読書録・書評

【読書録・書評】『株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書』

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書では、資産運用に精通した公認会計士である足立 武志氏によって、株価チャートを用いた売買方法について書かれています。

なお、本書の章立ては、次のようになっています。

  • はじめに
  • 序章:なぜ「株価チャート」が重要なのか?
  • 第1章:株価チャートのしくみを知ろう
  • 第2章:「買いタイミング」を見極める!
  • 第3章:「売りタイミング」はこれ!
  • 第4章:もっと知りたい! 株価トレンド分析
  • 第5章:決算、増資、IPO‥特殊なケースの対処法
  • 第6章:人気銘柄診断・そのとき筆者ならこう動く!
  • 第7章:クイズで復習 この問いに答えられるか⁉
  • おわりに

2.株価トレンド分析

第1章では、株価のトレンドを判別する方法について触れられています。

株価のトレンドを、「株価と移動平均線との位置関係」と「移動平均線の向き」により、次の4つのパターンに分類しているのです。

  1. 株価が移動平均線の上+移動平均線上向き:上昇トレンド
  2. 株価が移動平均線の下+移動平均線下向き:下降トレンド
  3. 株価が移動平均線の上+移動平均線下向き:下降トレンドだが上昇トレンドへ転換の可能性も
  4. 株価が移動平均線の下+移動平均線上向き:上昇トレンドだが下降トレンドへ転換の可能性も

そして、売買の判断について一言でいえば、「上昇トレンドであれば新規買い・持ち株は継続保有」、「下降トレンドであれば持ち株は売却・新規買いは見送り」だと書かれています。

3.買いタイミング

第2章は、「買い」についての内容となっており、買いのタイミングとして、まずは以下の3つが挙げられています。

  1. 上昇トレンドへの転換直後
  2. 「押し目」を付けた後の反発局面
  3. 直近高値を超えた直後

筆者はこのうち、1.を最も重視しており、特に、株価が長期間にわたり下げ続けた後でこのタイミングが現れれば、歴史的な底値圏で買うこともできると言います。

また、「上昇トレンド中であればいつでも買ってよいが、できるだけ移動平均線からのかい離が大きくないタイミングを選ぶ」ともあります。

そして、株価トレンド分析では、上昇トレンドに転じない限り買わないことを原則としていますが、株価がまだ下降トレンドにあるうちに新規買いする方法についても、以下のように言及されています。

  • 底値圏での買い
    • 底値と思われる株価から数%程度反発した時点
    • 二番底からの反発局面
    • 株価が移動平均線を下回る状態での直近高値超え
  • 急落時のリバウンドを狙う
    • 各種テクニカル指標をもとに底打ちのタイミングを見極める
      • 例えば「日経平均株価の25日移動平均線からのマイナスかい離10%超」「個別銘柄の25日移動平均線からのマイナスかい離30%超」「25日騰落レシオの60%割れ」など
    • 急落する株価が底打ちした可能性の高い株価チャートの形となった時点
      • ローソク足1本の形:「大陽線」「長い下ヒゲ」など
      • ローソク足2本の形:「切り込み線」「たすき線」「つつみ線」など
      • ローソク足3本の形:「大陰線+長い下ヒゲ+大陽線」「切り込み線+大陽線」など
    • 25日移動平均線の代わりに5日移動平均線を使った株価トレンド分析に従う
      • 5日移動平均線超えは、株価の底打ち後、それほど株価が大きく上昇しないうちに出現してくれる

ただ、急落時の買いは、株価のトレンドに逆らったリスクの高い投資行動であるため、損切り価格や損切りの条件を設定して確実に実行することが必要になるとも述べられています。

