読書録・書評

【読書録・書評】『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.本書の概要

まずは、本書の概要からです。

本書では、230億円を稼いだという、カリスマ投資家(主に株式のデイトレード)のcis氏によって、その投資哲学が書かれています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1章 本能に克てねば投資に勝てない
  • 第2章 相場は仮説を生み出した人が勝つ
  • 第3章 勝つための一歩は場と自分を冷静に見ること
  • 第4章 職業・トレード職人
  • 第5章 投資に必要なスキルはゲームで磨いた
  • 第6章 億万長者になれたのは2ちゃんねるのおかげ
  • 第7章 これから株を始めるなら
  • 付記 ギャンブルを制すものは株を制す

2.市場の潮目に沿う

本書は、投資哲学と自叙伝のような内容となっていますが、投資哲学については、主に第1章で触れられています。

著者は、基本は「順張り」で、「上がり続けるものは上がり、下がり続けるものは下がる」と言います。

つまり、マーケットの潮目に沿って行動するのがいちばん勝つ可能性が高い、ということです。

そのため、「押し目買い」は、下がったところで買おうとするわけだから、逆張りの一種であり、やってはいけない買い方のひとつだとも述べています。

そもそも、「少し下がったところで買う」とか「割安なタイミングで買いたい」とか考えるのは、発想として間違っていると言うのです。

3.目先の「利確」に走らない

また、重要なのは勝率ではなく、トータルの損益であり、そう考えられるかどうかが株で勝つための鍵となると書かれています。

せっかく上がっている株なのに売ってしまい、今日の利益を確定することで、明日や明後日の勝利を捨ててしまうことになるということです。

さらに著者の場合、銘柄それぞれの勝敗を考えると、利益になる取引は3割くらいしかないものの、時々負け額に対して10倍や20倍の金額を勝つことがあると言います。

勝率は低くても、下がったときはすぐ損切りをすることで、上がった銘柄のうちのいくつかは損失額の10倍、20倍の利益になっていき、トレード効率からすると、このほうが良い結果になりやすいと言うのです。

そして、損切りした株がまた上がりだしたときに買えるかどうかも、大きなポイントになるとあります。

4.ナンピンは最悪のテクニック

第1章では、ナンピンについても触れられています。

ナンピンは、場合によっては一撃で死亡してしまうこともあるため、最悪の買い方だと言っています。

また、まずいのは自分の失敗、敗北を認めないことであり、ナンピンは失敗しているにもかかわらずロットを増やす(=賭け金を上げる)という点でも矛盾しているとも述べています。

つまり、株でいちばん大切なのは迅速な損切りであり、失敗を認めて迅速に撤退しなければならないと言うのです。

損を認められない気持ちが、相場では敗北につながるため、すばやい損切りはものすごく重要であり、失敗は当然としてそれを最小にとどめなければならないと繰り返し書かれています。

5.適正な価格など存在しない

第3章では、著者の投資手法の根底にある考え方について書かれています。

具体的には、多くの人は「安く買って高く売る」という発想でいるから、高いときは買いたくないと思ってしまうということです。

その高いというのは過去と比較しての話で、適正な価格なんて本質的には存在せず、買った値段より高く売れれば儲かるのだから、過去と比較して考えないほうがいいと言うのです。

そんな著者も、株を始めたばかりの頃は負け続けたと言います。

その当時は、いろんな企業の財務分析をして、企業の価値を評価したうえで割安な株を買うファンダメンタル投資をやっていたそうです。

ただ、割安だという判断は主観に過ぎず、そんなことはみんな知っていて、実際には株価というのはそれを踏まえたうえでの取引値段になっていると指摘しています。

つまり、企業の価値を株価が正しく反映していないと考えるよりも、株価こそが答えであり、世の中の総意として適正だとみなされている数字だと考えるほうが正しいということです。

そのため、信用される企業はさらに信用され、割安な株はさらに割安になる、というのが真実に近く、株式市場は公平や平等という概念で動く場ではないと書かれています。

6.「今ある優位性」に張る

第6章では、著者が勝ちに転じるようになった経緯について書かれています。

それは、2ちゃんねるの株板のオフ会に行ったのがきっかけだったと言います。

そして、実際に億単位で勝っている人たちがやっている方法は、「今ある優位性」に張る短期トレードだったり、指数組み入れなどの理由がある株を買ったりするものだったとあります。

そのオフ会をきっかけに、長期トレードをやめて、値動きだけを見る短期トレードに変えてから、それまで負け続けていたのが噓のように連戦連勝となったと言うのです。

一方で、第7章では、「これから株を始めるなら」とのことで、不況時の赤字会社への長期投資をやってみてもいいかもしれないと書かれています。

JALや東芝、東京電力を例に挙げ、紙切れになるリスクを背負って転落会社を買うのは夢があると言っています。

7.総括

著者は、基本的には順張りだと言いますが、本書の中では逆張りや、計画的なナンピンの例も出てきます。

この順張りや逆張りというのは、どちらが優れているというものではなく、マーケットの状況や自分の性格などに合わせて行う必要があるものでしょう。

本書の中でも、「大きく儲けるチャンスというのは、人間の感情が大きく揺さぶられるとき」で、人々が恐怖を感じているときこそチャンスになるとも書かれています。

そして、そういった状況下では、逆張りやナンピンが力を発揮すると言えます。

また、著者は株以外にも、仮想通貨や債券、商品、不動産なども手掛けています。

常日頃から、様々なマーケットをウォッチし続け、機を見て大きくリスクテイクするというのは、とても常人に真似できるようなものではなく、著者が短期間で大きな資産を築いたというのも納得がいきます。

最後に、本書はタイトルにも「投資哲学」とあるように、何か具体的な投資手法が書かれているわけではありません。

そのため、本書をあえて読む必要性というのは低いでしょうが、カリスマ投資家の自叙伝として読む分には面白いと言えるでしょう。

 

 

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