読書録・書評

【読書録・書評】『「会社四季報」最強のウラ読み術』(2/2:J・Nブロック)

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを2回に分けて、その後半部分を書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書では、「会社四季報」を20年以上にわたり読破し続けている渡部清二氏によって、その読み解き方が書かれています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1章:「会社四季報」は、世界でも類を見ない独自視点から生まれた
  • 第2章:「会社四季報」を読み始める前に知っておきたい裏ワザ
  • 第3章:5つのブロックだけを見る、「会社四季報」ウラ読み術
  • 第4章:「会社四季報」で過去から今を学び、今から未来の仮説を立てる
  • 第5章:投資家として企業の人格を知る

ここでは、会社四季報の読み解き方について書かれた、第3章の内容から一部を抜粋してレビューしていきます。

会社四季報では、企業の情報が14のブロックに分けて示されていますが、第3章ではそのうちの5つのブロック(A・B・E・J・N)について触れられており、今回は後半の2つ(J・N)について見ていきたいと思います。

前半の3つにつきましては、以下の記事でレビューしていますので、よろしければご参照ください。

2.業績(売上高・営業利益)について

まず、Jブロックは【業績】欄となっていますが、これは財務諸表で言うところの損益計算書(P/L)になります。

この【業績】欄では、「売上高」と「営業利益」のそれぞれについて、「前期・今期予想・来期予想」の3期分、つまり合計6つの数字だけを見ればいいと書かれています。

「売上高」に関しては、「売上の伸び率」つまり「増収率」を見ることで、「成長性」を測ります。

また、「営業利益」に関しては、営業利益率を業界平均と比較することで、「優良性」を測るとのことです。

そして、それらの数値による判断基準の目安としては、以下のように書かれています。

【売上高の伸び率から成長性を測る】

  • 20%以上:◎
  • 10%以上20%未満:〇
  • 0%以上10%未満:△
  • マイナス:×

(【営業利益の伸び率から成長性を測る】)‥本文の内容などから、おそらく【営業利益率から優良性を測る】が正しいと思われる。

  • 10%以上:◎
  • 業界平均以上10%未満:〇
  • ゼロ以上業界平均未満:△
  • マイナス:×

3.PER(株価収益率)について

続いて、Nブロックに関しては、そこにある株価指標と関連して、PERやPEG、PSRについて述べられています。

まず、PER(株価収益率)に関しては、「指標として見るPER」と「期待値として見るPER」の2種類があると言います。

そのため、PERのみで株価を語ることはナンセンスであり、投資をする際にはPERよりも、相場を動かす材料である「カタリスト」が大事だと書かれています。

つまり、単にPERが割安というだけではなく、「カタリストが現れそうな株」を選ぶことが重要だと言うのです。

それを踏まえた上で、PERによる判断基準の目安としては、次のようなものが挙げられています。

【PERから見る市場評価・投資判断】

  • 東証1部平均以下:〇
  • 東証1平均以上:×

4.PEGレシオについて

次に、PERを期待値として見た場合の判断基準の目安として、PEG(Price Earnings Growth Ratio=ペグ)という指標が挙げられています。

PEGレシオは、PERを利益成長率で割ったもので、例えば、PERが20倍で、利益成長率が10%の場合、PEGレシオは、20÷10=2となります。

PEGレシオの計算に使う「利益成長率」には、営業利益や経常利益の伸び率を使ったり、今期・来期の業績予想や過去の利益成長率から数年分の平均を使ったりと、明確な定義があるわけではありません。

本書では「利益成長率」として、今期および来期の営業利益の増益率を平均したものを使用しています。

つまり、PEGレシオを以下のように算出しています。

PEG=PER÷2期増益平均(今期・来期営業増益率)

そして、PEGレシオを用いた判断基準の目安としては、以下のように書かれています。

【PEGから見る市場評価・投資判断】

  • 東証1部平均以下かつ新興平均以下:◎
  • 東証1部平均超かつ新興平均以下:〇
  • 東証1部平均超かつ新興平均超:×

5.PSRについて

最後のPSR(Price to Sales Ratio=株価売上購買率)は、株価売上高倍率とも言われますが、「成長企業の株価水準の妥当性」を見るときに活用するバリュエーションであると書かれています。

PSRに関しても、その算出に使う「売上高」に、過去12ヵ月間の売上高などを用いたりするることがあるようですが、本書では今期売上高を使って、次のように算出しています。

PSR=時価総額÷今期売上高

そして、PSRを用いた判断基準の目安としては、以下のようなものが示されています。

【PSRから見る市場評価・投資判断】

  • 1倍以下:◎
  • 1倍超、4倍以下:〇
  • 4倍超、10倍以下:△
  • 10倍超:×

なお、この中にある「1倍」という数字について、これは日本の株式市場全体の平均PSRがおよそ1倍であることによるとのことです。

また、「4倍」という数字については、テンバガー(10倍株)的な条件をそろえた銘柄を平均すると、大体4倍になるためと書かれています。

6.総括

前回と今回の2回にわたって、本書の第3章の内容をざっと見てきました。

それらは概ね納得のいくものではありましたが、PEGレシオやPSRについても取り上げられているのは正直意外でした。

これらは、2000年前後のITバブルの頃に、高すぎる株価やPERを正当化するような目的で使用されていた指標でもあったからです。

ですが、本書に書かれているような評価方法で使用するのであれば、有効な指標として機能するのではないかと考えられます。

特に、テンバガー(10倍株)を狙うような成長株投資(グロース投資)を行う場合には、有効な指標となるでしょう。

とはいえ、私自身に限って言えば、そこまでの成長株は狙っていないということもあり、PEGレシオやPSRに関してはあまり重視していません。

一方で、本書では触れられていませんでしたが、私の場合は、他にも考慮に入れている項目がいくつもあります。

それは例えば、配当利回りや配当性向、増配傾向、会社の業績予想修正の傾向(下方修正が多くないか)、セグメント別の業績動向、アナリストのコンセンサスと株価との乖離、株主やその比率、などといったものです。

ただ、ここで言いたいことは、全ての指標に注目するべきだといったことではありません。

大事なのは、どんな指標に注目すれば良いのかは、どういったスタンスで投資をするかによって異なってくるということです。

そして、それを知るためには、まずどんな指標があるのかを、ある程度は網羅的に知っておく必要があります。

本書は、20年以上にわたって四季報を読破し続けてきた著者によって書かれたものであり、そのための手引きとして、きっと役に立つ内容だと言えるでしょう。

 

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