投資の基礎知識・理論・心理

東証の流通時価総額と浮動株・固定株、会社四季報の浮動株・特定株とは?

1.流通株式と流通時価総額

前回の記事(東京証券取引所の市場改革(市場再編))では、2022年4月1日を目途に実施される、東京証券取引所の市場改革(市場再編)について書きました。

その中で、再編後の最上位市場に当たるプライム市場の上場基準として、「流通時価総額100億円以上」というものがありました。

今回は、この「流通時価総額」について書いていきたいと思います。

まず、流通時価総額は次のような計算式で算出されます。

流通時価総額=流通株式数 × 株価

この式にある、流通株式数というのは、大株主などの保有分を除いた、投資家が市場で自由に売買できる株式数のことを指します。

より具体的に言うと、流通株式数は、上場株式数(≒発行済株式数)から、以下の株式数を差し引いたものです。

  1. 上場株式数の10%以上を所有するものが所有する株式数
  2. 役員所有株式数
  3. 自己株式数

ただし、1.の中でも投信・年金や信用取引などの株式は、流通株式として認められるとのことです。

2.東証の浮動株と固定株(特定株)

次に、この流通株式と似た用語に「浮動株」があります。

浮動株というのは、大株主などが安定的に保有する株式を除いた、市場で流通する可能性の高い株式のことです。

この定義だけを見ると、流通株式とほとんど同じ内容であり、違いが分かりません。

そこでより詳しく見ていきますが、浮動株数は、発行済株式数から、固定株数を差し引くことで求められます。

浮動株に関しては、発行済株式数に対する浮動株の割合を表した「浮動株比率」という指標がよく用いられますが、これも「1-固定株比率」によって算出されるのです。

浮動株数あるいは浮動株比率を求めるのに必要な「固定株」というのは、特定株や少数特定者持株とも呼ばれ、特定の大株主が保有していて市場に出回りにくい株式のことを言います。

そして、固定株に該当する株式というのは、具体的には以下のようなものです。

  1. 大株主上位10名の保有株
  2. 役員等の保有株
  3. 自己株式等
  4. その他東証が適当とみなす事例(長期的又は固定的所有とみられる株式等)

ただし、1.の中でも、証券金融会社、決済機関などの保有株は原則として浮動株とみなされ、信託銀行や保険会社などの保有株は浮動株とみなされる可能性があるとのことです。

ここで、この固定株の保有者とみなされる大株主と、前述の流通株式から除外される大株主とを比較してみます。

細かい点を除くと、両者の1.の基準、つまり、「大株主上位10名」とするか、「上場株式数の10%以上を所有するもの」とするかが大きく違う点になります。

私見ですが、後者の「上場株式数の10%以上」という大株主はかなり限られ、大株主のせいぜい上位1~3位くらいまでではないでしょうか。

そうなると浮動株と流通株式とでは大きな違いが生じてしまうように思われますが、おそらくそこまでの違いはないのかもしれません。

というのも、「大株主上位10名」には役員が含まれていることが多かったり、流通株式には投信や年金などの株式も含まれるためです。

ただ、いずれにしても、銘柄ごとに浮動株や流通株式などを自分で求めるというのは、非常に面倒であったり困難であったりします。

3.会社四季報の浮動株と特定株(固定株)

そこで、浮動株や特定株(固定株)に関しては、東洋経済新報社から四半期ごとに発行される「会社四季報」で確認するのが便利ですし、現実的です。

ただ、そこに載せられている浮動株や特定株の定義は、前述したものとはやや異なりますので、最後にその点だけ触れておくことにします。

四季報では、銘柄ごとに浮動株比率と特定株比率という形で記載されています。

まず、浮動株比率については、1単元以上50単元未満の株主が保有する持株の合計が発行済株式数に占める比率と定義されています。

現在、上場企業は全て100株単元となっていますので、保有株が100株以上5000株未満の株主が保有する株式の合計が浮動株数になるということです。

次に、特定株の大株主に関しては、以下のように定義されています。

  • 上位10名までの大株主
  • 役員(役員持株会も含む)
  • 自己株式

なお、上位の大株主に、日本証券決済金融や、日本証券決済、従業員持株会などがある場合も、特定株にそのまま算入しているとのことです。

これらの定義からも分かるように、四季報における定義では、浮動株比率と特定株比率を足し合わせても100%とはならず、100%未満となります。

100%に満たない部分は、50単元(5000株)以上を保有し、かつ特定株に該当しない株主の保有する総株式数の比率というわけです。

以上、ややこしい話が続きましたが、実務上は最後の四季報の定義だけ頭に入れておけば十分だと言えるでしょう。

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