相場のデータ・指標

【2022年6月末時点】レイ・ダリオ氏率いるブリッジウォーター・アソシエイツの最新ポートフォリオ

1.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務

今回は、ヘッジファンド界の帝王とも呼ばれるレイ・ダリオ氏が率いる、世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの2022年6月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。

ちなみに、レイ・ダリオ氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。

これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。

この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。

ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。

また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。

さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。

つまり、この22年8月中旬には、著名投資家たちの22年6月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。

2.ブリッジウォーター・アソシエイツのポートフォリオ

それでは早速、ブリッジウォーター・アソシエイツの2022年6月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では、組み入れ比率の上位22銘柄を示しています。)

ブリッジウォーター・アソシエイツの22年6月末時点でのポートフォリオ

また、この四半期前の2022年3月末のポートフォリオを示したのが下図になります。

ブリッジウォーター・アソシエイツの22年3月末時点でのポートフォリオ

この両者間の変化を際立たせるために、ポートフォリオ全体に対する影響度の大きかった銘柄を中心に見ていくことにしたいと思います。

3.ポートフォリオへのインパクトが大きかった銘柄と総括

まず、22年4月から22年6月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する増加率が0.25%以上であった銘柄について見ていきます。

ティッカー 銘柄名 増加率(%) 組入比率(%)
IVV iShares Core S&P 500 ETF 0.92 2.73
CVS CVS Health Corp 0.76 1.24
MA Mastercard Inc 0.60 0.65
GOOGL Alphabet Inc 0.43 0.45
META Meta Platforms Inc 0.39 0.40
PYPL PayPal Holdings Inc 0.35 0.38
WMT Walmart Inc 0.34 2.42
BRK.B Berkshire Hathaway Inc 0.31 0.66
BKNG Booking Holdings Inc 0.31 0.33
XOM Exxon Mobil Corp 0.28 0.69
COP ConocoPhillips 0.27 0.41

次に、22年4月から22年6月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する減少率が0.25%以上であった銘柄についても見ていきます。

ティッカー 銘柄名 減少率(%) 組入比率(%)
EEM iShares MSCI Emerging Markets ETF -3.31 0.24
BABA Alibaba Group Holding Ltd -3.28 0(完全売却)
VWO Vanguard FTSE Emerging Markets ETF -1.36 2.72
GLD SPDR Gold Shares ETF -0.59 0.93
JD JD.com Inc -0.50 0(完全売却)
LIN Linde PLC -0.29 0.06
ACN Accenture PLC -0.29 0(完全売却)
KO Coca-Cola Co -0.28 2.89
CERN Cerner Corp -0.26 0(完全売却)

ブリッジウォーター・アソシエイツにおける2022年6月末時点でのポートフォリオの構成銘柄は987銘柄にもなるため、まずは全体像について触れておきます。

ポートフォリオ全体で、セクター別に前四半期からの目立った変化を見ると、エネルギーが1.4→3.2%、コミュニケーション・サービスが2.2→3.8%、ファイナンシャル・サービスが4.2→7.3%となっていました。

これを踏まえて上の表を見ていくと、エネルギーでは、XOM(エクソン・モービル)やCOP(コノコフィリップス)といった石油・ガス関連銘柄の買い増していることが見て取れます。

また、コミュニケーション・サービスでは、GOOGL(アルファベット)やMETA(メタ・プラットフォームズ)が、ファイナンシャル・サービスでは、MA(マスターカード)やPYPL(ペイパル)、BRK.B(バークシャー・ハサウェイ)の買い増しが大きく寄与していると予想されます。

一方、減少率の大きかった銘柄では、EEMやVWOといった新興国株式や、BABA(アリババ)やJD(JDドットコム)といった中国の電子商取引企業が目立ちます。

22年4月から6月末までの間は、インフレ率の亢進から利上げペースの拡大機運が高まっていた最中でしたし、ウクライナ紛争や中国のロックダウン(都市封鎖)などから、エネルギー関連銘柄を買い、新興国株や中国株を売るというのは、ごく自然な売買に思われます。

また、METAやPYPLの株価は、同期間で50%近くと大きく下落していましたので、逆張り的な買い増しの可能性が高いでしょう。

そして、ブリッジウォーター・アソシエイツでは、22年1月から22年3月末の間に、株式の総保有額を172億ドルから248億ドルへと急増させ、22年6月末時点でも236億ドルと、過去10年から見るとかなりの高水準を維持しています。

ただ、22年7月以降のパフォーマンスは、S&P 500に劣後しており、その差も拡大傾向となっています。これは、ハイテク関連銘柄が想像以上に息を吹き返したことによるものと思われますが、ブリッジウォーター・アソシエイツが今後どのようにリカバリーしていくのかに注目です。

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