ここでは、直近(2019年12月)の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.日米10年国債利回りとドル円相場
まずは、米国の10年債利回りとドル円相場の推移を比較してみます。
この図から、米長期金利は1980年代より右肩下がりの傾向となっているのに対して、ドル円相場の方は、概ね横ばい(ボックス圏)での推移となっていることが分かります。
そういった意味では、米長期金利だけを見た場合には、ドル安円高の余地があると言えそうです。
次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。
こちらの図では、ドル円相場の動きが、日米の長期金利差と概ね連動していることが見て取れます。
そして直近では、日米の長期金利差はやや拡大傾向となっており、どちらかというとドル安円高方向への動きを示唆しているように見えます。
2.購買力平価とドル円相場
次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。
なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。
この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長い中で、ここ数年は企業物価PPPより上での推移となっていることが分かります。
つまり、ドル円相場を購買力平価という観点から見た場合には、ドル安円高余地が大きいように思われます。
3.修正ソロスチャートとドル円相場
最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。
この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率との乖離は縮小傾向ではあるものの、ドル円のレートには依然としてやや円高余地があるように思われます。
4.総括
ここでは、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から、ドル円相場について見てきましたが、その全てで円高余地があるように見えました。
さらに、ドル円相場には、特に米国の金融政策が大きく関係してきますが、FRB(米連邦準備理事会)は、12月10~11日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、4会合ぶりに金融政策の現状維持を決定していました。
また、先行きに関しても、2020年を通じて政策金利の据え置きが予想されています。
そして、2020年11月には米大統領選挙があることから、今後しばらくは米中貿易摩擦が激化することも考えづらいでしょう。
実際、12月15日に予定されていた米国の対中追加関税の発動は見送りとなっています。
そういったことなどを踏まえると、何か特別な出来事でも起こらない限り、ドル円相場は引き続き、方向感に乏しい展開が続くことになりそうです。
なお、ここ何年かは、1月に円高となる傾向があるため、目先的には円高方向への動きに備えておくと良いかもしれません。