読書録・書評

【読書録・書評】『ウォール街のモメンタムウォーカー』(1/2:モメンタムの概要)

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書では、「モメンタム」というタイミングモデルを用いた投資戦略に関する様々な研究や、簡単な応用方法などについて書かれています。

本書に関しては、第7章までと第8章以降との2回に分けてレビューしていきたいと思いますが、ここでは「モメンタムの概要」ということで、第7章までのレビューについて書いていきます。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1章 世界初のインデックスファンド
  • 第2章 上昇するものは…上昇し続ける
  • 第3章 近代ポートフォリオ理論の原理と応用
  • 第4章 モメンタムの合理的説明とそれほど合理的ではない説明
  • 第5章 資産の選択―良い選択、悪い選択、醜い選択
  • 第6章 スマートベータと都市伝説
  • 第7章 リスクの測定と制御
  • 第8章 グローバル・エクイティ・モメンタム
  • 第9章 モメンタムのさらに効果的な使い方
  • 第10章 最終的考察

2.モメンタムとは?

モメンタム(momentum)は、「勢い」や「惰性」などと訳されるように、相場の勢いを表す表現として用いられます。

また、テクニカル指標の一つにも、「モメンタム」と呼ばれるものが存在します。

これは、当日の価格からn日前の価格を引くことで求められ、ゼロ以上なら強気相場などと判断するものです。

本書で扱われているモメンタムには、「絶対モメンタム」と「相対モメンタム」とがありますが、このテクニカル指標のモメンタムは、前者の「絶対モメンタム」にほぼ該当するものだと言えます。

さらに、本書では「相対モメンタム」を「レラティブストレングス・モメンタム」と表現していたりもします。

これは、これはテクニカル指標の一つであるレラティブ・ストレングス・インデックス(RSI)とは全く別物ですので、混同しないように注意が必要です。

一方で、『オニールの成長株発掘法』の中で言及されている「レラティブ(プライス)ストレングス」とは似た概念だと言えるでしょう。

なお、「相対モメンタム」は「クロスセクション・モメンタム」とも呼ばれ、「絶対モメンタム」は「時系列モメンタム」とも呼ばれます。

話が少しややこしくなってしまいましたが、本書のモメンタムとは要するに、次のように表現できるかと思われます。

モメンタムとは、過去のある一定期間に上昇し続け、同時に他の資産よりもパフォーマンスの良いものは、その後も一定期間にわたり上昇し続ける傾向があるというものである。

3.モメンタムの堅牢性と合理的説明

モメンタム、つまりパフォーマンスの持続は、過去20年にわたって最も研究されてきた金融テーマの1つだと言います。

第2章では、モメンタムの堅牢性の高さを示す、様々な研究について触れられています。

それらは、1800年代初期から今日に至るまで、モメンタムはほぼすべての資産クラスにわたって有効な戦略であることが学術研究によって示されてきたというものです。

また、バリューや、サイズ、カレンダー効果といった市場アノマリーは、発見後に消えたり弱まったりしていたのに対し、モメンタムだけは持続していたという研究も挙げられています。

長年にわたるそうした研究により、学術界ではモメンタムを、常に高いリスク調整済みリターンを得るための「トップレベルのアノマリー」と位置づけているとのことです。

さらに第4章には、「モメンタムは、1990年代初期に広く一般に知られるようになって以来ずっと存在し続ける唯一のアノマリーだ」とあります。

そして第4章では、モメンタムの利益を説明する行動モデルについて書かれています。

そこでは、投資家が最近上昇した株への投資を増やし、最近上昇しなかった株への投資を減らすという、「確証バイアス」モデルについて触れられています。

また別の研究では、価格が上昇すれば買い下落すれば売るという、正のフィードバック戦略に従うトレーダーの存在が明らかになり、それによって価格の過剰反応が起こると述べられています。

4.その他の資産と投資家の行動

第5章では、「資産の選択」ということで、債券やコモディティ先物、ヘッジファンド、プライベートエクイティ、投資信託などについて言及しています。

まず債券について、現在の低金利環境では、債券のエクスポージャーを高めるのは良い考えとは言えないということです。

コモディティ先物に関しては、ヘッジャーや投機家がリスクをトレードする、いわば保険のような市場で、正のリターンは期待できないと書かれています。

ヘッジファンドについても、「正のリスク調整済み超過リターンを生み出す能力がないことが分かった」、「実質アルファはゼロに近いという結論に達した」などと述べられています。

