各種金融商品・制度

「金投資」:金相場の歴史や、主要通貨・市場金利・物価との比較で考える!

以下の記事では、金価格について、金現物の需給や、NY金先物のCFTC建玉明細といった観点から書きました。

そして、金は現物にしても先物にしても、投資的な要素の強い商品であるといえました。

そこで、ここでは金に関係してくる投資的な要素について、具体的に書いていきたいと思います。

1.金の歴史と金本位制

まずは、金という商品をより理解しやすくするために、その歴史について簡単に見ていきます。

金は、紀元前6000~5000年といった太古の昔から装飾品として用いられ、紀元前700~600年頃からは、金を利用して鋳造された貨幣が使用されていたといわれています。

金が古くから重宝されてきた理由としては、金そのものの美しさはもちろん、長い年月の経過にも耐えうる安定性の高さや、希少性の高さなどが挙げられます。

そういった特徴から、金は価値を保存する手段としても優れており、無国籍通貨と呼ばれたりもします。

そして実際に、近代においても金本位制という制度が存在していました。

金本位制というのは、金を通貨価値の基準とし、通貨の価値を一定量の金と結び付けることで、金との兌換を保証するような制度のことです。

この金本位制は、1816年のイギリスが始まりといわれ、その後ヨーロッパ各国に広がっていきました。

その後、1914年からの第一次世界大戦により、各国が金本位制を中断せざるを得なくなった時期もありましたが、1919年にはアメリカが金本位制に復帰し、各国もそれに続きました。

しかし、1929年10月24日(暗黒の木曜日)からのアメリカの株価大暴落に端を発した、世界大恐慌により、1937年6月までに主要各国は金本位制を放棄していくこととなりました。

ただ、アメリカだけは、1934年の金準備法により、1オンス20.67ドルから35ドルへとドルの切り下げは行ったものの、金本位制を維持していました。

そして、1971年8月15日には、当時のリチャード・ニクソン大統領が、ドル紙幣と金の兌換を停止した、いわゆるニクソン・ショックがありましたが、1オンス35ドルという価格はこのときまで維持されていました。

そこから徐々に、金に対してドルを切り下げていきましたが、ついに1978年4月には先進国の金本位制は終焉を迎えることとなったのです。

このような金の歴史からも、金というのは通貨的な側面が強いといえます。

2.金価格と為替相場(主要通貨)

そこで、金価格と主要通貨の為替相場とを比較してみます。

主要通貨に関してですが、国際決済銀行(BIS)では、3年ごとに世界の為替市場の取引状況が発表されています。

その中で、直近の2016年に発表された、通貨ペア別の取引高では、EUR/USD(ユーロ/ドル)が23.1%と最も多く、次いでUSD/JPY(ドル/円)の17.8%となっていました。

そういったこともあり、ここでは「EUR/USD」と「USD/JPY」について、その推移を金価格(NY金先物)と比較していきます。

ここで、EUR/USDやUSD/JPYといった為替レートは、2つの通貨間の交換比率を示したものですが、ドル自体の総合的な価値を示す指標である、ドルインデックスというものがあります。

このドルインデックスは、ユーロや円、ポンドなどといった複数の通貨から算出されます。

また、ドルインデックスについては、いくつか種類があるのですが、ここでは先物取引も行われており、一般的に用いられることの多い、ICEドルインデックスについて見ていきます。

以下の図は、上から順に「ICEドルインデックス」、「USD/JPY」、「EUR/USD」を、それぞれ金価格の推移と比較したものです。(見やすくするために、「ICEドルインデックス」、「USD/JPY」については軸を反転しています。)

金価格とICEドルインデックスの推移を示した図

金価格とドル円相場の推移を示した図

金価格とユーロドル相場の推移を示した図

これらの図で示した、1973年11月以降の期間では、いずれにおいても金価格との相関を認めました。

具体的な金価格との相関係数は、「EUR/USD」が約0.57、「USD/JPY」が約-0.53(逆相関)、「ICEドルインデックス」が約-0.46(逆相関)となっていました。

これらの結果からは、よく言われるように金価格とドルは逆相関にあるということが分かります。

つまり現在、基軸通貨の地位にあるドルの信認が揺らぐ(弱くなる=ドル安)と金価格が上昇し、逆にドルが強くなる(=ドル高)と金価格が下落する傾向があるということを示しています。

3.金価格と米国債利回り

こういったことからも、金はドルに代わる価値保存の手段として、無国籍通貨といわれるのも納得できます。

ただ、多くの通貨とは異なって、金には金利が付きません。

そのため、金価格は市場の金利にも影響されてきます。平穏な相場であれば、高い金利の付く通貨の方が、金よりも選好されるためです。

そこで、ここではアメリカの市場金利と金価格とを比較していきたいと思います。

そして、市場金利を米国債利回り実質金利とに分けて見ていきますが、まずは米国債利回りについてです。

米国債利回りに関して、10年債利回り長短金利差(10年債利回り-2年債利回り)をそれぞれ金価格と比較したのが以下の図になります。

金価格と米10年債利回りの推移を示した図

金価格と長短金利差の推移を示した図

10年債利回りに関しては、その利回り低下に伴って、金価格が上昇しているように見えなくもありません。

一方の長短金利差については、変動が激しく、当てになるものではなさそうです。

4.金価格と実質金利

次に、アメリカの実質金利を金価格と比較していきます。

実質金利というのは、名目金利から物価上昇率(インフレ率)を差し引いたものですが、それぞれに何を使うかで、結果が異なってきます。

ここでは、名目金利として政策金利、または長期金利(米10年債利回り)を、物価上昇率としてCPI(前年同月比)、またはコアCPI(前年同月比)を用い、それぞれを組み合わせた4通りの実質金利と金価格とを比較したのが以下の図です。

