1.インバース型ETFとレバレッジ型ETFの注意事項
SBI証券が毎週公表している、NISA口座における「国内株式の買付金額ランキング」というものがあります。
それによると、11/2~11/6までの週で、「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(1357)」が一躍首位の座に就いたとのことです。
まず前提知識として、詳しい説明は省きますが、「1357」のようなインバース型ETF、およびレバレッジ型がETFは長期保有には向かず、あくまで短期取引向けの商品と言えます。
レバレッジ型・インバース型のETFは、その指数算出の仕組み上、明確なトレンドのない揉み合い相場では緩やかにその価額が下落していってしまうからです。
そして、NISA口座では、利益に課税されないというのが最大のメリットであり、別に長期保有目的ではなく、短期のキャピタルゲイン狙いで利用すること自体は構いません。
ただ、NISA口座では、損失が出てしまった場合に、損益通算や損失の繰り越しができないというデメリットもあります。
そういったことを考えると、本来はNISA口座でレバレッジ型・インバース型ETFのような性質の商品を購入すべきではないのです。
ですから、上記のランキングからは、目先の利益に目を奪われて、損失の可能性を軽視してしまう個人投資家の不合理さというのが垣間見えます。
2.リスク選好度の高い個人投資家
ちなみに、上記の「1357」と同じ管理会社である、野村アセットマネジメントの「NEXT FUNDS 日経平均インバース・インデックス連動型上場投信(1571)」も見てみます。
この「1571」は、「1357」のようなダブルインバース型ではなく、インバース型となります。
ここで、両者の本日11/11の売買代金を比べてみると、ダブルインバースが約378億円と、インバースの約14.7億円よりもずっと大きなものとなっているのです。
ここからも、個人投資家のリスク選好度の高さを窺い知ることができます。
さらに、「1357(ダブルインバース型)」のチャート等を見ていきます。
この図からは、直近の株価上昇に伴う「1357」の下げで、出来高が増加していることが見て取れます。
また、この図にはありませんが、11/6時点の信用買残は前週比3500万株増の1.1億株で、これは代金にすると664億円であり、信用売残の20倍以上にもなっています。
つまりこれは、信用取引まで利用して「1357」を買い増している投資家が多いことを示していると考えられます。
3.レバレッジ型ETFの信用売りと逆日歩
続いて、レバレッジ型のETFについても見ていきます。
日経平均株価のレバレッジ型ETFもいくつかあるのですが、売買代金で見ると、「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(1570)」が圧倒的な大きさとなっています。
そこで、この銘柄についてのみ見ていくことにします。
なお、株価指数の下落に賭ける場合、インバース型ETFを買うよりは、レバレッジ型ETFを信用売り(空売り)する方が、やや手間は掛かりますが、「一般に」有利な戦略となります。
上述したように、レバレッジ型・インバース型ETFは、揉み合い相場では緩やかに下落していく仕組みとなっているためです。
「一般に」と書いたのは、必ずしもその限りではないためで、これに関係してくるのが「逆日歩(ぎゃくひぶ)」というものになります。
「逆日歩」というのは、信用売りの建玉数が増大し、貸し出せる株(この場合はETF)が品薄となったときに掛かってくる品貸料のことです。
この逆日歩はいつ発生し、いくらになるかも事前には予想できないものなのですが、11/6には「1570」の逆日歩が、1日当たり150円(年間で240%に相当)にまで上昇したと報じられていました。
4.「逆日歩に売りなし」と「逆日歩に買いなし」
ここで、「1570(レバレッジ型)」のチャート等を見ていきたいと思います。
この図からも、直近の株価上昇に伴う「1570」の上げで、出来高が増加していることが分かります。
また、11/6時点での信用残高は、信用買残が前週比276万株減の143万株(代金にして350億円)、信用売残が前週比77万株増の229万株(代金にして561億円)となっています。
つまり、信用買残が大きく減少し、信用売残の方が大きくなったということで、「1570」を売り増している個人投資家が少なくないことを示しているのです。
そして、11/6に高い逆日歩が発生したと書きましたが、相場には「逆日歩に売りなし」という格言があります。
これは逆日歩が発生した場合、売り方が損失覚悟で買い戻すことにより、目先は踏み上げ相場となって上昇することが多いためで、11/6以降の値動きを見ると、実際にその通りとなっています。
一方、「逆日歩に買いなし」という格言もあり、いったん株不足が解消されると、売り圧力が強まり、株価が急落することもあるため、下手に手を出さない方が良いということもあります。
5.総括
以上のことから、日経平均株価は目下のところ堅調な動きとなっていますが、この先どこかである程度の調整は避けられないでしょう。
なお、9日にはファイザーなどが、新型コロナの予防ワクチンの有効性が9割に達したと発表したこともあって、これまで出遅れていた航空・鉄道・ホテル株などが上昇していました。
ただ、コロナウイルスのようなRNAウイルスは変異も多く、有効な予防ワクチンが本当に作れるのかは疑わしいところもあり、過信は禁物です。
ですから、そういった出遅れ株に手を出すのはまだ早いでしょう。
当面は、バリュー株の苦戦が続き、一部のグロース株はかなり割高となっていることから、割安成長株に賭けるのが有力な選択肢ではないかと考えています。
また例年通りであれば、年末くらいまでのこの時期は強い値動きを期待できることが多くなっています。
特に今年は不確定要素が多く、慎重姿勢となっている個人投資家、機関投資家も多いことから、多少下げても押し目買いが入り、少なくとも年末くらいまでは底堅い値動きになると思われます。
一部を利益確定しつつも、ある程度のポジションを維持し続け、直近決算の好調だった銘柄を組み込むことが、この先数ヵ月のパフォーマンスに大きく貢献してくれるはずです。
最後にですが、よほどの熟練者でもない限り、そもそも信用取引自体を行うべきではなく、行うにしても逆日歩が発生するような銘柄には関わらないのが賢明です。
さらに言うと、君子危うきに近寄らずで、そもそもインバース型・レバレッジ型ETFのような商品も避けた方が無難でしょう。
レバレッジを効かせた取引というのは、どこかで痛い目を見てしまうことが多いものなのです。