相場のデータ・指標

レイ・ダリオ氏率いるブリッジウォーター・アソシエイツの最新ポートフォリオ(2021年3月末時点)

1.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務

今回は、ヘッジファンド界の帝王とも呼ばれるレイ・ダリオ氏が率いる、世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの2021年3月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。

ちなみに、レイ・ダリオ氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。

これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。

この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。

ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。

また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。

さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。

つまり、この5月中旬には、著名投資家たちの3月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。

2.ブリッジウォーター・アソシエイツのポートフォリオ

それでは早速、ブリッジウォーター・アソシエイツの2021年3月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位28銘柄を示しています。)

【21年3月末のポートフォリオ】

ブリッジウォーター・アソシエイツの21年3月末時点でのポートフォリオ

また、この四半期前の2020年12月末のポートフォリオを示したのが下図になります。

【20年12月末のポートフォリオ】

ブリッジウォーター・アソシエイツの20年12月末時点でのポートフォリオ

この両者を比較してみると、違いが分かりにくいのですが、GLD(SPDR Gold Shares ETF)およびIAU(iShares Gold Trust)、つまり金ETFの比率が低下していることが目に付きます。

具体的には、両ETFのポジションが、前四半期と比較して、ともに40%強の減少となっていました。

そこで、直近のGLDの推移を示した以下の図を見てみます。

金ETFであるGLDの直近の価格推移を示した図

この図から、金価格は、20年12月末から21年3月末にかけて、下落傾向にあったことが分かります。

そのため、リバランスのセオリーに反して、金のポジションを縮小したということは、金価格の先行きに対して弱気の見方をしているということかもしれません。

3.レイ・ダリオの主な新規買い銘柄と総括

ここからは、もう少し踏み込んで、20年12月末から21年3月末までの間に、ブリッジウォーター・アソシエイツが新規買いした主な銘柄について見ていくことにします。

以下の表は、新規買いが行われた銘柄のうち、保有ポジションの高い順に20銘柄を取り出したものです。

ティッカー 銘柄名 組み入れ比率
LOW Lowe’s Companies Inc 0.49
HD The Home Depot Inc 0.37
JCI Johnson Controls International PLC 0.33
DD DuPont de Nemours Inc 0.32
LULU Lululemon Athletica Inc 0.32
SHW Sherwin-Williams Co 0.3
ECL Ecolab Inc 0.22
TSLA Tesla Inc 0.22
KMX CarMax Inc 0.19
F Ford Motor Co 0.17
GM General Motors Co 0.17
ALB Albemarle Corp 0.14
IFF International Flavors & Fragrances Inc 0.14
MAS Masco Corp 0.14
CE Celanese Corp 0.13
PHM PulteGroup Inc 0.13
CARR Carrier Global Corp 0.12
FBHS Fortune Brands Home & Security Inc 0.12
MHK Mohawk Industries Inc 0.12
WHR Whirlpool Corp 0.12

そして、上記銘柄の過去十数年の通期および四半期決算をそれぞれ閲覧して、大まかにまとめてみました。

  • JCIやDD、F、CE、CARRは、通期業績では低迷しているのですが、直近四半期での業績回復から買われたものと思われます。
  • ECLに関しては、20年の通期業績や、直近四半期も冴えない業績となっており、なぜ買われたのかはよく分かりませんでした。
  • GMの株価には割高感はないものの、業績もそれなりと言えます。
  • PHM(米国最大の住宅メーカー)は業績好調、WHR(大型家電のグローバル企業)は堅調な業績で、両者ともに割高感もありません。ただ、両者とも魅力的な業種業界かと言われると微妙なところです。
  • その他の銘柄は業績好調、あるいは概ね堅調な業績となっていますが、如何せんバリュエーションが高く、手を出しづらいものばかりです。特にTSLA(テスラ)は押し目買いと思われますが、今更テスラを買うのはどうなのかと思わずにはいられません。

4.ポートフォリオの特徴

最後にですが、ブリッジウォーター・アソシエイツは、グローバル・マクロ戦略ということもあり、個別株への集中投資というよりは、各種ETFへの投資が多くなっています。

そのETFに関して、組み入れ比率が上位のものを見ていくと、米国関連や新興国への投資が目立ち、米国以外の先進国への投資が手薄であるように思われます。

とはいえ、2021年3月末時点での保有銘柄数は652銘柄と非常に多くなっており、全銘柄を集計してみないと、正確な全体像は見えてこないと言えそうです。

そういった意味では、組み入れ比率が上位のETFだけを見て、それを真似するというやり方は避けた方が良いかもしれません。

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