投資の基礎知識・理論・心理

アナリストなんて当てにならない!?

1.アナリストとは?

まず、アナリストとは何かということから書いていきたいと思います。

アナリスト(analyst)は分析者という意味になりますが、投資の世界でアナリストというと一般的には証券アナリストのことを指します。

もちろん、アナリストには他にも債券の分析を行うクレジット・アナリストや投資信託の分析を行うファンド・アナリストなどもいますが、一般的には証券アナリストのことを指します。

そして、証券アナリストとは、市場全体の動向や企業の財務内容などを調査、分析する専門家のことです。

似たようなものとして、投資に関する戦略や方針を考える専門家である投資ストラテジスト、投資助言業務などを行う投資アドバイザーがありますが、これらは広い意味でのアナリストに含まれます。

また、エコノミストというのは、経済動向の調査や分析をする専門家のことをいいます。

2.アナリストの市場予測

さて、アナリストは顧客に向けて、レポートやニュースレターを定期的に発行したりしていますが、その内容に関するある調査をご紹介したいと思います。

それは、アメリカのある投資顧問サービスが、ニュースレターの内容からアナリストを強気筋と弱気筋に分け、その後の経過をモニタリングしたというものです。

その結果、全体の55%以上が強気のときには株価がその後下がる傾向が強く、逆に強気筋が35%以下のときには株価がその後上がるという傾向が強かったのです。

つまり、企業の調査、分析の専門家であるはずのアナリストが、当てにならないどころか、むしろ逆指標にさえなってしまっているという結果だったのです。

それだけ市場の先行きや将来の株価を予測するのは困難であるということですが、ランダムウォーク理論と著名投資家のところでも書いたように、そもそも市場の値動きというのはほとんどランダムであり、その先行きを正確に予測することはほぼ不可能です。

そして、意外と誤解している人が多いのですが、市場の先行きや将来の株価を予測することが投資家の仕事というわけでもないのです。

ですから、市場予測の精度を高めようとするような間違った努力は、徒労に終わるだけとなってしまいます。

3.投資の本質

では、投資家が真にするべきことというのはどういったことなのでしょうか?

これについては投資の本質のところでも書いたのですが、とても重要なことなので改めてここで簡単に書いておきたいと思います。

それは、市場がどう動いても構わないという姿勢で、予め投資戦略を練っておくことが大事だということです。

また、決して市場を予測してはいけないというわけではなく、予測というのは当たることもあれば外れることもあるというスタンスで市場に臨む必要があるということです。

投資においては、万人に共通する正解というものがあるわけではなく、そもそも正解のようなものがあるのかどうかも分かりません。

そうした中で、自分にとって最適な投資戦略を探求し続ける果てのない道であるというのが、投資の本質であると考えています。

4.投資に関する誤解

こういった投資の本質というのは、理解していない人がかなり多いのではないかと思われます。

というのも、私が資産構築コンサルタントをしているというと、「何を買えばいいですか(儲かりますか)?」とよく聞かれるからです。

はっきり言って、それが分かったら誰も苦労はしません。

また、こういった質問をする背景には、「何か良い情報を知ることができれば、それによって投資で勝つことができる」といった誤解があるように感じられます。

そして、こういった考え方というのは完全に間違いというわけではないのですが、非常に危険なものです。

というのも、こういった考え方をしていると、儲かりそうな目新しい情報が出るたびに飛びついてしまったり、甘言に乗せられて投資詐欺に引っ掛かってしまったりすることにつながりかねないからです。

ここで、完全に間違いではないと書いたのは、確かに大きな利益につながるような価値ある情報というのが一部には存在するからです。

しかし、私たちのような一般の個人投資家のところへ、そうした本当に価値のある情報が回ってくることはありません。

本当に有益な情報というのは、一部の超富裕層の中でだけ共有されるものだからです。

ですから、私たちのもとへ降りてくるような情報はしょせん大したものではないとわきまえるべきです。

それにより、投資判断を他人の意見に委ねて大きな損失を被ってしまったり、投資詐欺に遭ってしまったりといったことのかなりの部分を減らすことができるはずです。

5.アナリスト不要論

しかしそれにしても、当たらない予測をして大勢の投資家を惑わせるようなアナリストたちに、果たしてどれだけの存在価値があるのかは甚だ疑問です。

もちろん、確実なものが何一つない世界で、何かにすがりたいという投資家が大勢いるからこそ、彼らアナリストたちの仕事が成り立っているのでしょうし、そうした投資家たちの気持ちも分からないわけではありません。

なぜなら、かく言う私自身も、アナリストの予測に賭けて損をしてしまったことが一度や二度ならずあるからです。

ちなみに、そのアナリストは非常に博識で、一般の人間が到底知り得ないような情報も併せ持っているような人でしたが、そのような人の予測でも完璧というわけにはいかないのです。

ですから、どんなに優秀で有能と思われるアナリストであっても、その予測を盲信してしまってはいけません。

アナリストの意見はあくまでも参考程度に留め、最後は自分の頭でしっかりと考えてから投資判断を下すことが大切なのです。

 

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