相場のデータ・指標

【2022年12月末時点】レイ・ダリオ氏率いるブリッジウォーター・アソシエイツの最新ポートフォリオ

1.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務

今回は、ヘッジファンド界の帝王とも呼ばれるレイ・ダリオ氏が率いる、世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの2022年12月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。

なお、レイ・ダリオ氏は2022年9月末にブリッジウォーター・アソシエーツの経営権を取締役会に移管し、共同CIO(最高投資責任者)から退きました。

今後は、ニア・バー・ディア氏とマーク・ベルトリーニ氏が共同CIOを務めるとのことです。

さて、ブリッジウォーター・アソシエーツに限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。

これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。

この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。

ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。

また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。

さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。

つまり、この23年2月中旬には、著名投資家たちの22年12月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。

2.ブリッジウォーター・アソシエイツのポートフォリオ

それでは早速、ブリッジウォーター・アソシエイツの2022年12月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では、組み入れ比率の上位22銘柄を示しています。)

ブリッジウォーター・アソシエイツの22年12月末時点でのポートフォリオ

また、この四半期前の2022年9月末のポートフォリオを示したのが下図になります。

ブリッジウォーター・アソシエイツの22年9月末時点でのポートフォリオ

この両者間の変化を際立たせるために、ポートフォリオ全体に対する影響度の大きかった銘柄を中心に見ていくことにしたいと思います。

3.ポートフォリオへのインパクトが大きかった銘柄と総括

まず、22年10月から22年12月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する増加率が0.15%以上であった銘柄について見ていきます。

ティッカー 銘柄名 増加率(%) 組入比率(%)
IVV iShares Core S&P 500 ETF 0.64 4.33
JPM JPMorgan Chase & Co 0.51 0.51
BAC Bank of America Corp 0.35 0.58
C Citigroup Inc 0.32 0.32
BRK.B Berkshire Hathaway Inc 0.19 0.61
WFC Wells Fargo & Co 0.17 0.39
SCHW Charles Schwab Corp 0.17 0.28
GS The Goldman Sachs Group Inc 0.16 0.19
CMCSA Comcast Corp 0.15 0.31

次に同期間で、ポートフォリオ全体に対する減少率が0.3%以上であった銘柄についても見ていきます。

ティッカー 銘柄名 減少率(%) 組入比率(%)
PG Procter & Gamble Co -1.04 4.13
JNJ Johnson & Johnson -0.95 3.44
KO Coca-Cola Co -0.86 2.92
PEP PepsiCo Inc -0.83 2.98
COST Costco Wholesale Corp -0.63 2.34
MCD McDonald’s Corp -0.62 2.27
PDD PDD Holdings Inc -0.45 1.62
MA Mastercard Inc -0.43 0.53
ABT Abbott Laboratories -0.42 1.33
WMT Walmart Inc -0.41 2.63
MSFT Microsoft Corp -0.36 0.02
GOOGL Alphabet Inc -0.35 0.36
V Visa Inc -0.34 0.95
ABNB Airbnb Inc -0.32 0.06
QCOM Qualcomm Inc -0.30 0.06

これらの表からは、金融関連銘柄を買い、消費関連銘柄を売っているのが目立ちます。

いわゆるディフェンシブ銘柄と呼ばれるような銘柄を多く売っていることから、景気後退の懸念は弱まったと考えているのかもしれません。

また、「MSFT(マイクロソフト)」「GOOGL(アルファベット)」に加え、この表には載っていませんが、「META(メタ)」や「AAPL(アップル)」といったハイテク関連銘柄も割と多く売っています。

景気後退懸念が弱まったとしても、当面は政策金利が高止まりすることは避けられそうになく、ハイテク関連銘柄にとっては逆風になるとの判断なのでしょう。

そして、金融関連の中でも商業銀行にとっては、金利上昇が利ザヤの改善につながるため、それらの銘柄を購入したというのは想像がつきます。

ただ、「GS(ゴールドマン・サックス)」のような投資銀行はM&Aの減少などにより厳しい収益環境が続きそうなことを考えると、買いづらいように思ってしまいます。

さらに商業銀行に関しても、高金利が長引くようだと、住宅ローン関連の収益減や、景気後退から貸倒引当金などの与信費用が拡大する懸念が高まります。

ポートフォリオ全体の時価総額は、前四半期とそれほど変わっていませんが、この22年10月から22年12月末までの売買銘柄を見る限りでは、守りを固めつつ、キャピタルゲインを狙いにいっているような印象です。

この3ヵ月間のポートフォリオ・マネジメントが吉と出るのか凶と出るのか、今後の展開に注目したいところです。

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