なお、コアCPI(アメリカ)というのは、消費者物価指数(CPI)から、外的要因に左右されやすく値動きが激しい、食料やエネルギーを除いて算出したものになります。

政策金利とコアCPIの差を金価格と比較した図

長期金利とコアCPIの差を金価格と比較した図

政策金利とCPIの差を金価格と比較した図

長期金利とCPIの差を金価格と比較した図

これらの図からは、名目金利に政策金利を用いると、実質金利の変動が激しくなり、その指標としての信頼性が損なわれてしまうように思えます。

また、物価上昇率(インフレ率)には、コアCPIよりもCPIを用いた方が良さそうです。

特に、金価格と実質金利④の図を見て分かるように、「長期金利-CPI」で算出した実質金利は、2009年以降において金価格と強い相関を認めています。(2009年1月以降の両者の相関係数は約0.79

5.金価格と物価

さて、前項では物価上昇率として、CPIやコアCPIの前年同月比(%)を用いましたが、CPIやコアCPIそのものの推移についても金価格と比較してみます。

というのも金は、株や不動産などとともに、インフレに強い、あるいはインフレヘッジに有用といわれるためです。

そして、CPIとコアCPIそれぞれについて、その推移を金価格と比較したのが以下の図です。

金価格と米CPIの推移を示した図

金価格と米コアCPIの推移を示した図

これらの図に関しては、CPIとコアCPIとで大差なく、いずれにしても全期間で見れば、金価格は物価上昇と同程度に上昇しているといえそうです。

6.金相場の推移から見た「有事の金」

ここまで見てきたように金価格には、為替相場(特にドル)、長期金利や実質金利、物価など、様々な要素が影響を及ぼしてきます。

そしてさらに、金は「有事の金」ともいわれ、テロ・戦争などといった地政学的リスクや、金融不安などが高まったときに、金への資金逃避が起こり、金価格が上昇するといわれています。

ここでは、その「有事の金」について、金相場の推移を振り返りながら検証していきたいと思います。

まず、1979年12月24日のソ連軍によるアフガニスタン侵攻の前後で金価格は大きく上昇していました。

しかし、1987年10月19日のブラックマンデーや、1991年1月からの湾岸戦争、1997年7月からのアジア通貨危機、1998年8月からのロシア財政危機などでは、金相場はほとんど変化しませんでした。

その後、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件や、2003年3月からのイラク戦争辺りから徐々に上昇をし始めました。

また、2008年9月のリーマン・ショックで一時は下落したものの、その後すぐに持ち直しました。

さらに、2009年10月に発覚したギリシャ財政危機や、同年11月25日のドバイ・ショック、2011年1月に表面化し、同年8月15日に格下げとなった米国債ショックなどにより、金価格は大きく上昇していきました。

そして、2013年10月より大きく下落していきましたが、その後は現在に至るまで、概ね横ばいでの推移となっています。

つまり、2015年6月と8月の二度のチャイナ・ショック(中国ショック)、2016年11月9日のトランプ・ショックにおける、金相場の反応は限定的なものに過ぎませんでした。

このように、「有事の金」は当てはまるときもあれば、そうでないときもあるということが分かります。

7.金投資の考え方

以上のことから、金は万能というわけではないものの、有事に備えていくらかを保有しておくというのはありかもしれません。

実際に、ポートフォリオに占める金投資の割合を、10~15%程度にすることが推奨されているのをよく見かけたりしますが、10%もあれば十分過ぎるほどで、数%程度でもいいのではないかと考えています。

というのも例えば、技術革新により、鉱山生産量や投資鉱山(家電などの廃棄物に含まれる貴金属)からの回収量が増加し、需給が緩むことで、金価格がそこまで上昇しない可能性もあったりするためです。

また、冒頭には書いていなかったのですが、アメリカでは金保有禁止の歴史というのがありました。

1933年4月5日に、当時大統領に就任したばかりのフランクリン・ルーズベルト大統領によって発令された行政命令6102号によって、アメリカ国民は金(金貨、金地金、金証書)の保有を禁止されたのです。

これによって、当時アメリカ国民が保有していた金も、1オンス20.67ドルで強制的に買い取られることとなりました。

そして、1974年12月31日まで40年以上という長きにわたって、アメリカでは金の保有が禁止されていたのです。

ちなみに、職業的、芸術的な用途などでの少量の保有や、一部の希少な金貨の保有については許可されていました。

だからといって、希少な金貨(コイン)への投資を推奨するものでは当然ありません。

金貨は、業者の手数料が10~20%と高い商品であり、一見信頼できそうな業者でも、法外な手数料を取っていたりすることがあります。

また、大手鑑定会社の鑑定付きコインのように見えても、偽物が混じっていることもあります。

本当に価値があるのは、ごくごく一部の1枚が数千万とか数億円とかするような超希少コインのみでしょうし、それらのコインにしてもここ5~10年ほどで大きく値上がりし過ぎていると感じます。

ですから、少なくとも金貨(コイン)は安易に手を出していいいような商品ではないと考えています。

そして、金投資に関しては、あくまで分散対象となる金融商品の一つとして、金ETFにしても金地金にしても、数%程度をポートフォリオに加えることを検討するといった程度のスタンスで良いのではないでしょうか。

さらに、金投資の際には、ここで取り上げた為替相場や実質金利などとともに、冒頭にご紹介した記事の中で取り上げた、NY金先物のCFTC建玉明細などを参考にしていただければと思います。

 

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