読書録・書評

【読書録・書評】『10万円から始めて資産を200倍にする小型成長株投資』

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書では、サラリーマン投資家として、13年間で投下した2000万円を、株式投資で3.5倍の7000万円にまで増やしたという著者が、その投資戦略について書いています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 序章:株式投資は実績(証拠)こそがすべて
  • 第1章:サラリーマンだけでは資産はつくれない
  • 第2章:二流投資家が投資で失敗する8つの理由
  • 第3章:できる二流投資家になるための心得
  • 第4章:さあ、成長株投資を始めよう
  • 第5章:成長株投資に挑戦してみよう
  • 第6章:成長株投資は財務諸表を攻略しよう
  • 第7章:成長株のポートフォリオを組もう
  • 第8章:”今日”からできる二流投資家への道

2.株式投資のすすめと注意点

第1章では、「人件費は経費」が企業にとっての本音であり、サラリーマンだけでは資産はつくれないといったことなどから、株式投資を勧める理由について書かれています。

その中で、不動産投資についても触れられています。

不動産投資は相対取引であるため、常にチャンスは転がっているものの、鮮度の高い情報に接することができる人たちだけに情報が回って売買が成立してしまい、一般の人には話が回ってこないと述べています。

次に第2章では、二流投資家が投資で失敗する8つの理由として、以下のものが挙げられています。

  1. 仕掛けられた罠に引っかかっているから
  2. 余裕がない状態で投資をしているから
  3. タネ銭を本気で貯めていない
  4. 市況を見れば株価を予測できると思っている
  5. 集中投資をしてしまう
  6. 感情に流されてしまう
  7. 専門家の意見を信じてしまう
  8. 常識にとらわれている

なお、本書では決してネガティブな意味合いで二流投資家という言葉を使っているわけではなく、サラリーマン投資家は二流投資家でいいというスタンスで書かれています。

3.投資家の心得

そして第3章では、「二流投資家とはズバリ、負けない投資家、粘り強くあきらめの悪い投資家になることです。」と説明されています。

また第3章は、「できる二流投資家になるための心得」という内容で、成長株に投資して、見込み通り株価が上昇していくタイミングを正確に予想することは不可能だと言います。

さらに、結果的に上昇する銘柄でもその過程で1~2年程度横ばいでウロウロすることはよくあることであり、長期スタイルでの株式投資でいきなり儲かることはないと構えておけば、すぐに株価が上がらなくても心配にはならないとも述べられています。

他にも第3章では、以下のことなどについて言及されています。

  • 10倍株になるような大化けする銘柄は、意外にも自分の身の回りで見聞きしている銘柄だったりするので、身の回りのことに興味を持とう。
  • 個別株投資では投資信託に比べて様々なことを勉強しなければならない。‥市場動向、会社のビジネスモデル研究、財務諸表の読み方、資金管理、既存事業の環境・新規事業の動向など。

4.小型成長株投資の概要

さて、第4章から本題の成長株について書かれています。

まず、成長株投資とは、「将来的に継続的に成長が見込まれる銘柄の中で、将来の価値に対して割安に株価が付けられている銘柄を探し出し、長期間保有することで、会社の成長による株価の大幅な上昇を享受する投資手法」だと定義しています。

また、大きく化ける成長株は株価上昇が開始した時点で当初の時価総額が300億円未満のことが多いため、時価総額としては「300億円未満」の株を狙うと言います。

これを踏まえた上で、しっかりとした業績の裏付けを持っている銘柄を購入し、長期的に見てリスクを限定しつつ、一発当てて株価が上昇するのを狙うとのことです。

さらに第5章では、成長株の探し方と探す際の条件について書かれています。

成長株を探すステップとしては、以下の5つが挙げられています。

  1. 証券会社のスクリーニング機能
  2. 個人投資家のブログ、YouTube、Twitter
  3. 投資信託の月次報告書
    著者のセミナーでは、「みんなの株式(https://itf.minkabu.jp/)の投資信託サイトを参考にして評価の高い投資信託を探し、注目している投資信託が組み入れている銘柄を気軽に探すことをしているとのこと。
  4. 新聞、株式投資の雑誌、オンラインメディア、本の見方
  5. 実際に自分が使っているサービスは活用する

