1.債券の格付けの仕組み
最近では、SPAC(特別目的買収会社)ブームが指摘されることが多くなっていますが、低格付け債(ハイイールド債)も過熱感が強くなっています。
本題に入る前に、まずは債券の格付けについて簡単に触れておきたいと思います。
債券の格付けには、最も信用力の高い「AAA(トリプルA)」から、債務不履行の状態を示す「D」までがあります。
また、一般に「BBB」までが投資適格とされ、「BB(ダブルB)」以下が投機的な水準として低格付け債(ハイイールド債、ジャンク債)と呼ばれるのです。
2.ハイイールド債の利回り低下
そして、ハイイールド債の利回りは低下(価格が上昇)してきており、下図に示すように、足元では4%台前半と過去最低水準にまで低下しています。
これは、相対的に利回りの高いハイイールド債への需要が拡大しているということでしょう。
この背景には、米連邦準備理事会(FRB)が当面はゼロ金利政策を続ける姿勢を示していることや、バイデン政権の大規模な財政支出による景気への回復期待があると考えられます。
また、ハイイールド債の債務不履行(デフォルト)率が、2020年末の7%弱をピークに低下してきていることも挙げられるでしょう。
3.ハイイールド債と米国債の利回り差(スプレッド)
さらに、ハイイールド債と米国債の利回り差(スプレッド)の推移を示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者のスプレッドも過去最低に近い水準にまで低下しているのです。
ちなみに最近では、米10年国債利回り、すなわち米長期金利が上昇していましたが、この米長期金利の上昇は、ハイイールド債の利回り上昇(価格は下落)にもつながるように思えるかもしれません。
ところが実際に、2000年以降の米長期金利上昇局面を振り返ってみると、米長期金利が上昇しても、ハイイールド債の利回りは逆に低下(価格は上昇)しているのです。
この理由としては、長期金利が上昇するのは、景気の回復・拡大期待が高い局面であり、これは信用力の低いハイイールド債にとっては追い風になるためではないかと考えられます。
そのため、米長期金利が上昇しているからといって、ハイイールド債の価格が必ずしも下落(利回りは上昇)するとは限らないのです。
4.ハイイールド債の今後
とはいえ、ハイイールド債の発行額は、かなりの勢いで増加しています。
その発行額は、2019年、2020年と前年比50~60%のペースで増加、2021年1~3月期も前年同期比で2倍以上に増加し、2021年の発行額は過去最高となりそうな勢いなのです。
そして、ハイイールド債の発行企業が2020年に調達した資金の多くは、債務の借り換え目的だと見られています。
コロナ禍で、各国の中央銀行が企業の資金繰りを支援していましたが、これにより本来であれば淘汰されるべき「ゾンビ企業」が延命されたと言われることがあります。
これと同じように、ハイイールド債の発行企業、すなわち低格付け企業は、次に資金の借り換えが必要となった際に、厳しい状況へと追い込まれる可能性が高いと言えます。
少なくとも、ここで見てきたハイイールド債の利回りや、長期金利とのスプレッドからは、ハイイールド債に対して警戒感を高める必要があるのではないかと思われます。