1.本書の概要
ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- 株価は「2つの波」で予測できる
- 著者:武田 惟精
- 出版日:2013/3/1
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、テクニカル分析、波動理論
まずは、本書の概要からです。
本書は、62年間のチャート研究により完成した「二段波動理論」により、今後の株価を予測するための手法について書かれています。
なお、前回レビューした、『伝説のファンドマネージャーが実践する 株の絶対法則』の中で、林則行氏は武田氏を師であると書いています。
本書の章立ては、以下のようになっています。
- 第1章:二段波動理論ができるまで
- 第2章:相場は2つの波で把握する
- 第3章:5つの基本パターンで波動はマスターできる
- 第4章:実際の株価を予測してみよう
- 第5章:ローソク足の基本型と読み方
2.「二段波動理論」の概要
第2章で書かれているように、本書の「二段波動理論」は、相場は二段上げ、二段下げを繰り返し、「第一波動と第二波動の値幅は等しい」という原理に基づいています。
また、「第一波動のあとには必ず中継ポイント(押し目や戻り)があり、中継ポイントのあとには必ず第二波動が出現してくる」とも述べられています。
そして、「酒田五法」や「エリオット波動」などと比較して、この二段波動理論が優れているのは、相場の天井値や底値が正確に、しかも簡単に計算できることであるとしています。
さらには、日本テクニカルアナリスト協会の名誉会長を退いたあと、大阪経済大学の客員教授となった岡本博氏が、講演で次のような発言をしたともあります。
「テクニカル分析についてはずいぶん勉強してきたけれど、大して役に立たない。二段波動が一番いいとわたしは思いますよ。最後の土壇場にきて頼りにするのは武田先生の二段波動です」
3.二段波動理論の5つの基本型
第3章では、以下のような二段波動理論の5つの基本型について、それぞれ説明がなされています。
- 単純二段波動
- みなし二段波動
- 変形二段波動
- イレギュラー二段波動
- W足型のチャート
そして、これらの説明に用いられている図を、筆者が追記・再構成したものが、次の図になります。
これらのうち、「イレギュラー二段波動」については厄介なものであり、基本的には撤退するのが原則となります。
また、二段波動理論では、最初はすべて「単純二段波動」として計算し、その後の展開を見ながら熟考を重ねて、どの型になるかを判断していくとのことです。
なお、この方法を実践していった場合、7~8割方は相場の天底を把握することができるだろうと言います。
4.六甲本伝循環
第2章では、『六甲伝』にある、米相場の極意書として書かれた「六甲本伝」という一種の波動論についても触れられています。
その中に、著者が注目する、「六甲本伝循環(千日一相場)」という、次のような記述があると書かれています。
「景気は1000日をもって循環する。その循環は一甲、すなわち60年ごとに高値一度、安値一度のものとし、その他は通い高下であって天井・底というものではない」
言葉では分かりにくいのですが、本書ではこれを表にしたものが掲載されています。
その表を一部改訂、追記した(元号を令和とし、10年分を追加)のが以下の表になります。
この表に関して、過去の日経平均株価と照らし合わせてみると、当然ですが、概ね合致しているところもあれば、そうでないところもあります。
とはいえ、青く塗りつぶした部分にあるように、2020年中旬が大天井になるとの示唆は気になるところです。
5.酒田罫線の奥義「酒田五法」
第5章は、テクニカル分析についての内容となっています。
具体的には、ローソク足の基本型として、陽線9本、陰線9本、寄り引け同時線7本が、またローソク足の組み合わせとして、かぶせ線、切り込み線、などの10種が紹介されています。
さらに、本間宗久の遺した『三位伝・波乃巻』にある、罫線による相場予測法である「酒田五法」についても触れられており、この「酒田五法」に関しては次のように書いています。
罫線の祖である本間宗久は、自ら編み出した米相場必勝法の骨子として、足型の組み合わせ5種類を選び、これらをとくに重要視しています。それが「酒田五法」と呼ばれているものです。
また、「二段波動理論」と併せた、その使い方については次のように述べています。
「二段波動理論」で大勢、中勢の見通しを立てたうえで、いざ出動というときに酒田罫線で日足を見て判断するのがベストだと思われます。
ここでは最後に、酒田五法の罫線をそれぞれのエッセンスとともに図示しておきます(筆者が追記・再構成したもの)。
6.総括
本書の「二段波動理論」は、その生涯をチャート分析に費やしたとも言える、武田惟精氏のまさに集大成です。
理論自体は非常にシンプルなものですが、それだけに現実の相場に適用するにはある程度の習練や習熟を要するでしょう。
ただ、シンプルであるが故に応用範囲が広いとも言えます。
そして、この理論が優れているのは、現実の相場における実践に則した理論になっているという点です。
そういったこともあり、テクニカル分析に関しては、余計なものを取り入れずに、この書籍にある内容だけで十分なのではないかと考えています。