読書録・書評

【読書録・書評】『1%の人が知っている99%勝てる株が見つかる本』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.本書の概要

まずは、本書の概要からです。

本書では、第2章までが、外資系運用会社で日本株のファンドマネジャーを務めた山本 潤氏によって書かれており、個別株の銘柄選別法についての内容となっています。

また第3章は、プロ経営者の皆木 和義氏によって書かれており、経営戦略やビジネスモデルなどについて触れられています。

ここでは、第3章以外の、山本氏によって書かれた部分についてレビューしていきたいと思います。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 序章:株の神髄は「成長株投資」である
  • 第1章:本邦初公開! 99%勝てる株が見つかる11のシンプル計算
  • 第2章:いま仕込んでおくべき成長株を紹介!
  • 第3章:成長株選びに欠かせない経営者、経営戦略、ビジネスモデルの見極め方

2.多段階配当モデル

本書で紹介されている手法は簡単に言うと、配当の増加が期待できる、業績拡大が見込まれる成長企業に投資する、というものになります。

難しい言い方をすると、「多段階配当モデル」を簡略化したもので、将来の配当価値をベースに理論株価を「将来」価値ベースで簡易的に算定したものとのことです。

この手法は、大きく2つの段階からなります。

まず初めが、「成長株を見つける5つのステップ」で、次が「株価の上値目処を算出する6つの手順」です。

3.成長株を見つける5つのステップ

まず、「成長株を見つける5つのステップ」は、以下のようなものとなっています。

  1. 営業費用売上比率 1.15以上
  2. 配当性向5割以上
    1. ステップ2がNoのとき→ステップ3へ
    2. ステップ2がYesのとき→ステップ4へ
  3. 4年連続増収か
  4. 数値目標や中長期の経営計画が公表されているか
  5. 商品やサービスに永続性があるか、今後も増収基調が期待できるか

ここで、ステップ2で、「配当性向が5割以上」となっているのは、著者が日本企業の現時点で3割程度の配当性向が、将来的には4~5割に向かっていくだろうと想定しているためです。

その理由としては、米国では配当性向が4~5割であることなどが挙げられています。

4.営業費用売上比率が1.15以上

この「成長株を見つける5つのステップ」、というより本書全体の中で、ステップ1にある「営業費用売上比率 1.15以上」というのは、最も重要なポイントだと言えるでしょう。

これは、「営業費用売上比率」が高いと、付加価値の高い商品やサービスの比率が高いと考えられるためです。

なお、業界全体が低収益の場合、例えば、食品、外食、陸運、卸売や商社などでは、これが1.1程度でも構わないと書かれています。

また、「景気変動によって売上が大きく変動する機械株や半導体製造装置株は、単年度でこの条件をクリアしても、翌年には赤字になってしまうことがあるので注意が必要です」とのことです。

5.営業利益率が13%以上

さて、そもそも「営業費用売上比率」というのは、あまり聞き慣れない言葉だと思われます。

本書では、「営業費用」について、次のように説明されています。

事業に必要なお金は、営業費用(社員の給料、賃料、設備投資の結果として生じる減価償却費、商品仕入れや原材料の費用、サーバーの使用料金など)と呼ばれます。

つまり、「営業費用=売上原価+販売費及び一般管理費(販管費)」ということになります。

「売上原価」を含まずに「販管費」だけを指して、営業費(営業費用)と呼ぶこともあるため紛らわしいのですが、ここではそうでないことが分かります。

すると、営業利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費」であるため、「営業利益=売上高-営業費用」であると言えます。

となると、営業費用売上比率は、(売上高)営業利益率に置き換えることができるはずです。

実際に計算して見ると、「営業費用売上比率≧1.15」というのは、「営業利益率≧0.13(13%)」と同義になります。

であるならば、初めから「営業利益率13%以上」と書けば良いのに、どうしてわざわざ「営業費用売上比率」のような、分かりづらい表現をしているのかは理解に苦しむところです。

6.株価の上値目処を算出する6つの手順

続いて、「株価の上値目処を算出する6つの手順」については、以下のような手順となっています。

  1. NOPAT(税引後営業利益)を計算:法人税率を4割として、営業利益に0.6を掛ける。
  2. NOPATの4割を計算:配当性向を4割として、疑似配当総額を算出する。
  3. 疑似的なROEを算出:NOPATを自己資本(株主資本)で割る。
  4. ROEによる場合分け:7年後の配当予想金額を想定する。
    1. ROE 20%以上    → 2.の配当総額を4倍(‥1.2の7乗≒3.6)
    2. ROE 15~20%未満 → 2.の配当総額を3倍(‥1.17の7乗≒3)
    3. ROE 10~15%未満 → 2.の配当総額を2倍(‥1.12の7乗≒2.2)
    4. ROE 10%未満   → 2.の配当総額を1.5倍(‥1.07の7乗≒1.6)
  5. 将来の配当の利回りを計算:4.で算出した将来の配当総額を時価総額で割る。これが、2%を上回る場合には「買い」の候補とする。
  6. 上値目処を計算:5.で算出した利回りを、市場の単純平均利回りで割る。

なお、手順5において、2%で評価するのは、日本株の現在の配当利回り(東証1部単純平均利回り)が約1.6%だからとのことです。

また手順6では、例えば手順5で算出した将来の配当利回りが4%であった場合には、4÷1.6=2.5倍となり、将来的な時価総額(株価)が2.5倍になることが期待できるということになります。

そして、手順6までを計算したうえで、上位5~10銘柄に投資し、その後は年に1回の見直しにより銘柄の入れ替えを行うとのことです。

7.総括

本書に書かれている、「営業費用売上比率」の高さとトレンド(プラスの変化が続いていること)を基準に投資先を選ぶという観点は、非常に本質的な銘柄選別法だと言えます。

また、株式投資では銘柄選別と同等かそれ以上に、売り時というのが悩ましい問題ですが、配当利回りから、将来の上値目処を計算するというのも参考になります。

そして、ここでは触れませんでしたが、第3章の経営戦略やビジネスモデルといった内容に関しても、企業の将来性を測るうえでは、大変参考になる考え方です。

そういったことから本書は、長期投資における一つの考え方を提供してくれる良書だと言えるでしょう。

 

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