1.驚異的な人工知能(AI)の進歩
人工知能(AI)の進歩には目覚ましいものがあります。
既に、将棋や囲碁では人間を圧倒する強さとなっていますが、AIは自然言語処理に関しても、著しい進歩を遂げているのです。
特に、OpenAIが2020年に公開したGTP-3は、言語で表現できるあらゆる質問に答えることができると言います。
それは例えば、文章を要約したり、指定したトピックの記事を書いたり、専門的な内容を分かりやすく変換したりといったものになります。
2.AIによるオルタナティブ・データ
そして、AIの技術は当然、投資にも応用されることになり、実際に米国を中心として、AIを活用したヘッジファンドというのは数多く存在します。
また、民間専門会社が扱う「オルタナティブ(代替)・データ」を利用する資産運用会社や金融機関も増えていると言います。
これは、主要経済ニュースの文字情報や、商品のネット上の口コミをAIの自然言語処理で分析したり、携帯の位置情報データをAIで解析したりすることによって、投資判断の材料とするものです。
ヘッジファンドでは、既に過半がそうしたオルタナティブ・データを利用しているとの調査もありますが、問題はそれを利用するための料金です。
少なくとも数十万円はかかり、人工衛星を絡めたようなものでは億単位にもなるとのことです。
そうなると、資金力のあるヘッジファンドや金融機関などのような機関投資家が、運用で優位に立つことは間違いないでしょう。
3.AIやオルタナティブ・データに対抗するために
では、私たち個人投資家は、どうやってAIに対抗すれば良いのでしょうか。
これは非常に難しい問いであり、長い時間をかけて自分なりの答えを見つけていく必要がありますが、とりあえずざっと思いつくところでは、以下のようなものが挙げられるかと思います。
- ネット上にはない情報で勝負する。
- AIと競合しない分野や戦略を選ぶ。
- 長期的な視点、将来の展望を重視する。
まず、AIがニュース情報を解析して企業業績の方向性を探ることから、ニュース情報を基にした個別株式の売買というのは行いづらくなりそうです。
となると、ニュース情報はどちらかというと長期の展望を描くためのものといった利用の仕方が望ましいでしょう。
これは、AIによるデータ解析は、あくまでも現時点でのものであり、近視眼的な投資材料であると思われるためです。
また、店舗やオフィス、工場、道路、駐車場などのように、携帯・衛星データで稼働状況が丸裸にされてしまうような業種では、AIが有利となりそうです。
さらには、ECサイトも、AIでアクセス解析することによって投資材料となるでしょう。
つまり、ほとんどの業種がAIによる解析対象となってしまうということです。
そのため、あとはネット上にない情報、またはあってもほとんど取り上げられていないような情報だったり、多くの人が読まなそうな書籍などを参考にするしかないのかもしれません。
これは、もちろん情報だけでなく、投資戦略についても言えることです。
そして、全くのゼロから新しいものを生み出すのは困難であるため、既存のものを組み合わせることで、投資戦略や自身のビジョンなどをブラッシュアップし続けていく必要があるでしょう。
そうしなければ、個人投資家はいずれ淘汰されてしまう可能性すらあるのかもしれません。