さらに、その他の買いタイミングとして、「過去の節目超えを狙う」方法についても触れられています。

これは、週足チャートや月足チャートにおける過去の高値を、株価が突破して上昇した場合に買うというものです。

また、この場合もできれば移動平均線とのかい離が小さいときに買うのが、損切りとなった場合の損失を抑えるという観点からは好ましいと書かれています。

4.売りタイミング

第3章は、「売り」についての内容となっており、売りのタイミングとしては、以下のようなものが挙げられています。

  • 25日移動平均線割れ
  • 直近安値割れ
  • 短期間で急騰したとき
    • 上昇トレンドの途中であっても、株価が買値の2倍、3倍になった時点で保有株の一部を売却する
    • 株価が天井をつける際に特徴的なローソク足の形となったら売却する
      • ローソク足1本の形:「大陰線」「長い上ヒゲ」など
      • ローソク足2本の形:「かぶせ線」「たすき線」「つつみ線」など
      • ローソク足3本の形:「大陽線+長い上ヒゲ+大陰線」「かぶせ線+大陰線」など
    • 日足チャートであれば25日移動平均線の代わりに5日移動平均線を使って判断する
      • より期間の短い移動平均線を使うことで、より高い株価位置で下降トレンドへの転換ポイントが現れるようにする
  • 「吹き値」への対処法
    • 売買高が異様に膨らんでしまうと需給面でのマイナス要因となるため、資金効率の面を考えて売却し、他の有望な銘柄があればそちらに乗り換えるという戦略も考えられる

続いて、日足チャートを用いる場合の「損切り」のタイミングとしては、次の4つが挙げられています。

  1. 25日移動平均線割れで損切り
  2. 直近安値割れで損切り
  3. 5日移動平均線割れで損切り
  4. 買値からの下落率を基準とした損切り
    • 1~3のいずれの方法でも損失率を10%以下に抑えられない場合は、仕方ないので買い値から一定割合(例えば10%)値下がりした価格を損切り価格に設定する

また、株価が直近安値や移動平均線から大きく離れている状態での買いを極力避け、できるだけ1.の方法のみで損切りができるタイミングでの買いを実行するのが理想だと述べられています。

なお、第3章では「空売り」についても言及されていますが、ここでは割愛させていただきます。

5.株価トレンド分析の詳細

第4章では、株価トレンド分析について、より詳細に説明されています。

まず、上昇トレンドへの転換は、ローソク足が陽線で、その全部、もしくは大部分が移動平均線を上回った時点で判断し、移動平均線から最低でも1%程度、できれば2~3%程度の乖離が必要と言います。

また、株価には、上昇するスピードより下落するスピードの方がかなり早いという特徴があります。

そのため、下降トレンドへの転換の場合には、移動平均線がまだ上向きでも、陰線のローソク足が明確に移動平均線を割り込んだ局面で売却するのが、安全だと述べられています。

そして、上昇トレンド転換を確認後、翌日に買うのが基本ですが、株価が上昇トレンド転換直後に急騰してしまうことへの対処法として、次のようなものが挙げられています。

  • 場中の株価を確認し、上昇トレンド転換とみなして買ってしまう
    • 市場全体が明らかな上昇トレンドにあるときの個別銘柄の上昇トレンド転換や、場中に判断するとよい結果が出ることが多いように思われる
    • どうしても欲しい銘柄が前場引け時点で上昇トレンドへの転換が濃厚なら、後場の寄り付きで買ってしまう
  • あらかじめ逆指値注文を入れておく
    • 直近高値超えや、移動平均線から5~10%上の価格帯で、逆指値注文の買い注文を入れておく(5~10%とするのは、損切りの際の損失率が10%程度に収まるようにするため)
  • 上昇トレンド転換が確認できた翌日に飛び乗ってしまう
  • 買うのをあきらめる

