読書録・書評

【読書録・書評】『財産づくりの株式投資―売買の基礎の基礎』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書は、相場師として名を上げ、生涯を通じて個人投資家教育にも尽力した、林輝太郎氏による著作です。

本書は林氏の書籍の中でも、どちらかというと出版年月日が新しい方であることもあり、同氏の株式投資に関する書籍のエッセンスをまとめたような内容の一冊となっています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 1:相場の考え方
  • 2:投資活動と流儀
  • 3:相場技法というもの
  • 4:練習と上達について
  • 5:財産をつくるために

ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。

2.相場の考え方

一般の投資家がなかなか成果をあげられない原因として、次のようなものが挙げられています。

  1. 資料(グラフを含む)・場帖・玉帖の不備
  2. 独学の弊害:わがまま・手間を惜しむ・間違った筋道にのめり込んでも気づかない、の3つを、経験年数とともにますます強くしてゆく。

2.の独学に関して、一般投資家の勉強は、評論家になるための勉強に片寄っていると言います。

そして、実践家になるための勉強こそ最も必要であり、それは、変動感覚(広くいえば相場感覚)を養成することと、波のりのやりかたを覚え、上達することであると言うのです。

つまり、株式売買というのは、一発必中の狙いうちや、「当てもの売買」ではなく、技術的要素のあるものだということです。

3.一般投資家の誤解

一般の投資家が「当てもの売買」に片寄っている例として、次のようなことが書かれています。

株のパソコン売買のオタクが、確率の高い売買法を創作あるいは発見しようと日夜涙ぐましい努力をしているが、それは明らかに絶対不可能な命題に向かっている無駄な努力なのであるが、それに熱中している人にはいくら言ってもわからないらしい。

また、情報に関しても次のように書かれています。

不特定多数への情報はすべて発信者に有利、受信者に不利になるわけで、発信者が自分に不利な情報を発信することは絶対にあり得ないのである。

「会社情報」や「会社四季報」には、現状分析から来期、来々期の業績予想が載っているが、こういう分析や予測は第三者(アナリスト)がするべきであり、世界の常識はそうであるが、日本に関しては次のように書かれています。

日本では、当該企業がアンケートに記入する方式で作成されているから、当該企業に不利になることは記載されないし、売上げ、利益などの業績予想は当該企業の宣伝的あるいは希望的数字が載ることになる。これを情報の土台とするのは世界の非常識である。

4.道具の準備

株式売買は、技術的要素のあるものと書きましたが、「売買の上手下手は変動感覚と売買技法によって決まる」と書かれています。

このうち前者の変動感覚を養うために必須となるのが、冒頭でも書いた、資料(グラフを含む)・場帖・玉帖になります。

本書では、これらの記入の仕方についてそれぞれ具体的に示されており、その見本も載せられています。

例えば、グラフについての部分を一部抜粋すると、次のように書かれています。

終値の折れ線グラフ。1ミリ方眼紙の大きなもの(全紙。タテ1000ミリ、ヨコ700ミリ)を使用する。折りたたんでもよいが、巻いたほうがよい。キザミは、1円を1ミリ。100円ごとに(10センチ)鉛筆でわかりやすく線を入れる。横には1日に2ミリ移動。月替わりにはタテに鉛筆で線を入れる。

5.売買技法

売買技法については、「分割売買」と「時期選択(時期を待つ)」であると書かれています。

この「分割売買」というのは、いわゆるナンピンのことになります。

ナンピンというのは、とかく否定されがちなものではありますが、本書ではナンピンについて次のように書かれています。

筆者がこの相場の社会に入ったのは1948年だから、もう50年以上になるが、ナンピン否定論者で成功した人を見たことがない。

そもそもナンピンをして成功しない場合は、最初から計画的にナンピンをしなかったからである。建て玉が引かされたから、くやしくて、しかたなくナンピンをするからである。無計画で資金を考慮せず、意地になってするナンピンが成功するはずはないではないか。

また、次の記載は、ナンピンに際して念頭に置いておくべきものだと言えます。

天井はとんがっており、底はゆるやか、なのが普通であるから、荒い動きの天井のときにこそナンピンは有効で(手仕舞いでも新規でも)、底においては、たとえば底に近づいたと見てナンピン買いを計画的に始めても、長い底練りの期間を考えると途中で嫌になってしまうから、底においては「底練りの動きに入って」からナンピンで分割するか、底練り終了近いとみて押し目を買い下がる(ナンピン買い下がり)のがよいのである。

6.総括

ここで本書をご紹介する前に、林氏の書籍については、以下のものをレビューしてきました。

林氏自身も認めていますが、ここでご紹介した本書も含めて、これらの書籍では内容が重なる部分が散見されます。

そういったこともあり、これらの書籍を全て読むというのはなかなか難しいかもしれませんので、この中からどれか一冊だけをもし選ぶとしたら、ここで取り上げた本書をお勧めしたいと思います。

というのも本書では、これらの書籍に書かれている内容のエッセンスがよくまとめられており、また場帖や玉帖、グラフの具体的な記入方法などについても詳細に書かれているためです。

そして、もし余裕があるようでしたら、上記の他の書籍のレビューも参考にしていただきながら、気になったものも是非読んでいただければと思います。

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