読書録・書評

【読書録・書評】『株式上達セミナー―これで成功は約束された』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書は、相場師として名を上げ、生涯を通じて個人投資家教育にも尽力した、林輝太郎氏による著作です。

本書では、株式上達セミナーということで、相場の「考え方」や「見方」、「やり方」について書かれています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1部:値動きと売買技法
  • 第2部:投資の常識の矛盾と変動感覚
  • 第3部:売買の練習と上達
  • 第4部:売買実践の解説

ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。

2.相場の基本的な考え方

著者は、売買において利益になる、損になるという原因のほとんどの部分は「やり方」にあると説いています。

一般には、やり方の巧拙よりもまず銘柄の選択が決定的なものと思われていますが、そうではないとうことです。

そして、売買というのは、あくまでも個性を持ち、そのうえ「欲」と「恐怖心」と「動揺した気持ち」を持った人間がやるものであるため、「その人なりに」取れるところを、取れる方法で取るのが相場だと言うのです。

また、「銘柄をしぼる」ことで、「上達・必勝の原則」が成立するとのことで、次のようにも書かれています。

あまりに多くの銘柄を同時に手がけるということは、種々雑多な変動を受け止めようとしていることで、一時は(流れがたまたま同じとき、あるいは偶然にタイミングのよかったときなど)うまくいくことがあっても破綻は時間の問題である。

3.売買の準備

相場で勝つ、利益をあげるための道具であり、売買を行うための準備としては、昔から「相場師の三種の神器」と言われる、次のようなものが挙げられています。

  • 場帖:自分の売買に役立てるための値動き記録。見やすく、値動きの変化を(自分なりに)受け止めやすい(売買に役立つような)記入の仕方をする。
  • 玉帖:自分の売買の記録。推移がわかるとともに、現在のポジション(手持ち株の全容)がわかり、これからどう変化させ(操作、進退し)ていくべきか考える基になるもの。資金管理簿を兼ねている。建て玉のみ抽出したものは値板(ねいた)という。
  • 資料:一般資料、特殊(専門)資料にわけられるが、新聞の綴込みから、グラフ、市場内外の統計まで幅広い。

また、これらの道具に関して、次のようにもコメントされています。

設備投資とみても道具とみてもよいが、とにかく備えあれば、というものが必要である。が、一般の投資家で上達しない人は、この道具に対して驚くほどケチである。

こういった道具を準備したり、記録を継続していくというのは面倒なことでもあるため、とても大事なことであるにも関わらず、ほとんどの人がやらないと言うのです。

そして、次のようなことにも触れられています。

市場においてひとつの値がついたということは、あらゆる点からみて強弱のバランスがとれていた、ということである。もし、その時点において「強弱材料の対比」や「需給」や「値動き追跡」など、基準のとりかた、観点のちがう探り方を総合したとするとバランスがとれているはずではないか。

それを「そうごうしてみたら、強気有利となった」というならば、すなわち総合した素材が片寄っていたことの証明になるだけである。あるいは、自分で気が付かないうちに自分に都合の良い素材だけを集めて総合したと思っているだけ、といえないこともない。

これは、「値動きの研究」などといった、本筋とは異なる努力を行っている投資家を、著者なりに戒めた言葉ではないかと思われますが、確かに一理ある内容だと言えます。

4.売買の練習

著者は、銘柄を限定した売買を行うことで、その銘柄の変動感覚をつかんでいくと同時に、売買技法を向上させることができるという考え方をしています。

あるひとつの「売買の方式」というものは、すべて、上手になってこそ成果を上げられるものである。例えば、ごく簡単な、「逆張り、分割、リズム取り」の売買であっても、その方式に「慣れて」「上手になって」こそ利益があげられるものだ。

世の下手な投資家ほど「下手でもうまく出来る方法」を探している。その「下手でも儲かる方法」を手に入れようと、莫大なカネを払う。どこかで勉強の筋道が狂ってしまったのだ。

そして、ツナギなどを利用しない、片張りの売買を練習していく上では、次のようなことを考える必要があると述べられています。

  1. ためし玉を活用すること
  2. 分割売買をすること
  3. 資金に余裕を持つこと
  4. 休みを入れること

5.売買の実践

分割売買をするというのは、ここでは逆張りを行っていくということであり、この逆張りに関しては、次のように書かれています。

筆者が相場を教わった人たちは、すべてプロばかりで、それも、証券会社に所属せずに売買益で生活している人たちだったのだが、そういう人たちは「生活費を稼ぐ売買」だったから、例外なく逆張りの売買だった。

逆張りは、下がるところを買うのだから、心理的に少しは抵抗を覚えるが、買値そのものが安いのだから、利益を確保するのが容易である。よって、逆張りは入りにくいが、いったん入ってしまうと易しい、ということになる。プロや上手な人はやり方はなるべく単純で確率の高い方法を選ぶものである。

また、「資金に余裕を持つこと」や「休みを入れること」に関しては、次のように書かれています。

資金をそのままにしておくのは、いつでも出動できる、ということなのに、それはもったいない、無駄であるとして、何か株を持っていないと気のすまない人は、売買を娯楽としてスリルを楽しんでいるだけなのである。それでは絶対に上達しない。

もし、銘柄を限定する売買をしてゆくならば、株を持つのは一年のうち(通算して)半年以下、とするように意識して努力していただきたい。相場の上手な人、相場師というのは(常に)株を売買している(持っている)人のことを指すのではない。

休んでいても、決してのほほんとしているのではないのである。自分にとって最良の出動場所を待っているのだし、そして、最良の出動場所というのは早く目的を達せられるところ(つまり短期で利益を得られるところ)なのだから、どうしてもチャンスを狙っている期間は長くなる。

6.総括

本書では、相場に対する考え方、具体的な売買方法、努力のエネルギーの向け方、実例などが書かれています。

前者の3つについては、そのエッセンスをここで書いてきました。

最後の実例に関しては、長くなるのでここには載せられなかったのですが、例えば「6年2か月で10億円を達成したS氏の投資法」などが挙げられています。

とはいっても、このS氏の投資法(FAI方式)が何か特別なものというわけではなく、ここで書いた基本の売買法の延長線上にあるものだと言えます。

また、林輝太郎氏のご子息である、林知之氏によって書かれた、FAI投資法の書籍もありますので、よろしければそちらもご参照いただければと思います。

本書は、相場に対する考え方はもちろんですが、売買技法を上達させるための具体的な売買の練習方法に、より重きを置いた内容となっています。

 

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