他にも、以下のようなことに言及されています。

  • 「明確なトレンドがない」ときの対処法:できるだけ損失の発生を抑える方法の1つとして、株価トレンド分析に「高値超え」を組み合わせる方法が考えられる
  • 株価トレンド分析にプラスして勝率を高める
    • ファンダメンタル分析:事前に業績や成長性といったファンダメンタルがよい銘柄に投資候補を絞っておく
    • 売買高
      • 過去の売買高や株価チャートをチェックして、「突発的な高値+売買高急増」が確認できる銘柄は、そうでない銘柄よりも株価が上昇しにくいと判断できる
      • 過去の突発的な高値を超えて上昇する場合は、強い買い需要が生じていることを意味するため、新規買いや追加買いも有効
    • 信用取引残高
      • 信用買いは将来の売り需要、空売りは将来の買い需要と考えられている
      • 信用売り残高の方が多い場合は「売り長」と呼ばれ、信用売りをしている投資家の損失覚悟の買戻し(「踏み上げ」)による株価上昇が大いに期待できる
      • 一般に信用倍率が1.5倍より小さければ信用取引の需給は良好(将来の上昇が見込める)と判断できる(売り長の場合は信用倍率が1倍未満になる)

なお、第5章では、決算発表や増資、IPOなどの際の株価動向について一般的な説明がなされており、第6章および第7章は、それまでの内容のおさらいと言えます。

6.総括

本書は、足立氏による別の著作である『株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書 改訂版』の第5章を、より詳しく書いたような内容となっています。(リンク先はレビュー記事になります。)

ただ、基本的なことはその第5章にも書かれており、そちらを既に読まれたことのある方にとっては、あえて本書を読む必要性というのは低いように感じました。

そして本書の第4章では、少しだけ著者のポジション管理方法についても触れられています。

例えば、投資候補として50銘柄をピックアップした場合、1銘柄当たりの投資金額は、いずれも総投資金額の2%前後とし、上昇トレンドの銘柄のみに投資すると言います。

そうすることで、マーケット全体が強い上昇トレンドのときは株式への投資割合が高くなり、逆にマーケットが弱含むとキャッシュの割合が高まることになるというわけです。

とはいえ、株式には1単元(売買単位)が10万円未満のものもあれば、100万円を大きく超えるものもあります。

そのため、一般に資金的な制約の大きい個人投資家にとっては、この手法を実践しようとするならば、現実的には端株(単元未満株)を利用することになるでしょう。

端株での取引は、通常の取引よりも手数料が高く、「日足チャート+25日移動平均線」を用いて、多くの銘柄で新規買いや損切りなどを繰り返すことを考えると、手数料の負担が大きくなってきそうです。

なお第5章には、「筆者は日々株価チャートをウォッチしている銘柄が数百銘柄あります」との記載もあります。

この場合、仮に200銘柄だとすると、1銘柄当たりの投資金額は、総投資金額の0.5%にしているということなのでしょうか。

また、同時に保有する何十もの銘柄の株価トレンドを日々チェックするというのは意外と大変なように思われます。

特に、市場の急落で多くの銘柄を一斉に損切りしなければならないような事態では、保有する銘柄数の多さによって足を引っ張られそうです。

あらかじめ逆指値注文を出しておくにしても、緊急時にはそれがうまく機能するとは限りません。

さらに、3700社超(2019年末時点)ある上場企業のうち、ウォッチしている数百銘柄の中からしか投資しないというのは、窮屈な感じもします。

ウォッチリストは適宜入れ替えが行われるのでしょうが、数百銘柄ものリストを業績などの基準で入れ替えるというのは、かなりの手間です。

であれば、定期的に(例えば週1回など)全銘柄の中から、スクリーニングによって投資候補を選んでいく方が効率は良いでしょう。

そして、保有銘柄数が多いと、一部の優良銘柄への投資額が小さくなってしまうため、そういった銘柄への増し玉も考える必要がありそうですが、特にその点についての言及はありませんでした。

著者の手法は、簡易的なファンダメンタル分析と株価トレンド分析によって、大きめの網を張って投資し、勝率は低いものの、その中でうまくいった銘柄を保有し続けるというものだと思われます。

ただ、上記のような理由などから、とても気軽に実践できるようなものとは言えず、特に初心者の方にとっては弊害の方が大きくなりかねない手法だと感じました。

 

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