読書録・書評

【読書録・書評】『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円 実践バイブル』

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書は、2019年末に刊行され、当ブログでもレビューしていた、『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円』という書籍の実践版という位置付けになります。(リンク先は当ブログのレビュー記事になります。)

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • Prologue:小型株集中投資はトレード(投機)ではない!
  • STEP1:大事なのは「株価」でなく「時価総額」
  • STEP2:「投資戦略」をつくってみよう
  • STEP3:「値上がり株」の見つけ方
  • STEP4:勝つ投資家は情報を「捨てる」
  • STEP5:必要最小限の株価チャートの見方
  • STEP6:株を買った後はどうすればいい?
  • STEP7:保有株が暴落したらどうすればいい?
  • Epilogue:コロナショックの裏側

2.投資戦略の構築

まずSTEP1では、時価総額について触れられており、小型株集中投資では、時価総額300億円以下を主な投資対象にするとあります。

また、全部が揃ったら買いとなる3つのポイントとして、以下のものが挙げられています。

  • 株価3倍(=時価総額3倍)になるポテンシャルがある
  • 商品・サービスのニーズが高い
  • 「出来高」増加をともなう株価上昇の直後

次のSTEP2では、投資前に想定しておくこととして、4つの観点から次のものを挙げています。

  • 全体的な投資イメージ
    • 投資する理由は?
    • 展開するビジネスの市場規模は?
    • 投資期間はどのくらいか?
    • 時価総額の上限はどのくらいか?
    • 時価総額の下限はどのくらいか?
    • 損失リスクの許容範囲は何%で、何%のリターンを狙うか?
    • 投資の期待値はプラスか?
  • 予想通り株価が上がったとき
    • 株を持ち続けるとしたらどんな条件を満たしたときか?
    • 株を売るとしたらどんな条件を満たしたときか?
  • 予想より株価が伸びないとき
    • 株を持ち続けるとしたらどんな条件を満たしたときか?
    • 株を売るとしたらどんな条件を満たしたときか?
  • 予想に反して株価が下がったとき
    • 株を持ち続けるとしたらどんな条件を満たしたときか?
    • 株を売るとしたらどんな条件を満たしたときか?
    • 問答無用で売るときはどんなときか?

また、投資戦略を作るには、そもそも投資したい会社のことを十分に理解しておく必要があり、その会社が展開しているビジネスの内容はもちろん、「市場規模」「競合他社」「株主構成」「事業リスク」などを広く知っておく必要があると書かれています。

このように、一つひとつ丁寧に調べて大事に投資していくことで、成功確率が高まると言います。

そして、投資後の伸びしろをはかるために、同じ業界の時価総額トップ10を調べるなどして、市場規模の大まかな規模感を予測するとのことです。

3.株を買うタイミング

STEP3では、株を買うタイミングについて触れられており、基本的な投資のベストタイミングは、「出来高」が増えたうえで、株価が上がり始めたら「買い」だと言います。

また、この「株価が上がり始めたら」というのがポイントだと書かれています。

株価というものは、どれだけ業績が好調で、会社のポテンシャルが高くても、投資家が実際に株を買わないと値上がりしないためです。

そのため、そういった「業績はいいのに、どうも株価が上がらない」という銘柄は、「上がったら買う株リスト」にリストアップしておき、「株価が上昇トレンドに入ってから買う」と考えるとあります。

そして、「上がる株は上がり続け、下がる株は下がり続ける」というのは、株式投資の法則ともいえ、株は「上がり始めたら買う」、「下がり始めたら売る」というのが鉄則であると強調されています。

STEP4では、値下がり後に反発する株の条件について書かれています。

まず、業績が伸び悩んでいる銘柄は、一度下がるとそのままズルズル下がり続ける傾向があるのに対し、業績がしっかりと伸びている銘柄は、短期的に下がっても30%くらい値を下げたところで底打ちして、上昇トレンドに戻るという傾向が強いと言います。

そして、値下がり後に次の3つの条件が同時に成立した時には、株価が反発することが多いとあります。

  • 業績好調でまだ伸びしろのある会社
  • チャートは上昇トレンドが続いている
  • 株価下落の原因が業績とは関係ない

また、中長期的に大きく伸びる銘柄では、30%程度の株価の上げ下げはよくあることであり、株価3倍以上を目指して投資をするときは30%程度の目先の上げ下げは最初からあるものとして心得ておくとも述べられています。

4.株価チャートの見方

STEP5は、株価チャートの見方についてです。

詳細は割愛しますが、日常的には、日足チャートをベースにして、「短期」「中期」「長期」の3本の移動平均線によって株価トレンドを把握するのが、いちばんわかりやすい方法として説明されています。

また、株価チャート上で上昇トレンドが継続中であれば保有し続け、上昇トレンドが終わったと判断したら売るのが基本であると言及されています。

この「上昇トレンドが崩れるタイミング」を判断するサインとしては、以下のものが挙げられています。

  1. 株価が中期移動平均線を割り込んで数日経っても戻らない
  2. 株価が長期移動平均線を割り込んだ
  3. 急騰からの急落の後、株価が戻らない
  4. 短期・中期移動平均線が2本絡まって、しばらく解けない

5.株を買った後

STEP6では、株を買った後の3つの選択肢として、以下のものが示されています。

  • 「目標株価」で判断
  • 「時間軸」で判断
  • 「新しいニュース」で判断

また、買った株が値下がりしたときは、「さっさと売る」のが基本であり、ナンピン買いについては「いちばんやってはいけないこと」だと述べられています。

STEP7では、株価暴落について触れられています。

まず、株価暴落の予兆として、次の4つが挙げられています。

  • 株価が急騰したとき
  • 信用買いが増えすぎたとき
  • 素人が買い始めたとき
  • 人の行動が変化したとき

続いて、株価暴落のパターンとして、大きく次の2つに言及しています。

  • 特定の株が暴落する
    • 業績に影響なく一時的な需給変化の値下がり:保有継続
    • 業績に深刻な影響が出る値下がり:売る
  • すべての株が暴落する
    • 不景気でも上がる株というのも存在する。

6.総括

冒頭にも書いたように、本書は前著の実践版という位置付ですが、前著同様にもっともらしいことが書かれてはいるものの、具体性に欠け、実践ではほとんど役に立たないようなものばかりであると感じました。

本書で書かれている小型株集中投資を、前著や本書だけを読んで実践するような投資家はまさかいないだろうとは思いますが、そんなことをしたら、相場から退場させられるのは時間の問題となるでしょう。

前著のレビュー総括に書いた内容と重なるため、ここではあまり多くを書きませんが、よろしければ以下のレビュー記事の総括部分をご参照いただければと思います。

パンローリングから出版されている海外の投資書籍を読んだことのある方であれば、ご同意していただけるかと思いますが、このような本が未だに出版されていることがただただ残念でなりません。

 

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