続いて、成長株を探す条件としては、次の5つを参考にしているとのことです。

  1. オーナー企業であること
  2. 上場10年未満であること
  3. ビジネスモデルがユニーク (10年後も必要なサービスを提供している)
  4. 時価総額300億円未満の企業
  5. 増収増益を続けている

なお、著者は投資をする上で判断すべきバランスとして、「オーナーのチェックを2割、財務諸表を6割、そのほかの要素を2割」と見ていると言います。

ここでは割愛しますが、第6章では、その財務諸表について、損益計算書や貸借対照表の基本的な内容が解説されています。

5.ポートフォリオマネジメント

第7章は、ポートフォリオマネジメントに関する内容で、以下のようなことについて触れられています。

  • 成長株を5~10銘柄くらいに分散する。
  • 銘柄の買付・売却は、同じ銘柄でも分散して投資していく。‥過去のPERの基準を参考に。
  • 成長株で大きなキャピタルゲインを狙う一方で、配当株から得られる配当金や給料の天引き、貸株料などの収入で新規投資ができるだけのキャッシュをつくる。
  • 最初は成長株投資でポートフォリオを組み立て、軌道に乗ってきたら配当株を少しずつ組み入れていく。その際には、成長株は集中投資、配当株は分散投資を心掛ける。

そして、第7章の最後に、成長株への長期投資としてはお勧めしない株として、次のようなものが挙げられています。

  1. インフラ関係の銘柄(ガス、電力、鉄道、航空会社など)
    インフラ関連銘柄の特徴は、利用料金や運賃が法律で定められている。
  2. 携帯電話関連の銘柄
    こうしたインフラ系の銘柄は、株価の変動が少なく配当金狙いの銘柄となる。
  3. バイオ関連の銘柄
  4. ゲーム関連の銘柄
  5. 人材派遣関連の銘柄
    景気が冷え込むと人を採用する動きが一気に鈍り、派遣業界は一時的に縮んでしまうことが予想される。
  6. カタカナ系ワンルームマンションディベロッパー関連の銘柄
    不況になって不動産価格が下落したり、金利上昇で収益を圧迫したりするリスクを常に抱えている。
  7. パチンコ関連の銘柄
    株価が上昇するには機関投資家の継続的な買いが必要だが、機関投資家はこの業界の株を組み入れることがコンプライアンスの観点から難しい。

6.総括

本書の成長株投資の手法は、類書によくあるような内容とほとんど変わらないように感じました。

本書の中では、著者自身のポートフォリオが公開されていますが、その保有銘柄を見ると、新興株やかなり割高な成長株が多い印象を受けました。

現状のような金融相場では、そうした銘柄に追い風が吹いているような状況だと言えますが、金利上昇などで相場環境が変化した際には、元々が割高であるだけに株価が急落するリスクも高くなります。

そのため、こうした投資戦略では損切りが大事になってきますが、本書では損切りに関して、「プラスの銘柄を残して、マイナスの銘柄から先に処分する」といった程度のことしか書かれていません。

また、利益確定の売りについても触れられていませんが、基本的に業績が良く、株価が上がり続けている銘柄は保有し続けるというスタンスなのだと思われます。

そもそも、買う前の銘柄選択の基準が緩いこともあり、その時の相場環境によっては、損切りの嵐になることも想定されます。

著者自身も、次第に配当株を組み入れるなどして、安定的に運用することを考えていると述べているように、そうした守りの投資なくしては、長期にわたって相場で生き残るのは難しいのではないかと考えられます。

ですから、本書にある投資手法を実践するにしても、これだけではなく、守りの運用手法についても他の書籍などで学ぶ必要があると言えるでしょう。

 

 

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