読書録・書評

【読書録・書評】『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書の原著は、2002年12月発売の『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』で、本書は2014年9月に発売された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015』の文庫版となります。

本書の内容は、「資産運用論」と「マイクロ法人論(法人を使って、税金や社会保険料のコストを最適化する)」の大きく2つに分けられますが、ここでは前者の資産運用について書いていくことにします。

なお、本書の章立ては、次のようになっています。

  • Prologue:1995-2014
    • 「黄金の羽根」ができるまで
  • PART1:人生を最適設定する資産運用の知識
    • 世界にひとつしかないお金持ちの方程式
    • 誰も知らない資産運用の常識
    • 不動産の呪縛を解き放つ法則
    • 生命保険は損をすることに意味がある
    • 見えない「貧困化」が拡がっている
  • PART2:人生を最適設計するマイクロ法人の知識
    • 国家に惜しみなく奪われるひとびと
    • 「個人」と「法人」、ふたつの人格を使いこなす
    • マイクロ法人で人生が変わる
    • 不可能を可能にする奇跡のファイナンス
    • 税金について知りたいほんとうのこと
    • 税務調査の裏と表
  • PART3:人生を最適設計する働き方
    • クリエイティブクラスとマックジョブ
  • Epilogue:新宿中央公園のホームレス

2.お金持ちの方程式

本書ではまず、お金持ちになるための方法は、以下のような数式で表せるとあります。

資産形成=(収入-支出)+(資産×運用利回り)

この方程式からも分かるように、お金持ちになるには次の3つの方法しかありません。

  1. 収入を増やす
  2. 支出を減らす
  3. 運用利回りを上げる

これらのより具体的な内容として、以下のような項目について説明がなされています。

  • 純利益の確保こそが重要である
    • 会社をリストラされて収入がなくなれば、投資の元本を取り崩して生活せざるを得ない。
  • 複利の資産運用では、わずかな利回りの違いが大きな差を生む
  • 十分な元金がなければ運用しても意味がない
  • 収入を増やす確実な方法は働き手を増やすこと
    • 結婚しているのなら、共働きにする。
  • 他人への投資と自分への投資を天秤にかけよう
    • 資産運用の初期においては、金融資産に投資するよりも、人的資本に投資した方が合理的です。
  • サラリーマンが金持ちになる方法は3つある
    • 年収を上げること。
    • ベンチャー企業に就職して、自社株を購入したり、ストックオプションを取得すること。
    • 仕事を発注した業者からキックバックを受け取ること。
  • 確実に金持ちになる方法は支出を減らすこと
  • 家計のリストラは住宅コストと生命保険から
  • 投資のコストに気づかないひとは金持ちになれない
    • 株式投資は、手数料率の低いネット証券を使うべき。
    • 金投資では、貴金属店で金地金を買うと、商品先物市場で金の先物を買うより10%近く割高に、メープルリーフ金貨のような加工品を購入すると、20%も割高になる。売買手数料も、地金で5%程度、金貨で7%程度と法外で、商品先物会社のインターネット取引を使えば、手数料率は0.1%程度。
    • 外貨投資では、ネット銀行やFXなら手数料は、大手銀行の外貨預金の10分の1以下になる。
  • 最速の資産形成法は税金を払わないことである
    • 自営業者(あるいは中小企業の経営者)になって、所得に対して税金を払わない。

