相場のデータ・指標

【2022年6月】「日経平均株価」のデータ分析(PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均、信用評価損益率、騰落レシオ)

ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

1.PER・PBR

まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。

この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。

22年6月までの日経平均株価とPER13~17倍相当株価の推移を示した図

この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。

そうした状況下では、平均PERが指標として機能していませんでしたが、直近ではそうした状況も落ち着いてきており、日経平均株価はPER 12倍台後半での推移となっています。

次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。

PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

22年6月までの日経平均株価とPBR1~1.5倍相当株価の推移を示した図

平均PBRは6月24日大引けの時点で、1.15倍となっています。

なお、6月24日大引けの時点で、平均PBR 1.1倍相当が25340円、平均PBR 1.2倍相当が27644円となっています。

2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ

次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。

海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。

22年6月までの海外投資家の売買動向と日経平均株価の推移を示した図

この図から、ここ最近では海外投資家の売買動向が、やや売り越し傾向となっていることが見て取れます。

また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。

ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。

この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。

22年6月までの日銀ETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示した図

この図から、日銀のETF買い入れは、2021年4月より、大きくペースダウンしていることが分かります。

さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

22年6月までの日銀ETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額との合計と日経平均株価の推移を示した図

この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。

ちなみに、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価は次のようになっています。

22年6月までのドル建て日経平均株価の推移を示した図

ドル建て日経平均株価では、長らく上値抵抗線となっていた225ドルをあっさりと下に抜け、直近では200ドルをも下回っての推移となっています。

3.信用評価損益率

続いて、信用評価損益率を見ていきます。

以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。

22年6月までの信用評価損益率と日経平均株価の推移を示した図

一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。

信用評価損益率は、3月11日に底値圏の目安となる-15.7%となり、直近の6月24日時点では、-12.2%となっています。

4.騰落レシオ

最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。

騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

22年6月までの騰落レシオと日経平均株価の推移を示した図

騰落レシオは、6月24日時点で97.6と、天井圏と底値圏のどちらとも言えないような水準となっています。

5.総括

日経平均株価は、3月末と6月初めに28000円超の戻り高値を付けた後、直近では26000円台での推移となっています。

直近の急落の背景としては、14~15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)が0.75%の利上げを決定したことや、次回7月のFOMCでも0.75%利上げの可能性が高まっていることが挙げられます。

また、今回のFOMCでは、今年末の政策金利の誘導目標の中央値が前回(3ヵ月前)の1.875%から一気に3.375%にまで上昇していた一方で、中立金利の推計は2.5%程度のままとなっています。

これはつまり、インフレ抑制のためには、景気後退も辞さない構えを示しているということであり、市場でも景気後退懸念が高まっていると言えます。

ウクライナ紛争や米中対立、中国上海のロックダウン(都市封鎖)などによる供給制約は金融政策によって解消できるものではなく、FRBが利上げを続けていくようであれば、オーバーキル(金融引き締めによる景気後退)となってしまう可能性が高いように思われます。

そして、実際に景気後退局面となった際に、FRBが利上げを継続していくのかどうかが、市場の先行きを左右することになりそうです。

とはいえ、日本株は円安の影響などもあって、堅調な業績を示す企業が多く、総じて割安であることから、株価が一段安となるようであれば、そこは日本株の買い場となるのではないでしょうか。

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