ここでは、「ラッセル 1000 バリュー株指数」と「ラッセル 1000 グロース株指数」 を比較することで、米国株式市場全体の傾向を見ていきたいと思います。
Contents
1.ラッセル(Russell)1000 指数とは?
まず、「ラッセル 3000 指数」という、米国株式市場を代表する株価指数があるのですが、この指数を構成する3000銘柄で、米国株式市場全体の時価総額の約98%を占めています。
そして、この3000銘柄のうち、時価総額の上位1000銘柄を取り出して指数化したのが「ラッセル 1000 指数」、それ以外の小型株2000銘柄で構成されるのが「ラッセル 2000 指数」になります。
ちなみに、「ラッセル 1000 指数」を構成する1000銘柄が、米国株式市場全体の時価総額の約90%を占めるのに対し、「ラッセル 2000 指数」を構成する2000銘柄では、約10%に過ぎません。
2.バリュー株指数とグロース株指数
次に、これらの株価指数にはそれぞれ、バリュー株指数とグロース株指数とに分類したサブインデックスが存在します。
例えば、「ラッセル 3000 バリュー株指数」、「ラッセル 1000 グロース株指数」などといったものになります。
参考までにですが、ラッセルでは、バリュー株指数やグロース株指数に組み入れる銘柄の選定基準として、株価純資産倍率(PBR)や、先行き2年間の予想利益成長率、過去5年間の株価売上高倍率(PSR)の成長率、を用いているようです。
そして、ここで用いるのは、「ラッセル 1000 バリュー株指数」と「ラッセル 1000 グロース株指数」です。
また、以下の図は、この両指数の推移を「ラッセル 1000 指数」とともに示したものになります。(すべて1990年12月末を100として計算しています。)
この図から、長期で見た場合には、バリュー株指数がグロース株指数をアウトパフォームしている(収益率で上回っている)と言えそうです。
なお、2018年9月30日時点における、この両者の主なデータは、下記のようになっています。
3.バリュー株指数とグロース株指数の比較方法
それでは早速、バリュー株指数とグロース株指数とを比較していきたいと思うのですが、両者を比較するには、主に以下の3つの方法があります。
まずは、単純に「ラッセル 1000 バリュー株指数」を「ラッセル 1000 グロース株指数」で割る方法です。
次に、「ラッセル 1000 バリュー株指数」と「ラッセル 1000 グロース株指数」のそれぞれについて、1年リターンを求め、その差を算出する方法です。
最後に、「ラッセル 1000 バリュー株指数」と「ラッセル 1000 グロース株指数」のそれぞれについて、「ラッセル 1000 指数」に対する超過収益率を算出して比較する方法です。
ここでは、これら3つの方法について順を追って見ていくことにします。
4.バリュー株指数/グロース株指数
まず、「ラッセル 1000 バリュー株指数」を「ラッセル 1000 グロース株指数」で割った値の推移を示したのが、以下の図です。
この図から、概ね2007年以降では、グロース株指数が優位となっている様子が見て取れます。
5.バリュー株指数とグロース株指数の1年リターンの差
次に、「ラッセル 1000 バリュー株指数」と「ラッセル 1000 グロース株指数」の1年リターンの差を示したのが、下図になります。
先ほどの図と比較して、バリュー株指数とグロース株指数のどちらが優位な状況となっているかの、細かい傾向が視覚的に捉えやすくなっていると言えます。
この図からも、ここ1年半ほどでは、グロース株指数が優位となっていることが分かります。
6.ラッセル 1000 指数に対する超過収益率
最後に、「ラッセル 1000 バリュー株指数」と「ラッセル 1000 グロース株指数」のそれぞれについて、「ラッセル 1000 指数」に対する超過収益率の推移を示したのが、以下の図です。
この図から、バリュー株指数とグロース株指数の、ラッセル 1000 指数に対する超過収益率の推移は、上下でほぼ線対称となっていることが見て取れます。
また、バリュー株指数の超過収益率の推移は、初めに示した、バリュー株指数をグロース株指数で割った値の推移とよく似通っていることも分かります。
7.総括
ここでは最後に、バリュー株指数をグロース株指数で割った値の推移を、「ラッセル 1000 指数」および「米10年国債利回り」とそれぞれ比較してみます。
(なお、下図ではともに、見やすくするために、バリュー株指数をグロース株指数で割った値の方のスケール軸を反転させています。)
ですが、「ラッセル 1000 指数」の方では相関係数が約0.25、「米10年国債利回り」の方では約-0.55と、残念ながら大した相関を認めませんでした。
そのため、結論もかなり大雑把なものとなってしまうのですが、次のようなことが言えるかもしれません。
それは、「バリュー株指数/グロース株指数」や「バリュー株指数とグロース株指数の1年リターンの差」の推移からは、バリュー株指数が優位な時期と、グロース株指数が優位な時期とが、概ね交互に現れているように見えるということです。
そして、その両者ともに直近では、グロース株指数の方が優位な状況がしばらく続いていることから、今後バリュー株指数の方が優位となるような局面がやって来る可能性が高まっていると言えるのではないでしょうか。
ちなみに、日本株についても以下の記事で、バリュー株指数とグロース株指数とを比較していますので、よろしければご参照ください。