読書録・書評

【読書録・書評】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書では、少子高齢化によって、これからの日本で予想される様々な事柄について書かれています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1部 人口減少カレンダー
    • 序 2016年、出生数は100万人を切った
    • 2017年 「おばあちゃん大国」に変化
    • 2018年 国立大学が倒産の危機へ
    • 2019年 IT技術者が不足し始め、技術大国の地位揺らぐ
    • 2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
    • 2021年 介護離職が大量発生する
    • 2022年 「ひとり暮らし社会」が本格化する
    • 2023年 企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる
    • 2024年 3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国」へ
    • 2025年 ついに東京都も人口減少へ
    • 2026年 認知症患者が700万人規模に
    • 2027年 輸血用血液が不足する
    • 2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
    • 2033年 全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる
    • 2035年 「未婚大国」が誕生する
    • 2039年 深刻な火葬場不足に陥る
    • 2040年 自治体の半数が消滅の危機に
    • 2042年 高齢者人口が約4000万人とピークに
    • 2045年 東京都民の3人に1人が高齢者に
    • 2050年 世界的な食料争奪戦に巻き込まれる
    • 2065年~ 外国人が無人の国土を占拠する
  • 第2部 日本を救う10の処方箋―次世代のために、いま取り組むこと
    • 序 小さくとも輝く国になるための第5の選択肢
    • 【戦略的に縮む】
      • 「高齢者」を削減
      • 24時間社会からの脱却
      • 非居住エリアを明確化
      • 都道府県を飛び地合併
      • 国際分業の徹底
    • 【豊かさを維持する】
      • 「匠の技」を活用
      • 国際学生制度で人材育成
    • 【脱・東京一極集中】
      • 中高年の地方移住推進
      • セカンド市民制度を創設
    • 【少子化対策】
      • 第3子以降に1000万円給付

ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。

2.2025年問題

現在、政府が想定する人口問題の危機として、「2025年問題」というものがあります。

これは、人口ボリュームの大きい団塊世代(1947~1949年生まれ)が、大病を患いやすい75歳以上となり、医療・介護費がかさむことを懸念したものです。

また、社会保障給付費が膨張するだけでなく、医療機関や介護施設が足りなくなるのではないかとも指摘されています。

そして他にも、2025年までに種々の問題が生じてくるといいます。

それは例えば、以下のようなものです

  • 社会インフラ(道路・上下水道など)の老朽化
  • 企業の人材不足(IT技術者など)
  • 認知症患者の増加
  • 老老介護(介護される側も、介護する側も高齢者)の増加
  • ダブルケア(育児と介護を同時に行う)の増加

3.2042年問題

そして、2040年頃に向けては、死亡者数が激増し、火葬場不足に陥ると予測されます。

さらに、高齢者数がピークを迎える2042年頃には、無年金・低年金の貧しく身寄りのない高齢者が街に溢れかえり、生活保護受給者が激増して国家財政がパンクするのではと心配されるのです。

これらのことを筆者は「2042年問題」と呼んでいます。

なお、高齢者数が2042年にピークを迎えるというのは、団塊世代に次いで人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)がすべて高齢者となるためです。

4.国防や治安、防災機能の低下

他にも、本書では次のようなことが書かれています。

少子化は警察官や自衛隊員、消防士といった「若い力」を必要とする仕事の人員確保にも容赦なく襲いかかる。若い力が乏しくなり、国防や治安、防災機能が低下することは、即座に社会の破綻に直結する。

2050年頃には国土の約2割が無居住化すると予測される。さらに時代が進んで、スカスカになった日本列島の一角に、外国から大量の人々が移り住むことになれば、武力なしで実質的に領土が奪われるようなものだ。

後者に関して、例えば長崎県の対馬では、韓国資本などの土地取得が次々と進み、観光客が大挙して押し寄せるため、島はだんだんと韓国抜きには成り立たなくなってきており、自衛隊施設の隣接地までが韓国資本の手に渡ったといいます。

また、かなり前から、外国資本による北海道の水源地などの買収が問題となっていますが、国際的な水資源の争奪戦が続いている中で、水源地を外資に押さえられるのは、安全保障面において深刻な事態です。

さらに、世界は人口爆発の趨勢にありますが、それにより地球規模での深刻な食料不足となれば、日本も食料や水が不足することが予想されるのです。

5.総括

本書では、少子高齢化に起因する様々な問題について書かれており、第2部ではそれに対する10の処方箋として、筆者による提言がなされています。

それらの中には、確かに画期的と思えるものもいくつかありますが、今の政府が実行・実現したりするようなことは、正直に言ってあまり期待できません。

そして、投資家目線で言えば、企業への長期投資を考える上では、本書にある人口減少カレンダーを頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。

例えばですが、長期的には以下のような傾向が徐々に強まっていく可能性があると思われます。

  • 若者向けのアパレル業界などは、高齢者向けへの転換を迫られる
  • 生活苦や老後不安から、デフレ産業が栄える
  • 治安悪化から、セキュリティ関連機器や自宅警備などの需要が高まる
  • 防衛力の低下を阻止するため、軍需産業への投資(予算)が増加する
  • 農業や水関連ビジネスを手掛ける企業の重要性が増す

もちろん、これらはグローバルな視点も併せて考える必要があることは言うまでもありません。

最後になりますが、本書で示されているような日本が抱えている各種の問題を、政府が解決するというのは非常に困難なことでしょう。

ですから、既に大変な時代を迎えつつある中で、各人が少しずつでも今からできることを考えて実行していくことで、来るべき厳しい将来に備えておかなければなりません。

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