ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- 改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!
- 著者:西堀 敬
- 出版日:2017/10/14
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、IPO
1.書籍の概要
まずは、本書の概要からです。
本書では、IPO(Initial Public Offering:新規株式公開)株について、多岐にわたるデータをもとに書かれています。
本書の章立ては、以下のようになっています。
- 第1章:IPOってどんなしくみ?
- 第2章:IPO株の買い方を知ろう
- 第3章:IPO株を分析しよう
- 第4章:初値を売る ~超短期の公募買い・初値売り~
- 第5章:上場後に買う ~1年程度の中期売買~
- 第6章:10年で株価100倍を狙う ~超長期投資~
ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。
2.IPOと景気動向
第1章は、IPOに関しての説明となっています。
その中で、IPOの件数は、景気の動向に左右されるといったことが書かれています。
また、IPO株を初値で売った場合の勝率についても触れられています。
それによると、2000年から2007年までは、IPO件数は100件以上で、勝率も概ね7~9割となっていました。
それが、リーマン・ショックのあった2008年には49件で勝率が約41%、2009年は19件で勝率が約68%、2010年は22件で勝率が約45%、2011年には36件で勝率が約53%となってしまっていたのです。
そして、以後は件数も徐々に増加傾向となり、勝率も概ね8~9割で推移しています。
3.IPO株の取得
第2章は、IPO株の買い方についての内容となっています。
IPO株は、ネット証券と店舗証券では取得までの流れが異なり、ネット証券に関しては次のように書かれています。
ネット証券の場合は、ブックビルディングに参加し、公開価格が決まってから改めて購入の申し込みを行います。その後、抽選が行われて、晴れて当選した場合にはじめて購入できます。
なお、IPO株の手数料は、公開価格の中に含まれており、購入時には手数料がかかりません。
また、抽選のしくみもネット証券によって違いますが、完全平等抽選で配分するところが多くなっています。
ちなみに著者は、ネット証券のブックビルディングや対面営業の大手店舗証券よりも、中堅の店舗証券のほうがIPOに当選しやすいと考えているとのことです。
4.IPO株の分析
第3章は、IPO株の分析についての内容となっています。
まず、IPO株の情報源として、「Yahoo!ファイナンス」や「日本証券取引所グループ」、「日本経済新聞の新規上場企業の横顔」、著者が運営する「IPOジャパン」が紹介されています。
そして、上場前に手に入れられる書類の中で、もっとも注目すべき資料は、「(新株式発行並びに)株式売出届出目論見書」であり、本章では主にこの目論見書のチェックポイントについて書かれています。
具体的には、公開スケジュールや上場市場、事業内容、財務データ、主幹事証券会社と幹事証券会社(引受シンジケート団)、新規発行株数・売出株数、想定発行価格、株主、ロックアップ条件が挙げられています。
ロックアップというのは、大口の株主が「上場後一定の期間、もしくはある株価まで上昇しないと、市場で株を売却しない」ことを主幹事証券会社と約束することです。
このときの「上場後一定の期間」は90日もしくは180日、「ある株価」は公開価格の1.5倍以上を指す場合が多くなっています。
5.IPOの初値売り
第4章は、初値売りを中心とした、超短期の売買戦略についての内容となっています。
具体的には、以下のようなことなどが書かれています。
- 公開価格の大きいものを選んだ方がキャピタルゲインが大きくなりやすい
- 株主にベンチャーキャピタル(VC)が入っていなかったり、資金調達額が10億円台までの銘柄が、上場当日に大きく値上がりしやすい
- 資金調達額が7億円未満の銘柄で平均初値騰落率が高くなっている
- 直前のIPOから1週間以上の間が開いているIPOでは、平均初値騰落率が高くなっている
- 東証マザーズ市場のIPO株で、平均初値騰落率がもっとも高い
- 公開価格とIPOディスカウント率から逆算される、適正価格までが、上場後の買いのメドとなる
- ディスカウント率は東証1部で10%、JASDAQや東証マザーズでは20~30%くらいと考えられる
- 適正価格に、IPOプレミアム(利益成長期待率)をかけ合わせた株価が、売りのメドとなる
- 適正価格で時価総額が100億円前後の銘柄を狙うことで、下値のサポートや時価総額のUPを見込める
6.上場後のIPO株
第5章は上場後1年程度の中期売買、第6章は上場後10年の長期投資についての内容となっています。
第5章では、上場後に株価が大きく上昇するうえでは、業績予想の上方修正および、それが繰り返されることが重要なものとなってくるといったことなどが書かれています。
第6章では、時価総額が1000億円を超えて、なおかつ業績が伸び続けると、株主名簿に世界でも名立たる投資家の名前が並ぶようになり、株価が加速度を増して上昇していくといったことが書かれています。
また、ベンチャーキャピタル(VC)やファンドが50%超の株式を保有している銘柄には長期投資のリスクがあるといったことについても触れられています。
7.総括
本書は、IPO投資の第一人者ともいえる著者が、主にここ10年間にIPOした企業の業績変化と株価動向を俯瞰して書かれたものとなっています。
実例に基づいて、様々な角度から分析されており、IPO投資に関してはこの1冊で十分といえる内容だと思われます。
IPO投資にもリスクがあるのは当然ですが、一方で短期間で数十万円~100万円前後と高いリターンが期待できるのも事実です。
ネット証券の場合には、抽選で当選できるかどうかは運次第となってはしまいますが、本書の内容をもとに、IPO投資に参加してみる価値は十分にあるのではないでしょうか。
- 改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!
- 著者:西堀 敬
- 出版日:2017/10/14
- 分類:株式投資、IPO