ここでは、直近の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.日米10年国債利回りとドル円相場
まずは、米国の10年債利回りとドル円相場の推移を比較してみます。
この図から分かるように、米長期金利は1980年代より右肩下がりの傾向となっていましたが、ここ数年で急反発していました。
一時5%超を付けた米長期金利は、直近では3.6%台での推移となっています。
次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。
こちらの図では、ドル円相場の動きが、日米の長期金利差と概ね連動していることが見て取れます。
直近では、両者の動きの連動性は高いものの、この図における両者の乖離は拡大したままとなっています。
2.購買力平価とドル円相場
次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。
なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。
この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長い中で、ここ数年は企業物価PPPより上での推移となっていたことが分かります。
さらに、2022年以降、ドルの円レートが消費者物価PPPを大きく超える動きとなっており、直近においてもその状態が継続しています。
3.修正ソロスチャートとドル円相場
最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。
この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率との相関性が高いことと同時に、最近では両者の乖離が拡大していることが分かります。
4.総括
ドル円相場は、7月初めに162円台を付ける場面もありましたが、そこからは一転して円高ドル安の動きとなっており、足元でも140円近くでの推移となっています。
この背景としては、既に多く言及されていますが、円キャリートレードの巻き戻しが大きかったと思われます。
また、9月17~18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げが確実視されており、それを皮切りに来年2025年中まで利下げが続いていくであろうことが、市場では織り込まれているようです。
これは、米経済のソフトランディングは可能という識者がまだ多くいる一方で、市場はかなり景気後退を警戒しているということではないかと思われ、それは長期金利の低下にも表れています。
そして、インフレ率は低下傾向にありますが、その内訳を見ると、外食や宿泊などのサービス価格は上昇しており、このままインフレ率が落ち着いていくとは限りません。
そうなると、FRBも市場が織り込んでいるほどの利下げを続けていくことは難しくなるでしょう。
さて、ドル円の需給環境をCFベースで見てみると、日本はデジタル赤字を主としたサービス収支のマイナスが大きく、中長期的にはドル高円安となっていきそうです。
ただ、為替市場では実需よりも投機的なポジションの方が大きいため、当面のドル円相場は日米金利差の動向にかかっており、それは主に日米の景気やインフレの動向次第と言えます。
いずれにしても、米経済のハードランディングのような事態にならなければ、ドル円相場は再び方向感の乏しい展開となるのではないでしょうか。