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【2022年12月末時点】ケン・フィッシャー氏率いるフィッシャー・インベストメンツの最新ポートフォリオ

1.フィッシャー・インベストメンツ率いるケン・フィッシャー氏

今回は、ケン・フィッシャー(ケネス・ローレンス・フィッシャー)氏が率いる、フィッシャー・インベストメンツの2022年12月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。

ケン・フィッシャーは、故フィリップ・A・フィッシャーを父に持ち、米国有数の著名投資家であると同時に、米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者でもあります。

なお、フィリップ・A・フィッシャーは、ウォーレン・バフェットが師と公言し、成長株投資の礎を築いた伝説的投資家です。

そして、ケン・フィッシャーは、フォーブス誌に「ポートフォリオ・ストラテジー」というコラムを1984年から長期連載しており、投資に関する著書も数多くあります。

中でも、『Super Stocks』(邦訳:『ケン・フィッシャーのPSR株分析』)では、PSRの有効性をケン・フィッシャーが初めて提唱したと言えます。

ただ、このPSRに関しては、その後の『The Only Three Questions That Count』(邦訳:『投資家が大切にしたいたった3つの疑問』)の中で、広く知れ渡ったことによりPSRは機能しなくなったと述べています。

また、同書には、他人には知ることのできない優位性を継続的に発見し、投資判断を常に改善・修正していくための方法が書かれており、その深い洞察力には驚かされます。

2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務

さて、ケン・フィッシャーに限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。

これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。

この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。

ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。

また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。

さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。

つまり、2月中旬頃までには、著名投資家たちの22年12月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。

3.フィッシャー・インベストメンツのポートフォリオ

それでは早速、フィッシャー・インベストメンツの2022年12月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位24銘柄を示しています。)

ケン・フィッシャー氏の2022年12月末のポートフォリオを示した図

また、この四半期前の2022年9月末のポートフォリオを示したのが下図になります。

ケン・フィッシャー氏の2022年9月末のポートフォリオを示した図

この両者間の違いを際立たせるために、ポートフォリオ全体に対する影響度の大きかった銘柄を中心に見ていくことにしたいと思います。

4.ポートフォリオへのインパクトが大きかった銘柄と総括

まず、22年10月から12月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する増加率が0.18%以上であった銘柄について見ていきます。

ティッカー 銘柄名 増加率(%) 組入比率(%)
VCIT Vanguard Intermediate-Term Corporate Bond ETF 0.56 2.94
SPTL SPDR Portfolio Long Term Treasury ETF 0.38 1.01
SQ Block Inc 0.29 0.48
AMD Advanced Micro Devices Inc 0.28 1.13
SMH VanEck Vectors Semiconductor ETF 0.23 0.24
VGT Vanguard Information Technology ETF 0.20 0.22
XLC Communication Services Select Sector SPDR Fund 0.19 0.19
FDN First Trust Dow Jones Internet Index Fund 0.18 0.19

また、同期間で、ポートフォリオ全体に対する減少率が0.18%以上であった銘柄についても見ていきます。

ティッカー 銘柄名 減少率(%) 組入比率(%)
LQD iShares iBoxx USD Investment Grade Corporate Bond ETF -0.50 1.11
TLT iShares 20+ Year Treasury Bond ETF -0.37 0.02
MRVL Marvell Technology Inc -0.33 0.03
META Meta Platforms Inc -0.27 0.74
IGV iShares Expanded Tech-Software Sector ETF -0.27 0.60
PYPL PayPal Holdings Inc -0.26 0.65
NVDA NVIDIA Corp -0.19 0.99

これらの表から、社債ETFの「LQD(米ドル建て投資適格社債 ETF)」と「VCIT(米国中期社債 ETF)」を概ね同量ずつ入れ替えたような形となっていることが分かります。

両者の大きな違いとしては、「LQD」構成銘柄のの加重平均残存期間は10年超と長期銘柄の組み入れが多くなっているのに対し、「VCIT」では5~10年の米国社債が対象となっていることと、信託報酬率がそれぞれ0.14%、0.05%であるということです。

また、米国長期国債ETFの「TLT(米国国債20年超 ETF)」と「SPTL(米国長期国債 ETF)」もほぼ同量ずつ入れ替えています。

この両者に関しては、平均のデュレーションがともに20年弱とほぼ変わらず、信託報酬率が前者では0.15%、後者では0.06%となっているくらいの違いになります。

さらに、「IGV」を売って「VGT」を買っていますが、これらはともにハイテク関連銘柄に投資するETFで、値動きも似通ったものとなっていますが、やはり信託報酬率がそれぞれ0.46%、0.10%となっています。

そう考えると、似たような銘柄はより経費率の低いものに切り替えたという面が大きそうです。

他には、「SMH」という半導体関連銘柄のETFや「XLC」というコミュニケーション・サービスセクターのETF、「FDN」というインターネット関連銘柄のETFが買われています。

ここで、「SMH」では「NVDA(エヌビディア)」が構成銘柄の1割ほどを占め、「XLC」では「META(メタ・プラットフォームズ)」が2割ほど、「FDN」では「META」が8%ほど、「PYPL(ペイパル)」が3.5%ほどを占めていることから、ポジション調整のためにこれらの銘柄が売られたものと思われます。

このように、22年10月から12月末までの間におけるフィッシャー・インベストメンツのポートフォリオ・マネジメントは、銘柄の入れ替えが目立ち、それ以上の際立った特徴には乏しかったと言えます。

つまり、同ポートフォリオが依然としてハイテク関連銘柄へのエクスポージャーが高いことに変わりはありません。

そして、この2月上旬に発表された米国の経済指標が強かったことで、FRB(米連邦準備制度理事会)は市場がそれまで想定していたよりも政策金利を上げざるを得ないのではないかとの観測が高まっています。

そうなると当然、ハイテク関連銘柄にとっては逆風となりますが、そのような状況下でフィッシャー・インベストメンツがどのようなポートフォリオ・マネジメントを見せるのかが今後の注目点となってくるでしょう。

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