相場のデータ・指標

【2022年3月末時点】レイ・ダリオ氏率いるブリッジウォーター・アソシエイツの最新ポートフォリオ

1.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務

今回は、ヘッジファンド界の帝王とも呼ばれるレイ・ダリオ氏が率いる、世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの2022年3月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。

ちなみに、レイ・ダリオ氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。

これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。

この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。

ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。

また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。

さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。

つまり、この22年5月中旬には、著名投資家たちの22年3月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。

2.ブリッジウォーター・アソシエイツのポートフォリオ

それでは早速、ブリッジウォーター・アソシエイツの2022年3月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では、組み入れ比率の上位22銘柄を示しています。)

ブリッジウォーター・アソシエイツの22年3月末時点でのポートフォリオ

また、この四半期前の2021年12月末のポートフォリオを示したのが下図になります。

ブリッジウォーター・アソシエイツの21年12月末時点でのポートフォリオ

さらに、2022年3月末時点における組み入れ比率の上位22銘柄について、より詳しく示したのが次の表になります。

ティッカー 銘柄名 保有株数の増減率(%) 組み入れ比率(%) ポートフォリオ全体への影響度(%)
VWO Vanguard FTSE Emerging Markets ETF 35.18 4.23 1.1
PG Procter & Gamble Co 31.5 4.2 1.01
IEMG iShares Core MSCI Emerging Markets ETF 92.47 3.58 1.72
EEM iShares MSCI Emerging Markets ETF 120.19 3.57 1.95
SPY S&P 500 ETF TRUST ETF 0 3.43 0
BABA Alibaba Group Holding Ltd 75.25 3.28 1.41
JNJ Johnson & Johnson 40.26 3.11 0.89
KO Coca-Cola Co 37.36 2.98 0.81
PEP PepsiCo Inc 36.68 2.82 0.76
COST Costco Wholesale Corp 29.72 2.76 0.63
WMT Walmart Inc 42.38 2.42 0.72
MCD McDonald’s Corp 37.67 2.3 0.63
IVV iShares Core S&P 500 ETF 28.58 2.06 0.46
GLD SPDR Gold Shares ETF -7.88 1.54 -0.18
ABT Abbott Laboratories 39.46 1.45 0.41
SBUX Starbucks Corp 28.84 1.21 0.27
TGT Target Corp 26.15 1.13 0.23
MDT Medtronic PLC 新規買い 0.84 0.84
CL Colgate-Palmolive Co 38.36 0.8 0.22
EL The Estee Lauder Companies Inc 41.43 0.8 0.23
PDD Pinduoduo Inc 85.56 0.8 0.37
PFE Pfizer Inc 352.33 0.69 0.54

ちなみに、ポートフォリオ全体への影響度で、増加率が0.5%以上であった銘柄は全て、この上位22銘柄に含まれていました。

3.レイ・ダリオのポートフォリオ・マネジメントと総括

一方で、ポートフォリオ全体への影響度で、減少率が0.15%より大きかったものは、以下の5銘柄となっていました。

ティッカー 銘柄名 保有株数の増減率(%) 組み入れ比率(%) ポートフォリオ全体への影響度(%)
HD The Home Depot Inc -50.9 0.13 -0.27
LOW Lowe’s Companies Inc -55.24 0.11 -0.26
JD JD.com Inc -19.54 0.5 -0.21
GLD SPDR Gold Shares ETF -7.88 1.54 -0.18
TSLA Tesla Inc 完全売却 0 -0.16

以上の表から、22年1月から3月末までの間に新興国株ETFを大きく買い増し、22年3月末時点のポートフォリオにおける組み入れ比率上位4銘柄のうち、3銘柄を新興国株ETFが占めるまでになっていることが分かります。

また、組み入れ比率が上位にある銘柄の中でも、製薬や飲料、小売りといったディフェンシブ銘柄を大きく買い増していることも見て取れます。

現在のような、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ局面では、グロース株よりもバリュー株が優位となりやすいため、ディフェンシブ銘柄を買い増しているのは自然なように思われます。

ただ、利上げや量的引き締め(QT)といった金融引き締めは、新興市場からの資金流出につながりやすく、新興国株ETFを大きく買い増しているのはやや気になるところです。

そして、ポートフォリオ全体への影響度で、減少率が大きかった銘柄の中で、GLD(金ETF)のウェイトを減らしているのも気になります。

確かに、GLDもここ2ヵ月は軟調な値動きとなってはいますが、FRBの利上げにより、世界的に株式(特にグロース株)も債券も調整している状況下では、分散先の一つとして、金により多く振り分けても良いのではないかと思われるからです。

これらのような、ポートフォリオ・マネジメントを見る限りでは、レイ・ダリオは、当面は利上げや量的引き締め(QT)が続くにしても、それに伴う景気減速によって、2.5%程度とされる中立金利までの利上げは難しいと考えているのではないでしょうか。

そうなると今後、新興国株式は多少の下げがあったとしても、中期的には投資妙味を増しつつあるという状況なのかもしれません。

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