ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。
そうした状況下では、平均PERが指標として機能していませんでしたが、直近ではそうした状況も落ち着いてきており、日経平均株価はPER 14倍程度での推移となっています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
平均PBRは10月1日大引けの時点で、1.28倍での推移となっています。
なお、10月1日大引けの時点で、平均PBR 1.2倍相当が26973円、平均PBR 1.3倍相当が29221円となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図からも分かるように、2020年10月頃より続いていた、海外投資家の買い越し傾向は足元で一服しており、2021年4月以降はほぼ横ばいとなっています。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から、日銀のETF買い入れは、2021年4月より、大きくペースダウンしていることが分かります。
ちなみに、4月以降における日銀のETF買い入れは、4月21日の701億円、6月21日の701億円、9月29日の701億円、10月1日の701億円の4回だけでした。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。
3.NT倍率
また、NT倍率も見てみることにします。
この図からは直近で、日経平均株価とNT倍率との乖離が拡大していることが見て取れます。
4.信用評価損益率
続いて、信用評価損益率を見ていきます。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
信用評価損益率は、9月24日時点では-7.7%となっており、決して底値圏といえるような水準ではありませんが、この後のデータでどこまで低下しているかを確認したいところです。
5.騰落レシオ
最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
後講釈にはなりますが、騰落レシオは9月28日には、145.7にまで上昇しており、短期的な相場の過熱感を示していたことになります。
6.総括
日経平均株価は、9月中旬より調整色を強め、10月1日には大幅下落となっていました。
この背景には、中国大手不動産の信用不安問題や、エネルギー価格の高騰などインフレ懸念とそれに伴う米国の早期利上げ観測の台頭、米債務上限問題といったことがあるかと思われます。
当面は、こうした問題がくすぶり続けると思われ、株式市場にとっては逆風となるでしょう。
また、9月29日は岸田氏が新総裁に選ばれましたが、同氏は財政健全化や、格差是正として富裕層に対する金融所得課税の強化を打ち出しており、これらは海外投資家にとって日本株を嫌気する要因となりそうです。
そして、岸田首相は衆院選を19日公示、31日投開票と短期決戦で実施することを決めており、それまでは海外投資家も日本株に対しては様子見となる可能性が高く、短期的には株価もその結果次第となるのではないでしょうか。
ただ、直近の業績や業績見通しの良い日本企業は多く、年内や年度末までには再び株価上昇局面が見られるのではないかと考えています。
とはいえ、中国経済の先行きが不透明なことも確かであり、中国依存度の高い銘柄は避けた方が無難かもしれません。