3.資産運用の常識

次に、資産運用の常識として、以下のような項目について、それぞれ解説がなされています。

  • 投資をしないのが最高の投資である
    • 長期投資を勧める人たちは、株価が右肩上がりに上昇することを前提にしている。
    • 日本の株価はバブル崩壊以降、下落と上昇を繰り返しているため、古典的な投資理論が通用しなくなった。
  • バブル崩壊で日本人は豊かになった
    • バブル崩壊後の企業収益悪化で、従業員の賃金が下がらなかったということは、企業から従業員への大規模な所得移転を意味する。
    • しかし、企業は人件費を世界標準まで下げようとしており、今後は低所得者層が急速に拡大していくだろう。
  • 日本人は大きなリスクを取ってきた
    • 右肩上がりの土地神話を背景に、戦後一貫して、日本人は不動産にハイリスクな投資を行ってきた(住宅ローンによるレバレッジをかけたマイホームの購入)。
  • 不動産を買ったら、資産運用はそこで終わり
    • 住宅ローンで持ち家を購入した人の多くは、ポートフォリオの大半を不動産が占めることになってしまう。
  • 長期投資が成功するとはかぎらない
    • 「長期投資は成功する」という原則は、NYダウから導き出された一種の経験則に過ぎず、それも株価が大きく上昇し始めた80年代半ば以降に唱えられたものである。
  • 資産運用の専門家は資産運用理論を無視している
    • 市場全体に投資するインデックスファンドと国債を組み合わせることで、最適なポートフォリオを作ることができる。
    • 投資家のリスク許容度に応じて、両者の比率を変化させることで、投資のリスクを調整することができる。
  • 経済学者の予測は当たらない
  • 適正株価は誰にもわからない
  • チャートで未来は予測できない
  • 短期投資は最高のギャンブルである

ここで、下から3つ目の「適正株価は誰にもわからない」と、その次の「チャートで未来は予測できない」の項では、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析について触れられています。

4.ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析

まず、ファンダメンタルズ分析というのは、財務諸表などから企業の将来の利益を予測することによって、株式の価値を理論的に計測できるという考え方であると書かれています。

これは、株式を将来の配当額(=1株利益とする)が確定しない無期限の債券と考えると、次のような式で理論的な株価を求めることができるということです。

理論株価=将来の1株利益(EPS)÷ 期待利回り

なお、期待利回りは次のように求められます。

期待利回り=無リスク金利(国債利回り)+リスクプレミアム

つまり、予想1株利益を正確に予測することが重要になってくるわけですが、残念ながら企業の未来の姿は誰にも分かりません。

それでも、財務諸表を分析したり、店舗や工場を訪問したり、経営者にインタビューしたりして、企業の利益を予測するのが、株式アナリストです。

しかし、株式アナリストによるレポートというのは、ほとんどの場合、自分に都合のいい株を投資家に買わせるためか、分析対象である企業経営者のご機嫌をとるための証券会社の営業行為です。

未来のことは誰にもわからず、それは株式アナリストとて例外ではないのです。

次にテクニカル分析についてですが、これはチャートの動きのみによって将来の株価を予測する投資手法になります。

これに関して、投資の本場であるアメリカでは、1920年代から保存されているNY市場の株価データを使って、ありとあらゆるテクニカル指標がコンピュータで解析されてきたと言います。

そして、ほぼすべてのケースにおいて、テクニカル分析に従って売買を繰り返すよりも、単に株を買って保有するだけの長期投資の方が有利だということが証明されていると書かれています。

5.総括

本書では、ここで触れた内容以外にも、不動産(住宅ローンによる持ち家の購入)や生命保険・医療保険についても取り上げられています。

また、本書の約半分は、(マイクロ)法人を利用して、所得税などの税金や、健康保険・年金といった社会保険料を最適化することについて書かれています。

それは例えば、次のような内容になります。

  • 所得税の発生しない範囲で家族を雇用する
  • 生活費を法人の経費に振替える
  • 個人資産を法人名義で運用する
    • 法人に貸した資産から受け取る利子は損金扱い(無利子も可)。
    • 法人が赤字であれば、有価証券の売却益や配当には課税されない。
  • 事業者向けのさまざまな融資制度を低利で利用できる。

そして、ここで書いてきたような資産運用、特に株式投資(インデックス投資)の内容に関していえば、『臆病者のための株入門』が網羅的でより詳しい内容となっています。(リンク先はレビュー記事になります。)

一方で本書は、資産運用だけでなく、人生設計というより俯瞰的な視点から、経済的独立を達成するための知恵について書かれた総論的な内容だと言えます。

そのため、マイクロ法人に関する内容のみに興味のある方は、同氏の『貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する (講談社+α文庫)』という書籍を読まれることをお勧めします。(リンク先はamazonのページになります。)

 

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