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【2022年3月末時点】チェース・コールマン率いるタイガー・グローバル・マネジメントの最新ポートフォリオ

1.チェース・コールマン率いるタイガー・グローバル・マネジメント

今回は、チェース・コールマン氏が率いる、タイガー・グローバル・マネジメントというヘッジファンドの2022年3月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。

チェース・コールマン氏は、2020年のヘッジファンドマネジャーの収入ランキングで首位となっており、30億ドルを稼いだとされます。

また、チェース・コールマン氏は、以下に示すように、2010年12月末の時点で、アップル(AAPL)株のポートフォリオへの組み入れ比率をトップとしていたのです。

チェース・コールマン氏の2010年12月末のポートフォリオを示した図

これは、アップル株が本格的な上昇を開始するよりもかなり前でした。

他にも、FacebookやLinkedInには初期の頃から投資していたりと、同氏の先見の明には驚かされます。

2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務

さて、チェース・コールマン氏に限りませんが、上記のように著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。

これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。

この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。

ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。

また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。

そして、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。

つまり、この22年5月中旬には、著名投資家たちの22年3月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。

3.タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオ

それでは早速、タイガー・グローバル・マネジメントの2022年3月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位15銘柄を示しています。)

チェース・コールマン氏の2022年3月末のポートフォリオを示した図

また、この四半期前の2021年12月末のポートフォリオを示したのが下図になります。

チェース・コールマン氏の2021年12月末のポートフォリオを示した図

この両者の違いを際立たせるために、22年3月末時点でのポートフォリオの上位15銘柄について、各銘柄の組み入れ比率や、前四半期からの保有株数の増減率、ポートフォリオ全体への影響度を示したのが、以下の表になります。

ティッカー 銘柄名 増減率(%) 組み入れ比率(%) 全体への影響度(%)
JD JD.com Inc -9.22 10.59 -0.76
MSFT Microsoft Corp -13.79 8.46 -0.86
CRWD CrowdStrike Holdings Inc 16.87 7.51 1.08
NU Nu Holdings Ltd -4.21 7.38 -0.23
SE Sea Ltd 18.7 6.08 0.96
SNOW Snowflake Inc 13.64 5.88 0.71
NOW ServiceNow Inc 10.82 5.11 0.5
CVNA Carvana Co 17.46 3.82 0.57
DASH DoorDash Inc -29.58 3.61 -1.12
FB Meta Platforms Inc -22.77 3.26 -0.84
WDAY Workday Inc -29.45 2.68 -0.74
SHOP Shopify Inc 13.55 2.32 0.28
RNG RingCentral Inc 0 2.18 0
TEAM Atlassian Corporation PLC -28.96 1.93 -0.59
LI Li Auto Inc 167.35 1.92 1.2

さらに、22年1月から3月末までの間に、ポートフォリオ全体に占める割合が増減した上位5銘柄をそれぞれ示したのが次の表です。

ティッカー 銘柄名 増減率(%) 組み入れ比率(%)

全体への影響度(%)

LI Li Auto Inc 167.35 1.92 1.2
MNDY Monday.Com Ltd 937.92 1.23 1.11
CRWD CrowdStrike Holdings Inc 16.87 7.51 1.08
SE Sea Ltd 18.7 6.08 0.96
XPEV XPeng Inc 120.33 1.42 0.78
ティッカー 銘柄名 増減率(%) 組み入れ比率(%) 全体への影響度(%)
ZM Zoom Video Communications Inc -83.04 0.46 -2.03
UBER Uber Technologies Inc -93.1 0.17 -1.54
AMZN Amazon.com Inc -58.18 1.81 -1.49
NFLX Netflix Inc Sold Out 0 -1.42
PDD Pinduoduo Inc -63.43 0.87 -1.27

4.チェース・コールマンのポートフォリオ・マネジメントと総括

以上から、MSFT(マイクロソフト)やFB(メタ・プラットフォームズ)、AMZN(アマゾン)、NFLX(ネットフリックス)といった、いわゆる大型のハイテク株を大きく減らしていることが分かります。

一方で、CRWD(クラウドストライク)やNU(ヌー)、SE(シー)、SNOW(スノーフレーク)のような、売上は拡大しているものの、赤字を垂れ流しているハイテク株に対しては、依然として高いエクスポージャーを維持しています。

また、タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオは、2017年後半頃より全体に占めるハイテク株の割合が増加の一途をたどり、22年3月末時点では、52.6%を占めるまでになっています。

そして、FRB(米連邦準備制度理事会)は、5月4日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.5%の利上げを決定しており、さらに6月・7月のFOMCでも同じ幅の利上げを示唆しています。

加えて、6月からはQT(量的引き締め)の実施も決定されています。

こうした状況下では、投資家が将来の成長よりも、目先の確実な利益を重視する傾向が高まることが予想され、ハイテク株やその中でも特に赤字を垂れ流しているような企業の株価にとっては、強い逆風となるはずです。

実際、既にタイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオは、その銘柄構成に変化がなかったとすると、22年3月末から直近の5月中旬までに3割程度のマイナスとなっており、1割程度のマイナスとなっているS&P 500を大きくアンダーパフォームしています。

今後、インフレが落ち着きを見せなければ、FRBによる金融引き締めが一段と強まることもあり得ます。

一方で、インフレの大きな要因となっている供給制約が徐々に解消されてくれば、ハイテク株への逆風が弱まることも十分に考えられます。

そういった意味では、チェース・コールマンは今まさに難しい舵取りを迫られていると言え、この先どのようなポートフォリオ・マネジメントを行っていくのか興味深いところです。

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