相場のデータ・指標

「WTI原油」のデータ分析(2020.6)(CFTC建玉明細(投機筋)、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API))

ここでは、直近の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポジション、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API)といった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

1.WTI原油とCFTC建玉明細(投機筋)

まず、CFTC建玉明細から投機筋のネットポジションの長期推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。

WTI原油価格と投機筋ネットポジションの長期推移を示した図(2020.6)

また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。

WTI原油価格と投機筋ネットポジションの直近の推移を示した図(2020.6)

この図から、投機筋のネットポジションとWTI原油先物価格は、強い相関性を認めていることが分かります。

ただ、直近のWTI原油先物価格の急落については、その急落幅と比べると、投機筋のネットポジションの減少幅は小さいことが見て取れます。

2.WTI原油とブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)

次に、市場が推測する期待インフレ率を示す指標である、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)についてです。

このBEIの推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。

WTI原油価格とブレーク・イーブン・インフレ率の推移を示した図(2020.6)

また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。

WTI原油価格とブレーク・イーブン・インフレ率の直近の推移を示した図(2020.6)

この図から、WTI原油先物価格とBEIとの間にも、強い相関性があることが見て取れます。

そして、この両者に関しては、直近のWTI原油先物価格の急落と歩調を合わせるようにして、BEIも急低下していたことが分かります。

そのため、直近においては、ほとんど両者の乖離が認められません。

3.WTI原油先物価格と原油在庫統計(EIA・API)

最後に、原油在庫統計についてです。

まず、米国エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)

WTI原油価格とEIAの原油在庫統計の推移を示した図(2020.6)

続いて、米国石油協会(API)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)

WTI原油価格とAPIの原油在庫統計の推移を示した図(2020.6)

これらの在庫統計を見ると、その増減はWTI原油先物価格の後追いとなっていることが分かります。

つまり、直近でWTI原油先物価格が反発しているということは、これから在庫統計上にも原油在庫の減少という形で表れてくることが予想されます。

4.総括

WTI原油先物価格は、5月限が納会前日の4月20日に-40ドル台と史上初めてのマイナス価格を付けていました。

これは、原油在庫が急増し、貯蔵施設の容量の限界を超えることが懸念されてのものでした。

そのため、翌6月限も納会前に急落する可能性があるかと思われましたが、実際には特に何事もなく最終取引日を迎えていました。

そして、足元ではWTI原油先物価格は30ドル台後半にまで回復しています。

ただ、40ドル以下では、米国のシェール企業の大半が赤字になると見られており、シェールオイルの生産量も減少していくことになるでしょう。また、OPECプラスも減産を継続せざるを得ないでしょう。

一方で、ロックダウンや外出自粛が解除されても、経済活動が元の水準に戻るまでには相応の時間がかかると思われます。

つまり、原油の需要も低迷したままとなる可能性が高く、原油価格が40ドルを超えて上昇していくというシナリオよりは、30ドル台前半から場合によっては20ドル台へと調整していくというシナリオのほうが実現する可能絵師が高そうです。

「東証REIT指数」のデータ分析(2020.6)(NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式の配当利回り・投信の資産増減状況)前のページ

「ドル円相場」のデータ分析(2020.6)(日米10年国債利回り・購買力平価・ソロスチャート)次のページ

関連記事

  1. 相場のデータ・指標

    【2023年4月】「米国株(S&P 500)」のデータ分析(PER・CAPEレシオ・ブルベ…

    この記事では、直近の「米国株(S&P 500)」について、PER・CA…

  2. 相場のデータ・指標

    「米国株(S&P 500)」のデータ分析(2020.6)(PER・CAPEレシオ・ブルベア…

    この記事では、直近の「米国株(S&P 500)」について、PER・CA…

  3. 相場のデータ・指標

    「WTI原油」のデータ分析(2019.12)(CFTC建玉明細(投機筋)、ブレーク・イーブン・インフ…

    この記事では、直近の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポ…

  4. 相場のデータ・指標

    「ドル円相場」のデータ分析(2021.6)(日米10年国債利回り・購買力平価・ソロスチャート)

    この記事では、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修…

  5. 相場のデータ・指標

    寅年の2022年、「寅千里を走る」となるか!?

    この記事では、2022年の日本株(日経平均株価)を十干十二支や陰陽五行…

書籍を出版しました!

電子書籍(3冊全て、Amazonランキング1位獲得)

「マーケットの魔術師」ならぬ「マーケットの詐欺師」

精神科医が暴く金融業界の裏側

 

勝者の心構え

精神科医が看破する投資の本質

 

 

 

この心理的罠からあなたは逃れられるか

精神科医が洞察する投資家心理

 

  1. 相場のデータ・指標

    【2021年9月末時点】ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイの…
  2. 投資戦略・手法・市場展望

    東証REIT指数は今が狙い目か?
  3. 相場のデータ・指標

    「ドル円相場」のデータ分析(2021.3)(日米10年国債利回り・購買力平価・ソ…
  4. 相場のデータ・指標

    【2022年6月】「東証REIT指数」の最新データ分析(NAV倍率・分配金利回り…
  5. 投資戦略・手法・市場展望

    3万円を超えた日経平均株価と個別銘柄
PAGE TOP