投資戦略・手法・市場展望

グロース株からバリュー株へのグレート・ローテーションは起こるのか?

1.バリュー株が復活!?

今月11月9日に、バリュー株のパフォーマンスがグロース株を大きく上回ったというニュースがありました。

なお、バリュー株というのは、PBRやPER、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)、配当利回りなどから定義されています。

このバリュー株には、現時点では景気敏感株が多く含まれています。

一方、グロース株の主力と言えば、GAFAMやネットフリックス、テスラなどでしょう。

そして、11/16付けのThe Wall Street Journalの『バリュー株の復活、ワクチンで今度こそ本物か』という記事には、以下のような記載があります。

ダートマス大タック経営学大学院のケネス・フレンチ教授が算出しているデータによると、グロース株は14年にわたり、バリュー株をアウトパフォームしており、これはデータの収集が始まった1926年以来、最長だという。平均では、過去1世紀の大半において、バリュー株はグロース株に勝ってきた。

また、この記事では、バリュー戦略への敬遠姿勢が広がっている現状こそが、バリュー株に成功の機会を与える、と締め括られています。

2.グロース株優位の背景

ここで、14年にわたり、グロース株がバリュー株をアウトパフォームした背景について考えると、そこには世界的な金利の低下にあったと言えます。

ちなみに、今月11月上旬に、バリュー株が大きく上がった際には、ファイザーのワクチン報道により、世界経済が回復するとの期待が高まったことから、米国などの長期金利が上昇していました。

金利がグロース株の株価に関係してくるのは、企業価値の算定にDCF法というものが使われることが多いためです。

詳細は省きますが、このDCF法では、企業の将来のEVITDAあるいはFCFの合計を、現在価値に割り引くことで算出されます。

この際の割引率に金利が関係してくるのですが、金利が上昇すれば割引率も大きくなるため、成長株では現在価値が大きく低下してしまうのです。

というのも、成長株では、将来的にEVITDAまたはFCFが大きく増加していくことが見込まれているからです。

3.グロース株とバリュー株の今後の行方

そういったことから、グロース株からバリュー株へと相場の主役が入れ替わるかどうかは、世界的な金利動向、特に米国をはじめとした先進国の長期金利の動向次第だと言えます。

この長期金利は、基本的に景気・経済の先行きを反映して動きます。

そして、世界的にコロナウイルスの勢いは収まるところを知らず、北半球ではこれから本格的な冬に突入することを考えると、長期金利が上昇していくというケースは想定しづらいでしょう。

そうなると、バリュー株の復活はまだ早いのかもしれません。

とはいえ、グロース株の特に主力とも言えるような銘柄は、バリュエーションがかなり高くなっているのも事実です。

それらの銘柄にこれまでのように、投資資金が流入し続ける可能性ももちろんありますが、何か他の資産に向かう可能性もありそうです。

それは金(Gold)だったり、ビットコインだったりするかもしれませんが、株式に比して出遅れているREITが有力ではないかと考えています。

もちろん、株式もバリュー株かグロース株かなどと単純に線引きできるものばかりではなく、個別の銘柄で見れば、有望な銘柄も見出すことができるでしょう。

ただし、バリュエーションの高い成長株に関しては、株価が大きく下がるリスクと常に隣合わせであることを意識し始めなければならない段階に来ていると言えそうです。

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