ここでは、直近(2019年6月)の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポジション、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API)といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.WTI原油とCFTC建玉明細(投機筋)
まず、CFTC建玉明細から投機筋のネットポジションの長期推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図からは、WTI投機筋のネットポジションとWTI原油先物価格が、強い相関性を認めていることが分かります。
直近では、投機筋のネットポジションはほぼ横ばいで、WTI原油先物価格も三角持ち合いを形成しています。
2.WTI原油とブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
次に、市場が推測する期待インフレ率を示す指標である、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)についてです。
このBEIの推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図から、WTI原油先物価格とBEIとの間にも、強い相関性があることが見て取れます。
ただ直近では、BEIが急落しており、両者の乖離が広がっています。
3.WTI原油先物価格と原油在庫統計(EIA・API)
最後に、原油在庫統計についてです。
まず、米国エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
続いて、米国石油協会(API)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
これらの図からは、EIAとAPIの在庫統計ともに、直近では減少傾向となっていますが、WTI原油先物価格は、ほぼ横ばいとなっていることが見て取れます。
4.総括
ここまで見てきたように、WTI原油先物価格は、「在庫の減少」と「期待インフレ率の低下」とが拮抗して、ほぼ横ばいとなっているように思われます。
原油の供給面では、石油輸出国機構(OPEC)加盟国やロシアなどによる協調減産が、7月以降も継続されるということで合意されていました。
一方で、最近になって、米中通商交渉の再開が報じられましたが、米中貿易摩擦は一朝一夕に決着がつくものではなく、それによる世界経済の減速および、原油需要の減少が予想されます。
トランプ大統領も来年2020年の大統領選挙を意識しており、地政学的リスクによる原油価格上昇の可能性も低いと言えそうです。
となると今後、原油価格が大きく上昇していくようなシナリオというのは描きづらいのではないでしょうか。