈍くなっているのかもしれません。

5.騰落レシオ

最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。

騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

騰落レシオと日経平均株価の推移を示した図(2021.3)

この図から、騰落レシオに関しても、株価の上昇と比較して、そこまで上昇していないことが分かります。

6.総括

ここまで見てきたように、今回の株価上昇は、主に外国人投資家の買いによってもたらされたものだと言えます。

また、NT倍率が急落していますが、これは日経平均株価を主導してきた一部の値嵩株が軟調な値動きとなっているためです。

それらの銘柄は、グロース株かバリュー株かで言えば、グロース株に分類されますが、世界的な低金利を背景に、一般的な株価指標からすると、かなり割高な水準まで買い進められていました。

それが最近の米長期金利上昇を受けて、グロース株が軟調な値動きとなっているのです。

さらに、日銀は3月18~19日の金融政策決定会合で、主に次のような政策変更を決めました。

  • 長期金利の変動幅を「±0.25%程度」とする。
  • ETF買い入れの「年6兆円」の基本原則を撤廃。(年12兆円の上限は継続。)
  • ETFの買い入れ対象をTOPIX(東証株価指数)連動型のみとし、日経平均株価連動型は除外。

これらの政策変更もあり、今後、NT倍率はさらに低下していく可能性が高いと言えそうです。

逆に言えば、TOPIXの方は、日経平均株価に対して相対的に上昇していくことが期待できます。

実際、東証1部上場企業には、割安な成長株が探せばまだまだあります。

ここから先は、そういった企業を中心とした幅広い銘柄が上昇していくことになるのではないでしょうか。

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