相場のデータ・指標

「米国株(S&P 500)」のデータ分析(H30.9)(PER・CAPEレシオ・ブルベア指数・長短金利差)

ここでは、直近の「米国株(S&P 500)」について、PER・CAPEレシオ・ブルベア指数・長短金利差といった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。

1.S&P 500とPER

まずは、S&P 500に採用されている500銘柄の平均PERとS&P 500の長期推移を見ていきます。

S&P500とPERの長期推移を示した図(H30.9)

そして、この図の1995年以降の推移だけを示したのが以下の図です。

S&P500とPERの直近の推移を示した図(H30.9)

この図から、1990年代後半以降では、ITバブル後やリーマン・ショック後のような特殊な状況を除くと、PERは概ね15倍~35倍で推移しているといえます。

そこで、同期間における、PERが15倍~35倍に相当する株価とS&P 500の推移を示してみたのが以下の図になります。

S&P500とPER別株価の推移を示した図(H30.9)

この図を見る限りでは、現在のS&P 500がそこまで割高な水準にあるようには見えません。

ただ、確かに2000年前後のITバブル前にはPERが35倍近くまで上昇する場面もありましたが、2008年のリーマン・ショック前のPERは20倍~25倍程度までの上昇に過ぎませんでした。

つまり、PERだけで割高かどうかを判断するのには限界があることが分かります。

2.S&P 500とCAPEレシオ

次に、景気循環調整後の株価収益率(PER)である、CAPEレシオ(シラーPER)とS&P 500の長期推移を見ていきます。

S&P500とCAPEレシオの長期推移を示した図(H30.9)

そして、この図の1995年以降の推移だけを示したのが以下の図です。S&P500とCAPEレシオの直近の推移を示した図(H30.9)

CAPEレシオでは、一般に25倍を超えると株価が過熱圏にあるという見方がされますが、直近では30倍を超えていることが分かります。

過去に30倍を超えたのは、1929年の世界大恐慌の前や、2000年のITバブルの時だけでした。

ちなみに、2008年のリーマン・ショック前は25倍以上では推移していましたが、30倍まではいきませんでした。

また、CAPEレシオに関しても、15倍~40倍に相当する株価とS&P 500の推移を示したのが以下の図です。

S&P500とCAPEレシオ別株価の推移を示した図(H30.9)

この図からも直近のS&P 500は、2000年のITバブル時ほどではなくても、2008年のリーマン・ショック前よりは割高な水準にあることが分かります。

また、2008年のリーマン・ショック前には、何年もの間にわたって、CAPEレシオが25倍を超えて推移していたことも見て取れます。

そういった意味では、CAPEレシオもPERと同様にこれだけで割高かどうかを判断するのには限界があり、相場転換のタイミングを計ることにも向きません。

PERやCAPEレシオはあくまで参考程度のものだといえます。

3.S&P 500とブルベア指数

続いて、代表的なブルベア指数である、Investors Intelligenceの Sentiment Index(Advisor’s Sentiment)について見ていきます。

このSentiment Indexについて分析している、Yardeni Researchのレポートから一部を抜粋したのが、以下の図です。

S&P500とブルベア指数の推移を示した図(H30.9)

この図では、Bull / Bear Ratioが3倍以上となっている期間が赤色の線で示されており、強気派が多いことを示しています。

直近では赤線が集中しており、相場の調整に注意が必要な局面といえそうです。

4.S&P 500と長短金利差(米国債利回り差)

最後に、長短金利差として、米10年国債利回りと米2年国債利回りの差(=10年国債利回り-2年国債利回り)を見ていきます。

※通常、短期金利とは期間が1年未満の金融資産や負債の金利のことをいいますが、ここでは便宜上2年国債利回りを短期金利として扱っています。

そして、米国の長短金利差とS&P 500の推移を示したのが以下の図です。(なお、見やすくするために、右軸の長短金利差のスケールは反転しています。)

S&P500と米国長短金利差の推移を示した図(H30.9)

この図からは、2001年前後のITバブル崩壊や、2008年のリーマン・ショック前に米国債利回り差が0%以下と、2年国債利回りの方が10年国債利回りよりも高い状態で推移する逆イールドと呼ばれる状態になっていることが分かります。

直近においても、米国債利回り差が0%に近づきつつあり、注意が必要だといえそうです。

5.総括

ここまで見てきたように、今後の米国株を占う上では、米国の長短金利差の推移に注目をしておく必要があると言えそうです。

ここで、米長期金利(10年国債利回り)は直近で、3%超にまで上昇してきています。

一方、2年国債利回りは政策金利の影響を強く受けますが、FRB(米連邦準備理事会)は、今月9月25・26日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、現在の1.75~2.00%から政策金利の利上げを行うと見られています。

また、現状で景気を冷やさず過熱もさせない中立的な政策金利の水準は2.9%とされているため、このままいくと今回を含めてあと4~5回は利上げが行われることになります。

ただ、利上げによって景気の過熱が抑えられると、長期金利の上昇も抑えられることになります。

長期金利というのは、経済・景気の見通しや将来の物価変動予測の影響を受けるためです。

ですから、今後のFRBの金融政策や長期金利の行方には注意を払っておく必要があります。

とはいえ、ITバブルやリーマン・ショックの際には、逆イールド(短期金利が長期金利を上回った状態)となってから株価の大幅な調整が起こるまでに、1~2年間のタイムラグがありました。

もちろん今回もそうなるとの保証はどこにもありませんが、そう考えるとまだ当面(1~2年程度)は、多少の調整はあったとしても、米国株は堅調に推移する展開が予想されるのではないでしょうか。

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