相場のデータ・指標

「東証REIT指数」のデータ分析(2021.6)(NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式の配当利回り・投信の資産増減状況)

ここでは、直近の「東証REIT指数」について、NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式の配当利回り・投信の資産増減状況などといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。

1.東証REIT指数とTOPIX

まずは、東証REIT指数とTOPIXの推移を見比べてみます。

東証REIT指数とTOPIXの推移を示した図(2021.6)

この図から、TOPIXと東証REIT指数とは強い相関を認めることが分かります。

また、出遅れていた東証REIT指数も、TOPIXにかなりキャッチアップしていることが分かります。

2.東証REIT指数とNAV倍率・分配金利回り

次に、東証REIT指数をNAV倍率や分配金利回りといった点から見ていきます。

まずは、NAV倍率の方からです。

東証REIT指数とNAV倍率の推移を示した図(2021.6)

NAV倍率は、東証REIT指数の上昇に伴って、1.2倍に迫る水準にまで上昇しています。

続いて、分配金利回りの推移についても見ていきます。(見やすくするために、右軸にある分配金利回りのスケールは反転させてあります。)

東証REIT指数と分配金利回りの推移を示した図(2021.6)

直近のJ-REIT分配金利回りは3%台前半にまで低下しており、割高感が出始めているように思われます。

3.各種利回りの比較

さらに、REITの分配金利回りは、株式の配当利回りや長期金利(10年国債利回り)などとの関係で決まってくる面もあると思われるため、それらの比較をしたのが以下の図になります。

分配金利回り、配当利回り、長期金利の推移を比較した図(2021.3)

ここで、長期金利(10年国債利回り)に関しては、日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」などにより、ここ何年かはほぼゼロ%近傍での推移となっています。

そういったこともあり、長期金利は比較対象として適切なものかどうか疑わしいため、ここではJ-REITの分配金利回りと東証1部株式の配当利回りとを比較してみます。

このJ-REITの分配金利回りと東証1部株式の配当利回りとのスプレッド(利回り差)の推移を示したのが以下の図です。

分配金利回りと配当利回りのスプレッドの推移を示した図(2021.6)

この図から分かるように、スプレッドも低下傾向となっており、東証REIT指数は割高感が強まりつつあると言えます。

4.投資信託の資産増減状況と東証REIT指数

なお、東証REIT指数を構成しているJ-REIT市場における主な投資家としては、日銀や投資信託、海外投資家が挙げられます。

そして、東証REIT指数の推移は、その中でも投資信託の資産増減状況との関連が比較的強いため、その影響についてここでは見ていきます。

具体的には、投資信託の商品分類のうち、「毎月決算型」、「国内 不動産投信」の2つについてです。

まずは、「毎月決算型」の方からになります。

この「毎月決算型」を見るのは、分配金を毎月出す投信にとって、相対的に利回りの高いREITというのは、都合が良いためです。

東証REIT指数と毎月決算型投信の推移を示した図(2021.6)

ここ最近では、「毎月決算型」投信の純資産総額はほぼ横ばいとなっていますが、東証REIT指数が上昇したため、両者の乖離が広がる結果となっています。

2017年末頃からは両者の乖離が拡大傾向となっており、「毎月決算型」投信の純資産総額は、もはやあまり参考にならないのかもしれません。

続いて、「国内 不動産投信」になります。

東証REIT指数と国内不動産投信の推移を示した図(2021.6)

一方で、「国内 不動産投信」の純資産額の推移は、東証REIT指数とほぼ連動するような動きとなっていることが分かります。

株式と比較して割安感があったり、他の金融商品と比べて利回りの高かった不動産投信に資金が流入していたということでしょう。

5.総括

前回(2021年3月)の東証REIT指数のデータ分析では、REITの割安感がある程度修正されたように思われると書きましたが、今回はそこからさらに上昇し、割高感が台頭しつつあるように思われます。

そしてREITを、「物流」、「住居」、「オフィス」、「商業施設」、「ホテル」といった用途別に分けて見てみると、「住居」や「商業施設」系銘柄はコロナ前の水準を回復しており、「物流」系銘柄はコロナ前の水準を大きく超えて上昇しているものが目立ちます。

「オフィス」や「ホテル」系銘柄の多くは、コロナ前の水準を回復するには至っていませんが、堅調な推移を見せており、特に「ホテル」系銘柄に関しては、コロナ後の需要回復をかなり織り込んでいるように思われます。

私も保有していたREIT銘柄は、ほとんど売り切ってしまいましたが、現状のREITに関しては、しばらく様子見の方針が望ましいのではないでしょうか。

さて、来る6月22日には約1年半ぶりに、J-REITの新規上場があります。

新規上場となる東海道リート投資法人の概要は下記の通りです。

  • 投資地域:静岡県、愛知県、三重県
  • 上場時資産規模:8物件、303億円
  • 投資対象用途
    • 物流アセット:20.5%
    • 産業・ビジネスアセット:12.9%
    • 住居系アセット:27.1%
    • 底地アセット(浜松プラザ):39.4%

この東海道リート投資法人の上場後の価格推移を占う上で、直近の上場REITの価格推移を見てみたいと思います。

まず、直近5年間に新規上場したのは、下記の9銘柄になります。

コード 投資法人 上場日 上場時資産規模(億円)
3478 森トラスト・ホテルリート投資法人 2017/2/7 1020
3481 三菱地所物流リート投資法人 2017/9/14 709
3487 CREロジティクスファンド投資法人 2018/2/7 448
3488 ザイマックス・リート投資法人 2018/2/15 330
3492 タカラレーベン不動産投資法人 2018/7/27 644
3493 伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人 2018/9/7 538
2971 エスコンジャパンリート投資法人 2019/2/13 416
2972 サンケイリアルエステート投資法人 2019/3/12 434
2979 SOSiLA 物流リート投資法人 2019/12/10 766

続いて、これら9銘柄の上場後の価格推移を示したのが、次の図です。

直近に上場したリート9銘柄の価格推移を示した図

この図を見る限りでは、J-REIT上場後の価格推移に何か目立った傾向というのは認められず、その時の市場環境によるところが大きいと言えそうです。

そう考えると、東証REIT指数に割高感が台頭しつつある現状では、東海道リート投資法人の上場後の価格推移にも、あまり期待はできないのかもしれません。

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