相場のデータ・指標

「米国長期金利」のデータ分析(2020.6)(日本と中国の米国債保有額・FRB保有債券残高)

ここでは、直近の「米国長期金利」について、日本と中国の米国債保有額やFRBの保有債券残高といった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

1.米国債保有額(日本・中国・総計)

まずは、日本と中国の米国債の保有額および保有率の推移について見ていきます。

日本と中国の米国債保有額・保有率の推移を示した図(2020.6)

この図から、ここ数年の中国の米国債保有額および保有率は減少傾向となっていることが分かります。

一方、日本の米国債保有額は最近になって増加傾向となっています。

そして、日本と中国の米国債保有額を合計したものと、米10年国債価格の推移を示したのが以下の図です。

日本と中国の米国債合計保有額と米10年国債価格の推移を示した図(2020.6)

この図から、日本と中国の米国債の合計保有額は、米10年国債価格と概ね相関しているように見えます。

ただ、初めに示した図からも分かるように、日本と中国を合わせた米国債の保有率というのは、4割にも満たないものとなっています。

そこで、世界各国の米国債保有額の総計についても、米10年国債価格の推移とともに示したのが以下の図になります。

米国債保有額総計と米10年国債価格の推移を示した図(2020.6)

すると、世界各国の米国債保有額の総計は減少しておらず、増加傾向にあることが分かります。

つまり、世界全体で見た場合には、米国債への需要は底堅いものがあると言えそうです。

2.FRBの保有債券残高

次に、FRB(連邦準備制度理事会)の保有債券残高について見ていきます。

FRBは2017年9月20日に、量的緩和政策により買い入れた資産を減らしていく、保有資産縮小を決定していました。

この量的緩和政策において買い入れられた資産というのは具体的には、米国債、住宅ローン担保証券(MBS)、政府機関債の3つになります。

まずはこれら3つについて、FRB保有残高の推移をそれぞれ見ていきたいと思います。

米国債のFRB保有残高の推移を示した図(2020.6)

MBSのFRB保有残高の推移を示した図(2020.6)

政府機関債のFRB保有残高の推移を示した図(2020.6)

さらに、これら3つを合計した、FRB保有債券残高の推移を示したのが以下の図になります。

FRB保有債券残高の推移を示したの図(2020.6)

この図から、2017年12月頃より、FRB保有債券残高の縮小が始まっていたことが分かります。

しかし、短期金融市場の安定化を図る目的で、2019年10月半ばより、FRBは月600億ドルのTビル(米財務省短期証券)の購入を開始していました。

さらに、FRBは2020年3月15日に、ゼロ金利政策ととともに、米国債およびMBSの購入も復活させ、6月10日には、米国債を月800億ドル、MBSを月400億ドルとの購入規模の目安を示していました。

最後に、FRB保有債券残高の推移を示したこの図の2017年1月以降を取り出して、米長期金利の推移とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸のFRB保有債券残高のスケールは反転してあります。)

FRB保有債券残高と米長期金利の推移を示した図(2020.6)

この図からも分かるように、FRBの保有債券残高と米10年債利回りの相関はほとんど認められません。

やはり長期金利は、FRBの保有などといった需給よりも、経済や景気の見通しの影響を強く受けるのだということを改めて認識させられます。

3.総括

FRBは、6月9~10日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、少なくとも2022年末までゼロ金利政策を維持することを決めていました。

また、FRBは米国債やMBSの他に、社債やCPも買い入れており、そのバランスシートは、6月24日時点で約7.1兆ドルとなっていますが、20年末には10兆ドルを超える見込みとなっています。

そして、日銀のように長期金利に誘導目標を設けるイールドカーブ・コントロール(YCC)の採用についても示唆していました。

そうなると、米長期金利が上昇していくことは、当面の間は考えづらいでしょう。

さらに米国では、いくつかの州で新型コロナウイルスの感染者が急増しており、感染拡大の第2波が懸念されています。

トランプ大統領などは、経済重視の姿勢を鮮明にしており、再び厳格なロックダウン(都市封鎖)が行われる可能性は今のところ低いと見られていますが、いずれにしても景気回復が遅れることは間違いないでしょう。

このような経済の先行きへの懸念が続くかぎりは、米長期金利が上昇していくことはやはり想定しづらいと言えるのではないでしょうか。

 

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