読書録・書評

【読書録・書評】『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書では、「日本一バズるアナリスト」とも言われる馬渕磨理子氏によって、堅実な銘柄選定法として上司から受け継いだという「黒字転換株」への投資について書かれています。

なお、本書の章立ては、次のようになっています。

    • はじめに
    • 第1章:黒字転換2倍株こそ、個人投資家の王道!
    • 第2章:黒字転換2倍株は、こうして見つける!
    • 第3章:黒字転換2倍株をファンダメンタル分析で見極める
    • 第4章:売買タイミングを見極めるチャート分析の基本
    • 第5章:IR情報を投資にフル活用する
    • 第6章:相場サイクルで投資チャンスを見極める
    • 第7章:決算書には表れない企業の強みは、ここで見抜く!

2黒字転換2倍株投資術とは

著者は、投資家向けの情報提供会社フィスコで当時、上司だった中村孝也氏(現フィスコ取締役)より直々に、黒字転換2倍株投資術を伝授されたと言います。

その後、全国各地で5年間にわたって、この投資法のセミナーを行い、著者自身が予想した株価の的中率は70%を越えているとのことです。

この投資法は、500~2500円前後の割安銘柄を黒字転換する節目などに仕込み、3か月~2年後の株価が2倍になったタイミングを目安に売却するというシンプルなものです。

黒字転換については、通期ではなく四半期で黒字転換している銘柄を探し、時価総額500億円以下を目安としています。

また、利益に関しては、当期純利益よりも、営業利益・経常利益の黒字転換が重要だとしています。

3.黒字転換2倍株のスクリーニング法

黒字転換2倍株のスクリーニングには、マネックス証券のスクリーニング機能が便利で、四半期業績の黒字転換株を直接抽出することができます。

その中から、直近の四半期決算で黒字転換した銘柄を選別し、通期の見通しも黒字転換していれば、なお良しとなります。

また、営業利益と経常利益の、通期業績予想に対する進捗率が高い銘柄も有望となります。

さらに、具体的な事業内容もチェックし、今後の発展が期待される大きなテーマに乗っているかどうかを検討します。

具体的には、5G・6G、デジタルトランスフォーメーション(DX)、脱炭素・グリーンエネルギー、電気自動車(EV)、キャッシュレス、リモートワーク、遠隔医療、巣ごもり関連銘柄、GIGAスクール構想などが挙げられています。

一方で著者は、「バイオ(創薬)」や「ゲーム」関連の企業は、不確定要素が多いため、触らないようにしているとのことです。

そして、最終的には自身の好き嫌いなども加味して、銘柄を分散して購入します。

4.ファンダメンタル分析とテクニカル分析

第3章や第5章では、ファンダメンタル分析について書かれています。

PERやPBRなどには、あまり触れられておらず、PERに関しては、PERが低ければいいというわけではなく、今後の業績が悪化していく見込みでは安心できないと述べられています。

本書では、そういった定量的な分析よりも、定性的な分析を重視しているように感じられます。

例えば、企業のIR部門に聞きたい7つの質問として、「少し先の未来」、「財務状況」、「投資」、「資本政策」、「競争力」、「戦略」、「遠い将来」が挙げられ、それぞれの具体的な質問例も載せられています。

また、有価証券報告書を見て、「稼ぎ頭のセグメントはどこか」、「財務は安定しているのか」、「この企業の課題は何か」などを深堀りすることができるともあります。

一方、第4章では、チャート分析の基本について書かれています。

著者は、月足チャートで過去の相場の「クセ」を把握したり、移動平均線からトレンドを判断したりすると言います。

また、人気のない銘柄の出来高が安値圏で急増した場合は、買いサインになることがあるとも述べられています。

なお、銘柄の買いは基本的に、黒字転換したタイミングとなりますが、株価の上昇に乗り遅れた場合は、「押し目」のタイミングを待つことで購入するともあります。

そして、利益確定の目安は株価2倍の水準で、損切りはトレンドラインを割り込んだタイミングで行うとのことです。

5.総括

第6章では、相場サイクルの見極めとして、次のような内容について触れられています。

  • 「金融相場」、「業績相場」、「逆金融相場」、「逆業績相場」
  • 株価が動く14の要因:「景気」や「金利」、「為替」、「業績」、「自社株買い」など
  • シンクタンク、経済研究所のレポートで、マクロ経済の情報収集
    • 「コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight」
    • 「永濱利廣 経済調査部・主席エコノミストのレポート」
    • ニッセイ基礎研究所の金融・経済レポート(「井出真吾氏」と「矢嶋康次氏」)
    • フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議のレポート
  • 重要な景気指標:GDP、日銀短観、ISM、PMI

これらのうち、シンクタンクのレポートについては、類書で触れられているのをあまり見たことがなく、アナリストの著者ならではと言えます。

さて、本書で紹介されている「黒字転換2倍株」投資術はシンプルなもので、投資初心者でも割と取り組みやすいものだと感じました。

銘柄のスクリーニングも、四半期ごとの決算が集中するタイミングが主となってくるので、投資家の負担もそこまで大きくはありません。

実際に、私も投資戦略の一つとして、いくらか条件を厳しくして、取り組んでみています。(結果はまだこれからですが。)

個人的には、この戦略を実行するに当たって、赤字転落が最近で言えばコロナ禍など、あくまで一過性の要因によるものかどうかを見極めたいところです。

また、赤字転落前の業績が増収増益傾向であることや、利益率や市場シェアなどの観点からその企業が競争優位性を有しているかどうかも参考にすると良いように思われます。

もちろん、著者が書いているように、今後の成長性が期待できる要素を企業が持っているかどうかも重要な判断材料になります。

そのように考えると、投資したいと思える企業はかなり限られてきてしまいますが、選別基準をどこまで厳しくするかは投資家次第でしょう。

選別基準を厳しくしたからと言って、必ずしも成功率が高まるとは限らず、そこが投資の難しいところでもありますが、それよりも、いかに自分が納得して、その戦略や企業に資金を投じるかが大事ではないかと考えています。

 

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