プライベートエクイティには、ベンチャーキャピタル、バイアウト投資、企業再生投資、ディストレス投資などがありますが、これらは手数料が高く、非流動的で、パフォーマンスに波があります。

プライベートエクイティは、エール大学などの寄付基金の資産配分で大きな比率を占めているものの、アルファは認められなかったと言うのです。

投資信託に関しても、コストを賄えるほどのベンチマークを上回るリターンを上げたファンドはほとんどなかったとのことです。

さらに第5章では、米国やヨーロッパの個人投資家の行動について分析調査したものが紹介されています。

それによると、個人投資家が保有するのは、高い相関性を持つ2~3銘柄だけで、価格が安く、特異な高いボラティリティを持つ銘柄を好むという宝くじメンタリティーを持っていたとあります。

5.スマートベータと小型株・バリュー株効果

第6章は、スマートベータについての内容となっています。

スマートベータとは、従来の株価指数のような時価総額や株価といった基準ではなく、ボラティリティや配当、PBR、ROEなどといった特定の要素を重視する考え方になります。

しかし、「スマートベータは本質的にはアルファには寄与しない」ことを示した研究がいくつか挙げられています。

また、スマートベータ戦略が、時価総額ベースのインデックスをアウトパフォームしたとしても、それはバリューファクターや小型ファクターによるものだとも書かれています。

ただ、小型株プレミアムはもはや、流動性の低い超小型株を除いて、大きなリスク調整済み利益は提供してくれないとの研究も紹介されています。

そして、標準的なバリューファクターであるPBRに関しても、その優位性を示した名高いファーマとフレンチの研究に、対立する結果を示したコタリらの研究について言及されています。

コタリらは、PBRと平均リターンの間には有意な関係はないと結論づけたものの、その研究は当時も今もあまり注目されることはないと書かれています。

6.絶対モメンタムの概要

第7章では、主に絶対モメンタムについて説明されています。

絶対モメンタムでは、任意のルックバック期間(観察期間)における資産の超過リターン(Tビルのリターンを差し引いたリターン)を求めます。(Tビル:米財務省発行の短期国債のこと)

絶対モメンタムというのは簡単に言うと、ある一定期間において、その資産が上昇したか下落したかを見るものになります。

上昇していれば、絶対モメンタムは正で、下落していれば絶対モメンタムは負だということです。

また、全てのモメンタムは本質的にはトレンドフォローであるとも書かれています。

相対モメンタムは、ある資産の他の資産に対するトレンドを見るもので、絶対モメンタムは、ある資産のその資産の過去に対するトレンドを見るものだからです。

そして、絶対モメンタムが研究対象になったのは最近のことだが、絶対モメンタムは相対モメンタムよりも良い結果を提供し、優れた柔軟性を持つと言います。

絶対モメンタムは、高い期待リターンを与えてくれるだけでなく、ベア相場で早めにポジションを手仕舞うことで、ポートフォリオの下方リスクを劇的に低減できると言うのです。

具体的には、いくつかの研究から、以下のような結果が示されています。

  • 保有期間を1ヵ月としたとき、1ヵ月から48ヵ月のルックバック期間のなかで統計学的に最も有意なのは12ヵ月であることを発見した。
  • 絶対モメンタムの利益は調査した58資産のすべてで正だった。
  • すべての市場において、絶対モメンタムの年次シャープレシオは1を上回った。
  • 各資産クラスでパッシブベンチマークに対する相関は非常に低かった。
  • 4つの資産クラス(コモディティ、株価指数、債券、通貨ペア)の59の市場において極端な市場環境のときに高いパフォーマンスを上げることを発見した。

これらを踏まえた上で、最も良いのは、絶対モメンタムと相対モメンタムの両方を使い、両方の長所を引き出すことだとしています。

それにはまず相対モメンタムを使って前の12ヵ月にわたってパフォーマンスが良かった資産を選び、次に絶対モメンタムをトレンドフォローフィルターとして使います。

つまり、選んだ資産の超過リターンが前の12ヵ月にわたって正だったか負だったかを見るということです。

さて、第7章までのレビューはここまでとなります。

続く、第8章以降のレビューにつきましては、「具体的なモメンタム戦略」ということで、以下の記事で書いていますので、よろしければご参照ください。

 

 

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